2025/11/26
おすすめ QandA
A、令和7年11月19日に、自動車等通勤者の通勤手当の片道通勤距離ごとの1か月あたりの非課税限度額が引き上げられました。令和7年4月に遡って適用されるため、4〜10月分の通勤手当も年末調整で精算が必要になります。
令和7年11月19日の所得税法施行令の改正で「マイカー等で通勤する従業員」に対して企業が支給する通勤手当の非課税限度額を引き上げられました。とくに片道距離が長い従業員ほど影響が大きく、企業の給与計算実務にも一定の対応が求められます。ここでは、実際の給与計算例を用いながら、実務上の注意点を詳しく解説します。
従来より、片道2km以上のマイカー通勤者に対して支給される通勤手当には、距離区分ごとに非課税限度額が設定されていますが、今回の改正により、片道10km以上の区分について限度額が軒並み引き上げられました。片道10km未満の区分には変更がありません。以下に法改正前後の非課税限度額の増加額を掲載します。
| 片道通勤距離 | 改正前の非課税限度額 | 改正後の非課税限度額 | 増加額 |
| 2 km 未満 | 全額課税 | 全額課税 | 0円 |
| 2 km以上〜10 km未満 | 4,200円 | 4,200円 | 0円 |
| 10 km以上〜15 km未満 | 7,100円 | 7,300円 | 200円 |
| 15 km以上〜25 km未満 | 12,900円 | 13,500円 | 600円 |
| 25 km以上〜35 km未満 | 18,700円 | 19,700円 | 1,000円 |
| 35 km以上〜45 km未満 | 24,400円 | 25,900円 | 1,500円 |
| 45 km以上〜55 km未満 | 28,000円 | 32,300円 | 4,300円 |
| 55 km以上 | 31,600円 | 38,700円 | 7,100円 |
たとえば片道15km以上〜25km未満の区分であれば、12,900円 → 13,500円(+600円) に引き上げられており、この増額分については従業員の所得税・住民税にも直接影響します。
以下のケースを例に考えてみます。
給与:300,000円/月
通勤手当:15,000円/月
片道通勤距離:20km(該当区分:15〜25km未満)
12,900円
→ 課税される金額:15,000円 − 12,900円 = 2,100円
13,500円
→ 課税される金額:15,000円 − 13,500円 = 1,500円
つまり、課税額が年間を通じて600円/月 減少します。
改正は令和7年(2025年)11月19日に施行されていますが、非課税限度額の適用は 令和7年4月1日に遡って適用されます。
この改正により、給与計算上は令和7年11月支給分から新限度額を適用する企業が多いかと思われますが、令和7年4〜10月の7か月分は旧基準で課税してしまっています。
そのため、この差額を 年末調整で精算する必要があります。
例の社員の場合、
600円 × 7ヶ月 = 4,200円 が「本来は非課税だった額」に該当します。
年末調整で源泉所得税の過不足精算を行う際に、4〜10月分の課税誤差を調整し、従業員に還付される、という処理が必要です。
令和7年11月支給分(企業によっては12月支給分)から新しい非課税限度額を適用できるよう設定変更が必要です。距離区分と非課税限度額のテーブルを最新化しておきましょう。
今回の改正は遡及適用のため、年末調整で差額の精算を行います。
チェックポイント
距離区分によって非課税限度額が変わるため、次の確認も必要になります。特にマイカー通勤者は通勤距離の誤差が出やすいため、距離が5km以内の区分にまたがっていないか確認する必要があります。
企業によっては「非課税限度額以内を支給する」という規程になっています。
限度額の引き上げにより、通勤費の非課税限度額に関する内容を改訂する必要があります。
非課税限度額が変わると、従業員の手取り額に影響する場合があります。
とくに片道距離が長い従業員ほど還付額が大きくなるため、事前説明を行うと安心感につながります。
今回の改正は、マイカー通勤者に対する実質的な減税となる内容です。とくに通勤距離が長い従業員が多い企業では、影響が大きくなります。一方で、給与計算・年末調整の実務は一時的に煩雑になるため、早めの準備が重要です。
なお、今回の改正は「すべてのマイカー通勤者に恩恵があるわけではなく、片道10km以上の区分に該当する人だけが対象」という点にも注意が必要です。公共交通機関だけを利用している社員にも恩恵はありません。
当社は社会保険労務士法人として、通勤手当の取扱いを含む給与計算・年末調整・就業規則改定・人事労務全般のサポートを行っております。今回のような法改正への実務対応や、貴社の状況 に合わせた運用方法のご相談も承っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
以下に、国税庁が出しているFAQをもう少し簡単にして記載しています。ご参照くださ
- Q1. 改正後の非課税限度額はいつから適用されますか?
- A1. 令和7年4月1日以後に支払われる通勤手当から新しい非課税限度額が適用されます。
- Q2. 「令和7年4月1日以後に支払われる通勤手当」とは何ですか?
- A2. 基本的には「支給日が4月1日以後の通勤手当」のことです。支給日が決まっていない場合は、実際に受け取った日が基準になります。
- Q3. 4月10日に“3月分”の通勤手当を支給した場合、改正後の限度額は使えますか?
- A3. はい。4月10日が支給日なので、改正後の限度額が適用されます。
- Q4. 3月10日に“4月分”を先に支給した場合はどうなりますか?
- A4. 3月10日は改正前の期間なので、改正前の限度額が適用されます。
- Q5. 規程改定で4月に遡って通勤手当を増額し、その差額を12月25日に支払う場合、差額も改正後ですか?
- A5. はい。支給日が12月25日で、4月以降分の差額なので、改正後の限度額を使います。
- Q6. 規程改定で“1月に遡って”増額した場合、差額にも改正後の限度額を使えますか?
- A6. いいえ。差額は「3月10日に支払われるべき通勤手当」の補填なので、改正前の限度額を使います。
- Q7. 未払いだった2月分の通勤手当を4月10日に支給したら?
- A7. 元の支給日(3月10日)が改正前なので、改正前の限度額を使います。
- Q8. 未払いだった8月分(支給日:9月25日)を12月25日に支給したら?
- A8. 元の支給日は4月以後なので、改正後の限度額を適用して源泉徴収します。
- Q9. 4〜10月支給分を旧限度額で処理していました。遡って再計算が必要ですか?
- A9. 再計算は不要です。年末調整で改正後の基準に合わせて精算します。
- Q10. 給与ソフトで「新たに非課税となった金額を源泉徴収簿に書く」機能がありません。どうすれば?
- A10. 正しく年末調整の税額が計算できていれば、記載しなくても問題ありません。
- Q11. 改正後の限度額との差額を4月に遡って追加支給した場合、年末調整で精算は必要ですか?
- A11. 追加分を含めても全体が「改正後の非課税限度額以内」であれば、全額非課税となるため精算は不要です。
- Q12. 年の途中で従業員が死亡し、年末調整を済ませていた場合の取扱いは?
- A12. 改正前の限度額以内であれば追加対応は不要です。限度額を超えていた場合は、改正後の限度額で再計算し、年末調整の修正が必要です。
- Q13. 年の途中で従業員が海外赴任し、非居住者となった場合は?
- A13. Q12と同じ扱いです。改正前の限度額以内なら対応不要、超過していた場合は改正後基準で年末調整の再計算が必要です。
- Q14. 給与所得の源泉徴収票はどう記載すればよいですか?
- A14. 「支払金額」欄には、非課税となる通勤手当を除いた金額を記入します。
- Q15. 年の途中で退職した人に源泉徴収票を既に交付しています。修正は必要ですか?
- • 改正前の限度額以内 → 修正不要
- • 改正前の限度額超 → 改正後の限度額で非課税が増える場合、源泉徴収票の「支払金額」を訂正し、「摘要」欄に「再交付」 と記載して再発行が必要です。
参照:通勤手当の非課税限度額の引上げに関するQ&A(国税庁:PDF)
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