2014/12/03
Q 日系企業の進出先として、ASEANに注目が集まっています。なかでもフィリピンは今年(2014年)の7月に人口1億人を突破したというニュースもありましたが、投資先としてのフィリピンの魅力について教えてください。
A ニュースでもありましたように、フィリピンはASEAN域内で、インドネシアに次ぐ人口を有し、その半分は21歳以下の若年層です。ASEANの製造業をリードしてきたタイが深刻な人手不足、賃金上昇に見舞われている中で、フィリピンは生産拠点としても、市場としても、改めて見直されています。
そこで、各種データからフィリピンの現状を確認してみたいと思います。
(1)日系企業の進出の状況について
2014年10月現在で1,260社が進出しています(タイ1,552社)。
多くの日系企業がフィリピン経済区庁(PEZA)の投資促進制度を活用して進出を果たしていることもあり、フィリピン進出と言えばPEZAというイメージになっているのではないでしょうか。
PEZAの登録を受けると法人税が4~6年免税となり、その後も特例税制や輸入関税免除などを受けることができます。特区内の事務所で簡単に通関手続きを行うことができるなど、多くのメリットがあります。
(2)インフラの状況について
他のASEAN諸国と異なり、停電はほとんどなく安定的な電力供給が可能です(ただし電力料金は他国より高いです)。
ただし、現地での部品調達率は27.9%と、タイの半分のレベルにとどまっており、裾野産業の集積が待たれるところです。
駐在員の生活環境に関しては、たいへん良好とのことです。日本食も大部分が現地で入手可能であり、医療水準は高く(医療費は安い)、レーシックなどの手術を受けて帰国する駐在員もいます。
(3)労働力の状況について
人口が豊富で、ワーカーの募集は、他のASEAN諸国と比較して容易です。工業団地の管理事務所や工場前のポスターで容易に求人が可能です。2013年のデータで、離職率7.51%(製造業3.85%)と低いのですが、日系企業の経営上の問題点として「現地人材の能力」が挙げられていることから、労務マネジメントには工夫が必要であるようです。
ただ、データから見ても、他のASEAN諸国に比べて、賃金上昇率が低く、労働争議も少ないことが分かりますので、労働力には恵まれた環境であると言えます。
(統計データはJETRO「各国基本情報・統計」より引用)