GERBERA PARTNERSブログ

中国|中国の変形労働時間制(総合計算労働時間制)について

2019/03/25

Q、中国において会社を経営しています。繁忙期の残業時間の長さや残業代にかかるコストが問題となっています。中国には日本の変形労働時間制のように、業務の繁閑に合わせて労働時間の長さを調整できる制度はありませんか?

上海   A、中国にも日本の変形労働時間制に似た制度があります。導入にはハードルがありますが、導入ができれば、企業は繁閑期に応じた柔軟な労働時間に変更できるようになるため、残業時間と残業代を減らすことが期待できます。  

解説(公開日:2019/03/25  最終更新日:2019/03/26 )

   

1.変形労働時間制(総合計算労働時間制)の概要と導入のメリット

中国における原則的な法定労働時間を「標準労働時間」といい、標準労働時間は日本と同じく1日8時間、1週40時間と定められています。これに対して標準労働時間の制限にとらわれず、週、または、月、四半期、年を周期として、労働時間の割り振りを定められる変形労働時間の制度を総合計算労働時間制と言います。1週を周期とする場合の1週当たりの法定労働時間は40時間、同様に1か月とする場合は166.64時間、1四半期とした場合は500時間、1年とする場合は2,000時間となります。周期内で法定の労働時間を超えた労働時間については残業代を支払わなければなりません。

 

総合計算労働時間制を利用するメリットは、業務の繁閑期に応じた柔軟な労働時間の調整が可能となり、業務が少ないときの人員オーバーを避けられること、法定祝日以外の残業代の計算基準が200%から150%になることにより会社の総残業代が減少することです(勤務日が法定祝日に当たっている場合は、300%の賃金を支払わなければなりません)。

 

2.変形労働時間制(総合計算労働時間制)の適用業種

ただし、総合計算労働時間制は自由に導入できるわけではありません。法律では、総合計算労働時間制の適用業種は以下のように規定されています。

 
業務の特性
具体的な業種
業務性質の特殊性から連続作業が必要な従業員 交通、鉄道、郵便・電信、水運、航空、漁業等
季節と自然条件の制限を受ける業界の一部の従業員 地質及び資源探査、建築、製塩、製糖、旅行等
その他総合計算労働時間制の実施に適する従業員 (地方政府の通達等による)
 

総合計算労働時間制は、この法律において具体的に特定された業種のみに適用が限定されるものではありません。

たとえば、上海市労働局の規定(『「企業のフレックスタイム制と総合計算労働時間制の実施に関する許認可規則」の徹底実施に関する若干の具体的問題の説明』(滬労保発[1995]16号))では、季節の繁閑期がはっきりしている果物、果実などの食品加工、衣類製造、ホテル・レストランの飲食や娯楽施設の従業員等は総合計算労働時間制を実施することができるとされていますし、北京市の規定(『北京市の企業による総合計算労働時間制とフレックスタイム制の実施規則』(京労社資発[2003]157号))では、総合労働時間制は、「(1)業務の性質上連続作業が必要、(2)生産経営が季節及び自然条件の制限を受ける、(3)外部要素の影響を受け、生産作業が不均衡、(4)従業員の居住地が職場から離れ、集中労働と集中休憩が必要、(5)交代作業を実施している、(6)定期的・集中的に休憩休暇を調整できる」業種と部署の者に適用するとされています。

 

3.変形労働時間制(総合計算労働時間制)に変更するために必要なこと

これまで標準労働時間制で労働時間管理をしていた会社が総合計算労働時間制を実施しようとする場合には、行政機関からの許可と従業員との協議の2つが必要です。

 

(1) 行政機関からの許可

企業工商登記登録地の人力資源・社会保障局に、総合計算労働時間制を実施するときの労働と休憩の調整計画、総合計算労働時間制を実施する関連部署の従業員名簿、従業員との協議状況、関連従業員の勤務記録等を添えて許可申請を行います。

会社がきちんと従業員や工会(中国における労働組合)と協議しなかったり、会社に関連勤務記録がない、または勤務記録が標準的でない場合には許可を受けることはできませんし、あるいは総合計算周期の終了後に適切な労働時間の確認を行わなかったり、周期内の法定標準労働時間を超えた残業部分について残業代を支払わなかったりした場合には、更新申請をしても許可を受けることができません。

 

(1) 行政機関からの許可

総合計算労働時間制を実施する前に、工会や従業員と協議をすることが必要です。労働時間のように重要な変更をする場合、会社は、工会または従業員と平等に協議の上、労働時間や休みについて確定します。総合計算労働時間制の実施申請に関する会社と従業員との協議状況も、行政機関への申請の際に提出する書類の一つです。また、実施に当たっては従業員の意思を十分に尊重する必要があります。従業員が労働時間制の変更を受け入れず、引き続きすでに契約している標準労働時間制の適用を望む場合、会社は労働時間制の変更を強行することはできません。労働契約法第35条により、労働契約内容の変更は従業員と合意の上、書面をもって行わなければなりません。

 

4.まとめ

残業時間を削減するための一つの方策として、日本の変形労働時間制に類似した制度である総合計算労働時間制の採用が挙げられます。もしみなさんの企業に残業時間の多さに悩んでいる部署があり、総合計算労働時間制の適用が認められる可能性があると考えられる業務があるなら、総合計算労働時間制の採用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

本稿は、みずほ銀行が発行するメールマガジン「Mizuho China Monthly 2019年3月号」に寄稿させていただいたものを再編集したものです。こちらでは、具体的なトラブル事例についても触れていますので、ぜひご参照ください。

 

みずほ銀行 Mizuho China Monthly 2019年3月号

 

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