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中国|中国情報:中国企業監査・人事労務について

2025/04/10

Q、中国進出企業が直面する人事労務管理の監査の課題について教えてください。

   

A、中国での事業展開が進む中で、企業が直面する重要な課題のひとつが「人事労務管理」です。現地の法律や文化に対応しながらも、日本企業としてのガバナンスやリスク管理を両立させるためには、制度の整備と運用の徹底が不可欠です。 中国企業監査の重要項目となる人事労務に関しての監査内容をご案内させていただきます。

 

解説(公開日:2025/04/10)

 

中国企業監査・人事労務について

今回ご紹介するのは、ある中国現地法人で使われている人事労務分野の監査チェックリストです。これは、企業内部で人事・労務に関する制度や実務が適切に運用されているかを確認するためのものです。このチェックリストの内容をもとに、どのような視点で監査が行われるのか、そして企業側としてどのような備えが必要かについて解説していきます。

 

1. 人事規程・マニュアルの整備状況

最も基本となるのが、雇用契約書や就業規則といった人事関連の規程・マニュアルの整備状況です。中国では、法律に基づいて書面による雇用契約の締結が義務付けられており、加えて就業規則や人事管理に関する各種規程が整っていることが求められます。

監査の現場では、これらの文書が存在するだけでなく、最新の法改正や実務に合わせて定期的に見直されているか、さらに従業員への周知がなされているかが重要なチェックポイントとなります。

 

2. 規程の整備とリーガルチェックの有無

人事関連の規程が整っていたとしても、それが法的に妥当な内容かどうかも見逃せません。とくに、中国労働法の改正や地域ごとの運用差を踏まえて、専門家(弁護士)によるレビューが行われているかが問われます。

監査では、「就業規則の更新が弁護士の指導のもとで行われているか」「その証拠としてコメント記録や報告書が残されているか」などが確認されます。これは、労使トラブル発生時に会社の対応が法的に正当であるかを担保するためにも重要です。

 

3. 守秘義務や競業避止義務の明文化

企業にとって、人材の管理と同様に大切なのが情報の管理です。退職後の情報漏洩や競合企業への転職によるリスクを防ぐため、雇用契約書や秘密保持契約(NDA)に守秘義務や競業避止義務が明記されているかがチェックされます。

監査では、これらの契約書に明確な記載があるか、社員が署名しているか、そしてそれが適切なタイミングで交付されているかといった点が見られます。実際、守秘義務が文書で定められていない企業では、退職者による情報持ち出しの際に法的対応が難しくなるケースもあります。

 

4. 採用から退職までの手続き管理

人事労務の管理は、従業員のライフサイクル全体にわたります。採用時には適切な選考プロセスがあるか、入社時には法定の書類がそろっているか、在職中の異動や評価制度は整っているか、そして退職時には手続きが完了しているかまで、一連の流れを管理することが求められます。

チェックリストでも、「採用、評価、昇格、懲戒、退職」までのプロセスが定められ、それが制度として運用されているかどうかが確認されます。中でも、退職時の引継ぎや会社資産の返却、帳簿上の処理の正確性は、監査でも特に注目されるポイントです。

 

5. 労務リスクへの備え

中国では、労働紛争が発生した場合、労働者に有利な判決が出やすい傾向があります。したがって、企業としては「証拠の保存」と「手続きの透明性」が求められます。たとえば、雇用契約の原本、労働時間の記録、給与支払いの履歴、評価結果などは、すべて記録として適切に保管されている必要があります。

監査チェックリストでも、「人事情報のデジタル管理」「書面での記録の有無」「証憑書類の保存年数」などがチェック項目に含まれています。労務トラブルへの備えとして、こうした日常的な記録管理の体制が整っているかどうかが問われるのです。

 

6. 実施結果と改善への取り組み

監査は単なる「確認」ではなく、「改善」へとつなげることが大切です。チェックリスト上で課題が発見された場合、その内容を記録し、社内で共有し、改善に取り組む姿勢があるかが評価されます。

たとえば、守秘義務に関する契約書の不備が指摘された場合、それに対して契約書の修正と再締結を行い、関係者に再周知する——こうした一連のアクションが、次回監査での重要な評価対象となるのです。

また、対応状況を文書で残しておくことで、企業としての「説明責任」を果たすことにもつながります。

おわりに、中国における人事労務の管理は、法令遵守を前提としたリスク回避の視点と、現地従業員との信頼関係構築の視点の両方が求められます。監査チェックリストは、その両立を図るための一つの手段であり、企業自身が制度と実務の「ギャップ」を把握し、日常業務を改善していくための大切なツールです。

今後、コンプライアンスや内部統制の重要性が高まる中で、日本企業が中国で安定した事業運営を続けていくためには、人事労務の整備と運用を一層重視していく必要があります

 

今回は、中国現地法人の監査項目の一つの人事労務についてご案内させていただきました。中国法人設立および中国会計税務・監査に関してのご相談はhttp://business.chinafocus.jp/まで、お問合せください。

 

ご案内

ガルベラ・パートナーズでは、中国進出から会計税務・労務・中国での生活サポートなどをワンストップでサポートしています。具体的なサービスといたしましては、設立・会計以外に①法律関係(裁判、労務訴訟対応、会社内法律顧問)②物流関係(輸入、輸出際の税関規定)③工場アテンド(中国国内工場探し)④展示会関係(ブースの構築、人員配置など)⑤代理店探し(中国の販路拡大)⑥取引調査(財務データ調査、信用調査)を行っています。

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