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中国|中国情報:中国企業監査:仕入・購買プロセスについて

2025/04/14

Q、中国現地で、架空取引先の登録や不正な発注を通じた横領リスクを未然に防ぐ体制構築について教えてください。

A、上記のようなリスクを低減するためには、中国における企業監査が重要になります。企業監査【仕入・購買プロセス】を通した体制構築をご案内いたします。企業監査項目である「仕入」および「購買プロセス」は、会計的な正確性とともに、内部統制の観点からも非常に重要な審査対象となります。購買活動は、企業のコストに直結するばかりか、サプライヤーとの契約関係や支払管理、業務分掌といった多面的なリスク管理が求められる領域でもあります。

 

解説(公開日:2025/04/14)

   

中国企業監査:仕入・購買プロセスについて

1. 規程およびマニュアルの整備状況

まず基本的な確認項目となるのが、「購買・仕入に関する規程およびマニュアルが整備されているか」です。多くの企業では、購買に関する一連の手続き(見積依頼、契約締結、検収、支払)を対象とした規程が策定されていますが、実際には現場任せになっていたり、日本語版のみ存在し現地スタッフに周知されていないケースが見受けられます。

中国現地法人においては、中国語による規程の整備が必須であり、購買担当者を対象とした研修や運用ルールの徹底が不可欠です。監査では、購買担当者へのヒアリングや、過去の発注書・契約書の確認を通じて、規程と実務の一致度がチェックされます。

 

2. 基本契約および決裁手続きの有無

定期的に購買を行う取引先に対しては、「基本契約書」を締結しているかどうかも重要な監査ポイントとなります。中国では、契約書なしで取引を続けることも慣習的に見られますが、これには価格変更時のトラブルや品質責任の所在が不明確になるなどのリスクが伴います。また、契約締結時において、必要な決裁手続きが適切に行われているかも確認されます。たとえば、部門長や財務責任者などの承認が得られているか、社印の押印手続きが適切か、契約内容にリーガルチェックが入っているかなどが主な評価項目です。

 

3. 職務分離と相互牽制の確保

内部統制上、非常に重要な観点が「職務分離」の実現です。たとえば、仕入先の登録業務と購買業務を同一の担当者が兼任している場合、架空取引先の登録や不正な発注を通じた横領リスクが高まります。同様に、検収(商品の受領確認)と支払業務が同じ担当者により行われている場合には、未入荷商品への不正な支払が行われる可能性もあります。

中国現地法人では、業務リソースの制限から一人が複数業務を兼任することが多く、業務分掌の曖昧さがリスクの温床となります。監査では、職務分掌表や業務フロー図を確認し、実態としてどのような担当者配置がなされているか、相互牽制が機能しているかを精査します。

 

4. 発注・検収・支払プロセスの一貫性

仕入プロセスにおいては、「発注」「検収」「支払」という三つのステージを一貫して管理することが求められます。発注時には予算との整合性、検収時には納品物の品質・数量の確認、支払時には請求書・発票(中国の税務レシート)との照合が必要です。中国では、発票の偽造や誤発行の問題もあるため、請求書や発票と納品書の三点突合(3-way matching)が内部統制上の要件として重視されます。これにより、適正な支出がなされていること、また企業資産の流出を防止する体制が整備されているかが問われます。

 

5. 購買先の選定プロセスと価格の妥当性

仕入先の選定においては、「価格の妥当性」や「透明な選定プロセス」が確保されているかも監査の対象となります。特定の業者に対する継続的な発注や、価格交渉の履歴が残っていないケースでは、利害関係者との癒着や不当な価格設定の疑念を生む要因になります。

監査では、複数社からの見積比較、入札の実施記録、選定理由書、承認フローの文書化などが確認されます。特に競争性を欠いた調達については、上長の承認や第三者レビューの有無が問われ、調達の透明性と公平性が評価されます。

 

6. 文書管理と電子化対応の現状

中国では、税務や法務上の理由から、契約書や発票の原本保管が厳しく求められます。これに加えて、近年では電子発票や電子契約も広く導入されつつあり、文書管理体制の電子化が企業監査における新たな評価軸となっています。

監査においては、契約書・請求書のファイリング状況、発票のスキャン・保存体制、電子ファイルのアクセス制限などが確認されます。また、電子文書については、バックアップ体制や改ざん防止のためのセキュリティ対策も重要な確認事項です。

 

まとめと今後の対応

仕入・購買業務は、企業活動における「支出の出発点」であり、不正リスクや誤謬が発生しやすい領域です。中国における企業監査では、規程類の形式的な整備だけでなく、実態に即した運用や牽制機能の有無、電子化への対応状況など、幅広い観点から評価がなされます。

企業としては、購買に関する基本ルールの徹底に加え、担当者の職務分離、承認フローの明文化、取引先選定の透明性を確保しつつ、内部統制を強化することが求められます。特に中小規模の現地法人においては、業務の属人化を排し、ルールベースの運用体制を早期に構築することが、リスクを未然に防ぐ鍵となるでしょう。

 

今回は、中国現地法人の監査項目の仕入および購買プロセスについてご案内させていただきました。中国法人設立および中国会計税務・監査に関してのご相談はhttp://business.chinafocus.jp/まで、お問合せください。

 

ご案内

ガルベラ・パートナーズでは、中国進出から会計税務・労務・中国での生活サポートなどをワンストップでサポートしています。具体的なサービスといたしましては、設立・会計以外に①法律関係(裁判、労務訴訟対応、会社内法律顧問)②物流関係(輸入、輸出際の税関規定)③工場アテンド(中国国内工場探し)④展示会関係(ブースの構築、人員配置など)⑤代理店探し(中国の販路拡大)⑥取引調査(財務データ調査、信用調査)を行っています。

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