GERBERA PARTNERSブログ

労務管理,ハラスメント対策|その言動、パワハラになっていませんか?

2018/03/14

Q、最近、事ある毎に「パワーハラスメント(以下パワハラ)」という発言を耳にします。厳しく指導しなければならない際にも躊躇してしまい、規律が緩んでいかないか心配しています。明確な基準はあるのでしょうか。

 

A、パワハラには法的な定義がないことに加え、程度の問題によるところもある事から一定の線引きを行うことは難しいところです。しかし厚生労働省は、パワハラの定義や具体的な類型を公表するなどして基準を定めています。過度に敏感に反応せぬよう、内容を正しく理解しましょう。

 

解説(公開日:  最終更新日:

もともとパワハラについて規定された法律は存在しないため、「一度は耳にしたことがあるけど内容はよくわからない」といった人が多いのではないでしょうか。

2012年3月に厚生労働省により公表された「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言取りまとめ」の中でパワハラが定義されていますので、過去の裁判例も参考にしながら対策を行いましょう。

   

1.パワハラの定義

「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。」厚生労働省「あかるい職場応援団」HPより

 

「職場での優位性」については、上司から部下だけでなく、先輩・後輩や同僚、部下から上司などあらゆる場合が当てはまります。特に判断が難しいのが、「業務の適正な範囲を超えて」の部分です。部下への必要な指示や注意・指導に不満を感じたとしても業務の適正な範囲で行われていれば問題ありません。上司としては、組織運営の為に業務を指示し、部下を教育指導することこそが役割であるため、自身の言動が適正か否かを常に意識することが必要です。

   

2.6つの類型

ではどのような言動が適正な範囲で、どのような言動がパワハラになるのでしょうか。 厚生労働省はパワハラを以下の6つの類型として明示しています。最終的には、行為が行われた状況等詳細な事実関係を把握しなければ判断ができないのですが、行動規範として日ごろから注意を払いましょう。

 
類型
具体例
(1) 身体的攻撃 叩く、殴る、蹴るなどの暴行を加える。
(2) 精神的攻撃 他の従業員の前で叱責する。
他の従業員を含めたメールで罵倒する。
業務に適さない暴言を吐く。
(3) 人間関係からの引き離し 1人だけ別室に席を移す。
正当な理由なく自宅待機命令を命じる。
懇親会に出席させない。
(4) 過大な要求 到底処理できない量の仕事を押し付ける。
業務の指示を一切与えずに仕事を与える。
(5) 過少な要求 本来の業務と関係なく、
草むしりやシュレッダー係などの単調業務を行わせる。
(6) 個の侵害 プライベートに干渉する。
有休の理由を執拗に聞く。
 

(1)身体的な攻撃(3)人間関係からの引き離しについては、業務との関連性が低いため、パワハラという認識が理解しやすいのではないでしょうか。

 

(2)精神的な攻撃については、注意、指導との境界線が論点となる部分です。しかし、「ばか」「のろま」「小学生なみだ」「無能」「やめてしまえ」といった発言は通常業務遂行に必要ありませんので使用は控えるべきです。奮起を期待する言動という理屈はなかなか通らないのが現状です。叱ってやる気を引き出すマネジメントから目標設定と評価によるやる気の引き出しへと環境は変化しています。

 

(4) 過大な要求(5) 過少な要求については業務指示の観点から(2)と同様に非常に判断が難しい論点です。部下の成長のために業務量や質のコントロールを行うのも上司の仕事です。上司としてケアをしつつ、時には成長のために力量を超えた仕事を与えることはパワハラではありませんが、明らかに処理できないような仕事の与え方は慎むべきでしょう。

 

(6)個の侵害については私的な部分について「把握する必要がある部分」と「執拗に聞くべきでない部分」を明確にしておく必要があります。業務に影響を与えるような私生活上のトラブル・不安や健康面について把握をするための会話は必要だといえますが、一方、興味本位で、休日の過ごし方や交友関係、家族関係へ介入することは慎むべきです。有給休暇取得の理由についてはよく論点となりますが、むやみに休暇理由を求めることはできず、時季変更を行う場合の判断として理由を確認する程度が適正な範囲といえるでしょう。

     

3.パワハラと認定されると

パワハラを行った場合どのような結果を招くのでしょうか。パワハラを規定した法律はありませんので以下の根拠により司法判断されることとなります。

  1. 暴行罪
  2. 傷害罪
  3. 名誉棄損罪
  4. 侮辱罪
  5. 脅迫罪
  6. 不法行為による損害賠償
  7. 使用者責任による損害賠償
  8. 債務不履行による損害賠償
 

訴訟とまではいかずとも、あっせんや労働審判などに発展するケースは急増しています。 刑事事件、民事事件となれば加害者、被害者ともに多大な労力を割くこととなりますし、たとえ会社側の訴えが認められたとしても社会的な使用低下を招くこともあります。

 

まずはパワハラが発生しない環境づくりを進めましょう。

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