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中国|中国情報:中国企業監査:情報資産管理について

2025/04/17

Q、中国現地での、情報資産管理について教えてください。

A、デジタル化が急速に進む現代社会において、情報資産は企業にとって極めて重要な資産の一つです。情報資産には、取引先情報や従業員データ、会計情報、営業機密、設計図、契約書類など多岐にわたる情報が含まれます。これらは適切に保護されなければ、外部への漏えいや内部不正、サイバー攻撃のリスクにさらされ、企業の信用や経済的損失に直結する可能性があります。
今回は、中国企業監査を元に情報資産管理プロセスについてご案内させていただきます。

 

解説(公開日:2025/04/17)

 

中国企業監査・情報資産管理について

中国においても、個人情報保護法(PIPL)の施行やサイバーセキュリティ法の強化など、情報資産に対する法的規制と社会的関心が高まりを見せています。そのため、現地法人を持つ企業にとって、情報資産管理の実効性を担保するための監査が不可欠な取り組みとなっています。

 

1. 情報管理に関する規程・マニュアルの整備

情報資産の管理体制を確認するうえで、まず重要となるのが「情報管理に関する規程やマニュアル」の有無です。情報資産管理の方針や取扱手順が明文化されておらず、現場に任せきりとなっている場合、統制が効かず、重大な情報漏えいを招くリスクがあります。

監査では、規程やマニュアルが作成されているか、現地語(中国語)で整備されているか、そして従業員に周知されているかといった観点で確認が行われます。たとえば、「情報セキュリティ管理規程」「USB・端末管理ポリシー」「個人情報取扱規程」などが社内に整備されていることが理想です。さらに、これらの規程が最新の法令や技術環境に適合しているかどうかも重要な確認事項です。

 

2. 情報統制の運用状況

次に確認されるのが、各種情報統制が「実際に運用されているかどうか」です。これは、紙資料や電子データの管理、USB・外部記録媒体の使用制限、社内ネットワークのアクセス制御、ファイル共有の制限、社外持ち出しの管理、重要書類の電子化・暗号化などを含みます。

特に注目されるのが、以下の分野に関する運用状況です

  1. ・重要文書の保管と管理
  2. ・個人情報の適正管理(PIPL対応)
  3. ・情報漏えい対策(メール、クラウド、SNS経由の漏えい等)
  4. ・端末管理(PC・スマートフォン・USB等)
  5. ・BCP(事業継続計画)としてのバックアップ体制
  6. ・インサイダー情報管理(上場企業・関連会社の場合)

監査では、情報管理担当者へのインタビューやログ管理の確認、操作履歴の抽出などを通じて、統制が「形骸化していないか」が評価されます。

 

3. 重要文書の分類と管理レベルの明確化

情報資産はすべてが同じレベルで扱われるわけではなく、その重要性に応じて「機密情報」「社外秘」「社内限」「一般公開可」といったレベルに分類され、それぞれに応じた保管方法・アクセス制限が設けられているかがポイントとなります。

監査では、たとえば営業機密や顧客リスト、個人情報などに対して、以下のような管理が行われているかを確認します

  1. ・匿名化または仮名化処理の有無(個人情報)
  2. ・アクセス制限の設定状況
  3. ・操作ログの取得と定期的な見直し
  4. ・管理責任者の明確化

情報の区分が不明確なまま一元的に管理されていると、事故発生時の対応が遅れ、被害が拡大するリスクがあります。

 

4. 文書の保管と法令遵守

紙媒体および電子媒体の文書について、保存期間や保管場所、破棄方法が法令に従って適切に管理されているかも、重要な監査項目です。中国では税務・労務・契約・会計に関する書類について、一定の保存義務が課されています。

特に以下の点が監査で確認されます

  1. ・書類の保存年限(7年保管が一般的)
  2. ・保存媒体(紙・電子)の明示
  3. ・廃棄時の記録と承認手続き
  4. ・データ復旧可能なバックアップ体制

また、サーバーの設置場所(中国国内の要件)やクラウドサービスの選定についても、法令との整合性が問われる場面があります。

 

5. 教育・訓練と緊急時対応

情報資産管理の統制が有効に機能するためには、日常的な教育・訓練と、緊急時の対応体制の整備が欠かせません。情報管理に関する社内研修が定期的に行われているか、違反時の対応ルール(懲戒、報告フローなど)が整備されているかが確認されます。

また、情報漏えいなどのインシデントが発生した場合に備えて、以下のような緊急対応マニュアルの整備状況も問われます

  1. ・インシデント報告書フォーマットの整備
  2. ・社外(顧客・監督当局)への報告基準
  3. ・初動対応フロー(封鎖、調査、通知など)
  4. ・法務・広報・ITなど関係部署との連携手順

こうした仕組みが整っていない場合、被害が拡大したり、企業の信頼を損なう事態になりかねません。

 

おわりに

中国における情報資産管理は、今や企業活動における中核的な統制分野の一つであり、単なるITの問題にとどまらず、法務、総務、人事、営業など部門横断的な管理が求められる領域です。特にPIPL(個人情報保護法)やサイバーセキュリティ法の影響を受けるなかで、企業はリスクに対して受け身ではなく、能動的かつ計画的に統制を構築していく必要があります。監査は単なる形式チェックではなく、情報統制が「実効的に運用されているか」を見極める機会です。その結果をもとに改善点を洗い出し、継続的に統制の質を高めていくことが、信頼性ある企業経営の基盤となるでしょう。

 

今回は、中国現地法人の監査項目の情報資産管理プロセスについてご案内させていただきました。中国法人設立および中国会計税務・監査に関してのご相談はhttp://business.chinafocus.jp/まで、お問合せください。

 

ご案内

ガルベラ・パートナーズでは、中国進出から会計税務・労務・中国での生活サポートなどをワンストップでサポートしています。具体的なサービスといたしましては、設立・会計以外に①法律関係(裁判、労務訴訟対応、会社内法律顧問)②物流関係(輸入、輸出際の税関規定)③工場アテンド(中国国内工場探し)④展示会関係(ブースの構築、人員配置など)⑤代理店探し(中国の販路拡大)⑥取引調査(財務データ調査、信用調査)を行っています。

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