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中国|中国の経済補償金について その2

2015/11/11

Q 中国の現地法人で社員の退職に伴い、経済補償金の支払いを行うことになりました。経済補償金の計算方法や上限などを教えていただけませんでしょうか。

 

A 中国の労働法令には経済補償金の最低支給基準として、法定経済補償金が定められています。経済補償金は、労働者が本使用者に勤務していた年数に照らし、1年ごとに賃金1カ月分を基準として労働者に支払われます。ただし、6カ月以上1年に満たない場合は1年として計算し、6カ月に満たない場合は半月分の経済補償金を支払うことになります。

 

 一方、各労働法令において、すべての場合の経済補償金の上限が定められているわけではありません。上記の経済補償金の最低基準を超えていれば、労使間の協議で決めることができます。また使用者は、協議を合意達成するために、労働者からのすべての支払請求を認める必要はありません。そのため、使用者は労働者と交渉する前に、経済補償金の支給上限を設定する必要があるといえます。

 

 使用者は他の要件も加味しながら、経済補償金の最低基準と上限の範囲内で、ケースバイケースで経済補償金額を検討する必要があるということになります。少なくとも金銭上の損失からみれば、上限を越えて経済補償金を支給するよりも、従業員の労働契約終了まで我慢したほうがよいとも考えられます。

 

 次に、経済補償金の計算についてご案内したいと思います。法律に基づく経済補償金の計算方法は「計算年数×離職前12カ月分の平均賃金」となります。それでは、この計算方法の中の「年数」や「平均賃金」については、どのように考えればよいのでしょうか?

 

1年数の計算について

 改正後の労働契約法による年数の計算方法は、勤務年数満1年ごとに1カ月とし、勤務年数が6カ月以上1年未満の場合は1年として計算し、勤務年数が6カ月に満たない場合は半月分を支払うとしています。しかし、改正前の労働契約法(2008年1月1日以前)の年数の計算方法では、たとえ1日しか勤務していない場合であっても1カ月分として計算する必要があります。

 

 労働者保護の観点から、勤務年数については2007年以前と2008年以降を分けて計算する必要があるとの主張もあります。この主張に基づくと、ごく極端な例をあげると、2007年12月31日に入社して2008年1月1日に離職し2日しか勤務していない従業員に対しても、1.5カ月分とする必要があります。しかし、併せて計算すると0.5カ月分となります。実際のところ、併せて計算するのが現在の通説であり、北京、上海地域の裁判所の審理傾向も同様です。

 

2離職前12カ月の平均賃金について

 労働契約法第47条によると、労働者の離職前12カ月の平均賃金が当該地区の前年度労働者の月平均賃金の3倍を超える場合、労働者に対して支払う経済補償金の基準は、当該地区の前年度労働者の月平均賃金の3倍の金額をもって支払うこととなります。しかし2007年以前の規定には上限規定がないので、たとえ労働者の離職前12カ月の平均賃金が当該地区の前年度労働者の月平均賃金の3倍を超える場合であっても、当該労働者の離職前12カ月の平均賃金を基準に経済補償金を計算することとなります。

 

 労働者保護の観点からみると、労働者の離職前12カ月の平均賃金が当該地区の前年度労働者の月平均賃金の3倍を超える場合、2007年以前の経済補償金は労働者の離職前12カ月の平均賃金を基準にして計算し、2008年以降の経済補償金は当該地区の前年度労働者の月平均賃金の3倍を基準にして計算することになります。この場合の経済補償金は、当然2007年以前と2008年以降を分けてそれぞれ計算する必要があります。しかし、たとえば北京地域仲裁機関、北京地域裁判所の仲裁審判の実務においては、当該地域の前年度労働者の月平均賃金の3倍で経済補償金を計算しています。

 

3支払う年数の上限について

 労働者の賃金レベルによって、二種類の上限があります。

(1)労働者の賃金額が当該地区の前年度労働者の月平均賃金の3倍を超えない場合、その額で計算し、実際の労働年数に基づき、相応の月分の賃金を経済補償金として払うべき。つまり上限はなく、たとえば15年間働いていた場合、15カ月分の経済補償金を支払う。

(2)労働者の賃金額が当該地区の前年度労働者の月平均賃金の3倍を超える場合、当該地区の前年度労働者の月平均賃金の3倍を基準にして計算する。そして12年間まで、つまり12カ月分の賃金を上限として経済補償金を支払う。

 

 以上、経済補償金の計算方法について解説させていただきました。本稿は、みずほ銀行が発行するメールマガジン「Mizuho China Monthly 11月号」に寄稿させていただいております。こちらでは、具体的な上限についても触れていますので、ぜひご参照ください。

 

『みずほ銀行 Mizuho China Monthly 11月号』はこちら

 

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