GERBERA PARTNERSブログ

中国|中国で飲食業を展開する日系企業の労務リスクと対策

2018/03/02

Q、飲食業を中国で展開しています。日々労務リスクと背中合わせですが、中国の飲食業において気を付けるべき労務リスクとその対策について教えていただけませんでしょうか。



 

A、中国経済は鈍化しつつあるとはいえ、中国の一人当たりGDPはまだまだ伸びていくことが想定されます。中国国内の消費市場が拡大するにつれて、飲食業やサービス業で成功した企業は、中国国内での多店舗展開を加速しつつあります。

 

解説(公開日:2018/03/02  最終更新日:2018/04/13 )

飲食業やサービス業など、中国で店舗出店を伴う企業は、人員を多く抱える労働集約型産業であり、その店舗で働く中国人材のコントロールが経営における最重要課題となっております。

 

『2017中国上場企業法的リスク指数報告』によると、中国において2017年の法的リスク指数が最も高い業界はダントツで「宿泊と飲食業」でした。ただし、これは2017年に限った話ではなく、中国ではもう何年も続いていることであり、それだけ飲食企業は労務リスクが高いと言えます。

 

(1)長時間残業

中国飲食業界では、抱える従業員が多く、そのぶん離職率が高いといえます。中国飲食業の中国人材は恒常的に不足しており、そのため、飲食業界の給料は全業種の平均以下でありながら、他業界に比べて労働時間は長く、また、長時間残業も多く見受けられます。

 

(2)健康証明書の所持

中国では、飲食業で働く従業員は就業にあたって、『中国飲食健康証』を所持していなければなりません。これは、中国の『食品安全法』、『公共場所衛生管理条例』などの法規により、中国の食品生産や公共の場におけるサービスなどの業界に従事している人は、『中国飲健康証』を持っていなければならないという法律に拠ります。そして、中国飲食健康証を所持するために、飲食業に従事する従業員を募集する際に健康診断を行わなければなりません。

 

(3)妊娠女性の差別的解雇の禁止

中国飲食業界では、多くの若い中国人女性が働いていますが、一部の中国飲食企業では、女性従業員が結婚して妊娠したあと、そのような女性を解雇することがあります。これはもちろん中国労働契約法では労働契約の違法解除にあたると判断されます。

 

中国飲食企業においても、女性従業員がこのような状況にあることを知りながら、労働契約を解除した場合は、労働契約の違法解除にあたり、従業員から請求されると企業は2倍の賠償金を支払わなければなりません。また、係争中の従業員は、中国飲食企業の労働契約は依然継続しているものとして紛争期間中も給料の支払いを求めることが可能です。

 

(4)給料の遅配

一部の中国飲食企業では、従業員を引き留めるために給料日をわざと遅らせたりします。たとえば前月の給料を翌月25日に支払ったり、前年の年末賞与を翌年の夏に支払ったりします。しかも、その年末賞与の支払い時に在職していない従業員には賞与が支払われなかたりします。前月の給料を翌月25日に支払うことは、労働報酬を速やかに支払うことができていないため、従業員はこれを理由に労働契約を解除することができます。その場合、中国飲食企業は従業員の勤務年数に応じた経済補償金を支払わなければなりません。

 

(5)退職時の給料不払い

中国飲食業界では、従業員が退職した場合に、その退職月の給料を支払わなかったり、従業員の退職時にもともと契約にない各種経費の控除をしたり、会社を1日欠勤したら3日分の給料を払わないとか、10分遅刻したら半日分の給料を差し引くなど、さまざまな違法ルールを設けている中国飲食企業もあります。会社を1日欠勤して、3日間給料を払わないことについては、従業員は、「会社の規定が中国の法律や行政法規の規定に違反している」ことを理由にして、労働契約を解除することができます。また、企業が労働報酬を速やかに全額支給していないことを理由にして、労働契約を解除することもできます。この場合、飲食企業に対して勤務年数に応じた経済補償を支払うことも主張することができます。

 

(6)労働契約を締結しない

中国飲食業界では、しばしば飲食企業は雇用契約のプロセスを省略して、書面による労働契約を締結しないことがあります。もちろん、これは重大な法律違反であり、中国の法律では雇用日から1ヶ月を経過した日の翌日以降、企業は当該従業員に対して2倍の給料を支払う義務が生じます。

 

(7)社会保険料を納めない

一部の中国飲食企業では、雇用コストを減らすために、従業員の社会保険料を納付せず、あるいは最低基数で保険料を算出し、納付しています。中国においてこのようなやり方を続ける限り、飲食企業には大きなリスクが生じます。飲食企業が社会保険料を納付していない場合、従業員は辞職する権利があり、同時に、飲食企業に対して経済補償の支払いを要求することができます。また、従業員は社会保障部門に苦情を訴え、飲食企業に社会保険料を追加で納めることも要求できます。

 

(8)長時間勤務とサービス残業

中国飲食業界では、従業員の長時間労働が発生しやすく、また、飲食企業のなかには、サービス残業を常態化し、従業員に毎日無給で残業をさせていることがありますが、中国の法律では1日8時間以上働いてはならず、また、毎週の勤務時間は44時間(条例で40時間としていることが大半です)を超えてはなりません。これらの法定勤務時間を超える場合、その超過時間は残業となりますが、残業時間も法律により上限が設けられています。

 

(9)祝日出勤手当の不払い

法定休日(祝日)は中国飲食業界が最も忙しい日ですが、従業員が出勤した場合、中国の法律では3倍の給料を払わなければなりません。ところが、ほとんどの飲食企業はそれを履行できていません。飲食企業は法律的要求を満たすために、労務専門家の助言を受けながら社内規則を改定したり、その他の方法を採用したりして、合法的な回避策を講じる必要があります。

 
 

(10)違法な社内規則制度

多くの中国飲食企業では、専門的な人事管理者が不在で、飲食業の労務管理に詳しくない管理者が人事労務部門の長を兼務していることが多く、管理者が労働契約の締結、解除、終了、変更などにおいて、合法的な対応ができていないことがしばしばあります。

 

たとえば、多くの飲食企業の人事労務管理者は、中国『労働法』や『労働契約法』をしっかりと理解できていないまま、企業利益を優先して労務管理を行っており、社内規則の制定においても法律の要求に従っていないことが多々あります。また、従業員の懲戒処分にあたっては厳し過ぎる規則もあり、明らかに従業員の反感を招き、労働紛争を引き起こしやすい状況を生んでいると言えます。

 

飲食企業は一定の雇用ルールを明文化し、その飲食企業の実情に合致した社内規則制度を確立しなければなりません。中国においても社内規則は従業員を管理できる有効な手段であり、自社の合法的な利益を守るためのツールでもあります。

 

さまざまな中国飲食企業の労務リスクをご紹介しましたが、飲食企業は今後合法的な経営を目指すためにも、社内規則を重視すべきと考えます。特に中国国内で多店舗展開を目指す企業は、大いに大衆の目にさらされることになりますので、自社の労務リスクについて分析・調査を行うとともに、社内規則を常に合法な状態に保つことが求められていると言えます。

 

ガルベラ・パートナーズ日本本社(東京・大阪・福岡)および中国法人は、中国に進出している日本企業様のさまざまな課題に対し、各種の解決策をご案内させていただいております。

 

飲食業、サービス業、小売業など、特に人員を多く雇用されている日系企業の労務担当者様で、労働時間管理や規程作成などでお悩みの方がいらっしゃれば、ぜひこの機会に弊社担当までお声がけいただければと存じます。

 

本稿に関しては、みずほ銀行のマンスリーチャイナにおいても同様の記事を寄稿しています。こちらもぜひお役立てください。

 

みずほ銀行 Mizuho China Monthly 2018年3月号 

 
 


 
 

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