GERBERA PARTNERSブログ

中国|中国現地法人の残業問題とその対策 その3

2015/03/25

Q 中国の残業問題について、従業員との間でトラブルになる前に法律と実務上の留意点をおさえておきたいと思います。残業問題に対する対策もふくめて、教えていただけますか?<その3>

 

A 残業問題でトラブルになるのが多いのは、離職した元従業員が過去にさかのぼって企業に残業代の支払いを求めるケースです。残業代の請求は、各地方により何年までさかのぼれるかが異なり統一されておらず、企業の対策としては残業記録を過去のものも含めてきちんと保管しておくことと、不必要な残業をなくすことです。実際にタイムカードなどの残業記録が残されていても、たとえば会社に残ってネットショッピングをしていたなど不必要な残業が行われていたかどうかを確認することは難しく、残業を上司に対しての申請制にするなどの工夫が必要となります。また社内での残業に関する規定を整備し、全員で共有することが非常に大切です。

 

 日本で時間外勤務について算定する場合、毎日の残業については1分単位で計算し、一計算期間の合計時間については30分未満を切り捨て、30分以上を1時間とするのが一般的ですが、中国では逆に残業の時間単位に関する規定がないため、企業でそれぞれ定める必要があります。特に注意すべき点としては、日本では、労働基準法第41条2項において、管理監督職については残業代を支給しなくてもよいとされていますが、中国では管理職員に対しても残業代の支給対象となる点です。高級管理職の接待などが残業とみなされて、離職の際に過去2年間にわたって残業代を請求されたという例もあり、高級管理職の場合でも口頭だけでの約束ではなく、不定時勤務時間制の申請をして対応している企業もあります。

 

 そのほか、日本ではサービス業や飲食業などでは実際に残業しているのに、その分の残業代が出なかったり、欧米でも「ホワイトカラーエグゼンプション」といって知的生産業務については残業代が出ないケースが多いですが、中国では残業代の支払対象について、職業・職種による区分はありません。ただ現実としては、小さなレストランやマッサージ店ではきちんと労働法を守らずに従業員を雇用しており、決してどこでも法律が遵守されているわけでもありません。とはいえ、外資系企業が同じようにした場合には罰金を科せられるリスクも大きいため、きちんと法律を遵守されることをお勧めします。

 

 上司が残業を命令したのに、それに従わなかった従業員はどうなるのでしょうか?規定からすると、本人が残業を拒否した場合、企業はそれを強要することはできません。また、勝手に残業をして残業代を請求してきたら、企業は払わなければならないのでしょうか?これについては、実際に裁判となった場合、企業側に証拠がなにもない場合は敗訴のリスクが高くなります。その対策としては、社内での残業制度を制定・整備し、日本と同様に申請制度にするなどが有効です。残業手配権限、プロセス、ドキュメント作成・保管などを規則に明記することが大切です。もし証拠が保管されておらず規則が整っていない企業で、従業員が訴えた場合は従業員側の言い分により精算を求められてしまいますので注意が必要です。

 

 たとえば営業社員の外回りの時間等、把握できない時間について「残業した」と言われたら、残業手当を支払わなければならないのか?というご質問をよく受けますが、従業員が業務指示による外出、研修や会議の参加、出向などで残業した場合、それらは残業手当が発生します。社内の規則を充実させ、把握できない残業時間を作らない仕組みの構築が不可欠といえます。

 

 日本では従業員に残業をさせる場合、36(サブロク)協定という労使協定を締結しなければなりませんが、中国でも残業をさせるためには従業員の承諾を受ける必要があり、労働法第41条で定められています。中国では、労使間で労使協定を締結する義務はどこにも明記されておりませんが、企業としては残業が従業員から申請された(承認した)という証拠を残しておく必要がありますので、それぞれの企業内で規定を整えておく必要があります。

 

 日系企業の経営者は日本での“みなし残業手当”を中国でも採用したいというご要望をお持ちの場合もありますが、 そもそも中国ではみなし残業という概念はまだまだ普及していません。前記のような深夜業の割増賃金はありませんが、残業した日が平日なのか、土日なのか、法定休日なのかで基数にかける倍率が違い、どうしてもみなし残業を組み入れたい場合は、たとえば30時間と記載をしてもそれが平日のみの対象なのかすべてが対象なのか、もしそれに法定休日が含まれている場合はどうするのかなど、細かく記載する必要があり、また法定休日の残業に関する規定などに抵触するリスクがあるため、みなし残業手当制度を採用している企業自体が少ないのが現状です。

 

<< 前の前の記事(その1)

<< 前の記事(その2)

 

こちらの記事は、みずほ銀行のCHINA REPORTに寄稿したものです。

 

中国の労働法については、こちらのサイトにも掲載しています。

 

ページの先頭へ