2016/09/07
Q 海外駐在員の社会保険について質問です。当社の海外駐在員の社会保険は、厚生年金と健康保険を継続加入することになっていますが、その標準報酬月額をどのようにすればよいかよく分かりません。日本年金機構の資料を読んでも、今ひとつ不明確に思えるのですが、どのように判断すればよいのでしょうか?
A お尋ねの件については、すでに日本年金機構から資料が発表されていますが、できる限り具体的な状況を想定してご説明してみたいと思います。
資料の状況をまとめると、次のようになります。
◆日本本社=A事業所
◆海外子会社=B事業所
◆被保険者(海外駐在員)をZとします
◆Zさんの海外給与(B事業所から)は30万円
◆Zさんの国内給与(A事業所から)は40万円
日本国内であれば、二箇所給与の場合は、「二以上事業所勤務届」を提出することで、合算して標準報酬月額が決定されるのですが、海外駐在員の場合は、必ずしも合算されるとは限りません。
日本年金機構の資料には、いろいろと書いてありますが、ポイントは次の点です。
(1)A事業所およびB事業所双方から給与を受けているが、B事業所から支給される給与はB事業所の給与規定に基づいている場合
→A事業所の給与規定等に基づき支払われている給与等40万円が「報酬等」になる。
(2)A事業所およびB事業所双方から給与等を受けているが、B事業所から支給する給与等はA事業所の給与規定に基づいている場合
→A事業所から支給される40万円とB事業所から支給される30万円を合算した70万円が適用事業所から支払われている「報酬等」になります。
これは、どのような状況を指しているのでしょうか?
一般的に、海外駐在員は、海外子会社Bから、給与を受けながら、差額補填として、日本本社Aからも、国内給与・留守宅手当・家族手当等の名目で給与を受けることが多くなっています。
ここでポイントとなるのが、B給与の30万円が、一体何を根拠に決められているかという点です。
海外の給与水準を調査するなどして、現地水準をベースに、海外子会社Bがルールとして30万を決めていると言えるのであれば、事例(1)に該当します。
逆に、海外子会社ということで、国内本社Aが主導して、B給与を30万と一方的に決める形になっているのであれば、事例(2)に該当すると考えられます。
ここで重要な点は、日本本社と海外子会社の関係性といえます。原則として、海外現地のルールについては、海外子会社Bが決めるのが本筋と言えるのですが、そうした決め方をした方が、標準報酬月額の点でも優遇されると言えるのではないでしょうか。
海外子会社が、日本本社の100%子会社である場合は、その区別が曖昧になりやすいのですが、法律上はあくまでも、別の法人であるという観点で整理していただくと、混同はないのではないかと思います。
逆に、海外子会社Bが、現地ローカルとの合弁企業のような場合は、日本本社Aとの連携が取れず、A給与を計算するのに手間取り、標準報酬月額を確定できないという事例もあるため、やはり関係性は重要と言えます。
また、社会保険について誤解されやすい点ですが、海外駐在員については、選択加入であるかのように考えておられる会社がありますが、社会保険制度は任意で加入したり、脱退できるような選択的なしくみにはなっておりません。あくまで、A給与が発生する以上は、継続加入義務があり、A給与が消滅すれば、資格喪失となります。
なお、今回の話は、あくまで社会保険の継続加入についての論点ですので、所得税の納付義務に係る税務上の判断は、国際源泉課税を専門とする税理士等にご確認いただければと存じます。
弊グループでは、日系企業様の海外進出を支援させていただいており、海外駐在員の給与、所得税、社会保険、福利厚生等の労務管理のご支援をさせていただいております。ぜひお気軽にご相談ください。
◆ ガルベラのメールマガジンに登録しませんか◆
当社では毎月1回、ご登録をいただいた皆様へメールマガジンを配信しております。
税務・労務・経営に関する法改正や役立つワンポイントアドバイスをご案内しておりますので、ぜひ貴社の経営にご活用ください!
10秒で登録が完了するメールマガジン 登録フォームはこちら!!