GERBERA PARTNERSブログ

労務管理

労務管理|雇用契約書の記載内容と気を付けるべきことは?

2026/05/12

Q、雇用契約書は、どのような点に注意して作成すれば良いですか?



 A、労働基準法で定められた、会社が従業員に伝えなければならない事項(明示事項)をもれのないよう記載することが必要です。
 また、就業規則との整合性や、実際の運用との乖離がないかにも注意して作成をしましょう。


解説(公開日:2026/05/12)

1)そもそも雇用契約書とは?

 雇用契約書とは、会社と従業員が、どこでどのような仕事をするのか・どのくらい働くのか・給与はいくらか・休日はどうなるのかなどの「労働条件」を明らかにするための契約書です。

 「雇用契約書は作っているけれど、何を書けばいいのか分からない」や「ネットのひな形を使っているけれど、この内容で大丈夫なのだろうか」と、法改正での変更のタイミングや、会社を設立した際、新たな雇用形態ができた際などに、事業所様からよくいただくご相談です。

雇用契約書は、単なる“書類”ではありません。
会社と従業員の間で、「どのような条件で働くのか」を明確にする大切な契約書です。
今回は、雇用契約書に何を書けばよいのか、法律上必要な内容や注意点を解説いたします。


2)具体的に記載しなければいけない内容は?

 会社は従業員を雇う際に、一定の労働条件を必ず明示しなければならないと法律で定められています。

 この明示しなければならない内容のことを、「明示事項」と呼びます。
これは大きく①絶対的明示事項と②相対的明示事項のふたつに分けられます。

① 絶対的明示事項

必ず明示しなければならず、記載の省略ができない事項です。
口頭だけではなく、書面での明示が必須です。
※8)の昇給に関する事項のみ、口頭での明示でも良い

1)契約期間に関すること
2)有期労働契約を更新する場合の基準に関すること
雇用期間を明確にします。
有期契約(契約期間に定めのある労働契約のこと)の場合は、更新の可能性の有無、通算契約期間または有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合には、その上限を含め記載が必要です。

    

3)就業場所、従事する業務に関すること(変更の範囲を含む)
どこで業務を行い、どのような業務を行うのかを記載します。
近年はテレワーク勤務も多くなっておりますので、テレワークの有無や配置転換の可能性についても、明確化が重要です。



4)始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
始業・終業の時刻や、所定労働時間(あらかじめ勤務すると決められている時間)、休憩時間、所定休日、年次有給休暇などです。
シフト制の場合は、シフト内容についても分かるように記載することが好ましいです。



5)賃金の決定方法、支払時期などに関すること
基本給、各種手当、固定残業代の有無、締日・支払日、昇給など、賃金に関することを明確にします。
特に、固定残業代制度を導入している場合は、何時間分なのか・超過分は別途支払うかを明確にすることが望ましく、不明確な場合は未払残業代のトラブルにつながる可能性もありますので、注意しましょう。



6)退職に関すること
退職手続き、解雇事由、定年制の有無などを記載します。
問題があるからすぐ解雇できる、というわけではなく、解雇には法律上厳しい制限があります。
そのため、就業規則との整合性も踏まえ記載しましょう。



7)無期転換の申込みに関する事項
「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示が必要です。
また、そのタイミングごとに、無期転換後の労働条件の明示も必要です。
※無期転換申込権とは・・・同じ企業で有期労働契約が通算5年を超えて更新された際、労働者が希望すれば無期雇用(期間の定めのない契約)へ転換できる権利のこと

8)昇給に関すること
昇給の有無、昇給の基準(業績・勤務評価・能力評価など)を明記し、パートやアルバイト等で、契約更新時に賃金改定がある場合も、その可能性を記載する必要があります。

② 相対的明示事項

該当する制度などを設けている場合は、必ず明示する必要があります。
絶対的ではないので記載しなくてもよい事項、ということではないので、注意しましょう。
制度がない場合のみ、記載を省略することができますが、制度がない場合でも、ない旨の記載をすることで、後に聞いていなかった、などの認識の相違が生じることの予防にもなりますので、記載することも検討が必要です。

1)退職手当に関すること
退職金の適用範囲、支給の基準、計算・支払い方法を記載します。
例)勤続〇年以上で、規定により支給する

2)賞与などに関すること
臨時に支給する賞与について、支給の有無、支給の時期、算定基準を記載します。
例)原則として年2回(7月・12月)に支給する。ただし、会社の業績および評価により決定する

3)食費、作業用品などの負担に関すること
食事代や制服購入費用など、実際に労働者に負担させる費用について記載します。

4)安全衛生に関すること
5)職業訓練に関すること
健康診断の時期や教育訓練について記載します。
例)年に1回定期健康診断を実施する、会社が必要と認める研修を受講させることがある

6)災害補償などに関すること
業務上の災害や、業務外の傷病休職について記載します。

7)表彰や制裁に関すること
表彰の種類や懲戒の基準について記載します。

8)休職に関すること
休職の期間や、休職中の待遇について記載します。


3)雇用契約書を作る際の注意点は?

 雇用契約書への必要事項の記載を網羅していても、それだけで必ずしもすべての内容について、正しく伝わるとは限りません。
従業員の入社後に、聞いていた話と違う、こうだと思っていた、などの問題が生じる場合もありますので、そのような認識の行き違いを防ぐためにも、以下の注意点を考慮し作成することが好ましいです。

① 就業規則と内容を一致させる

定期的な見直しをしていない場合、雇用契約書と就業規則のどちらか一方が旧制度のままの記載になっているなど、内容の矛盾が生じていることがあります。
その場合、のちのトラブルの原因にもなりますので、必ず法改正や規程改訂のタイミングで内容を確認するようにしましょう。

② 「曖昧な表現」を避ける

曖昧な表現の場合、従業員へ内容が十分に伝わらず、こうだと思っていたなどの認識の行き違いにもつながる可能性があります。
できるだけ具体的な条件や判断基準を明確に記載するようにしましょう。

③ 運用との差異がないか確認する

就業規則や雇用契約書ではこう記載しているけれど、実際の運用が異なっている場合も、トラブルの原因となることがあります。
例えば、雇用契約書では残業なしと記載しているにも関わらず、実態としては残業が常態化しているなどは、多く起きている事例でもあります。
① の就業規則との一致も含め、法律の観点、実際の運用の観点の両方から、定期的に内容を確認するようにしましょう。

 雇用契約書は、会社と従業員とで結ぶ大切な契約書です。
法律上必要な事項の明示、就業規則との整合性の担保、実際の運用と一致させる点に注意し、作成することが必要です。

 将来的な労務トラブルを防止するだけでなく、認識の行き違いを減らすことで、従業員の会社に対する信頼感の向上や、定着率の向上にもつながります。

社会保険労務士法人ガルベラ・パートナーズでは、労務相談だけでなく、法改正による規定の改定や社内措置の検討についてのサポートもご提供しております。
また、就業規則や雇用契約書を作成したいが、どこから手を付けて良いか分からない、などの初めの一歩から伴走し、適切な労務体制の構築にもお力添えをいたします。

 どうぞ、お気軽にお問合せくださいませ。

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