GERBERA PARTNERSブログ

中国|中国現地法人の残業問題とその対策 その1

2015/03/11

Q 中国の残業問題について、従業員との間でトラブルになる前に法律と実務上の留意点をおさえておきたいと思います。残業問題に対する対策もふくめて、教えていただけますか?<その1>

 

A 中華人民共和国労働契約法は、2007年6月29日に中国全国代表大会常務委員会で採択され、2008年1月1日から施行されました。それまで企業側の意向により左右されていた労働条件について、法的基準が明確にされたことは大きな変革であり、それ以降の中国の労使関係をめぐる環境は一変しました。

 

 従来の中国の労使関係においては、就業時間内に業務目標を達成できない労働者は、目標未達成を理由に時間外労働を強制されたにも関わらず、その割増賃金が支払われないといったケースが多く見られました。このことから、2008年に施行された労働契約法(2013年一部改正)では、第31条で労働者に対して時間外労働を強制したり、形を変えての強要をしてはならないと規定されました。

 

 労働契約法において日本企業を含む外資企業が注意すべき点はいくつかありますが、そのなかでも中国の残業問題は年々大きく取沙汰されており、中国各地での基準が違うことや、まだ法律が完全に整備されていないことが、事態をより難しくしています。

 

中国の時間外労働に関わる主要規定

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 そもそも中国の“労働法”では、その第41条に「雇用企業は生産需要に応じて、工会(日本の労働組合に相当)と労働者の協議を得た後、業務時間を延長することができるが、一般的に1日1時間を超えてはならない。特殊な事情により業務時間を延長する必要がある場合には、労働者の健康を保証し、かつ、業務時間は毎日3時間を超えてはならず、毎月の合計残業時間は36時間を超えてはならない」と規定しています。企業がその規定をやぶり、不当に勤務時間を延長したり、残業代金を払わなかったりした場合、かなり重い罰則が科されます。

 

 次に、残業に際しての割増率について記載したいと思います。残業に際しての割増率は、労働部の“賃金支払い暫定規定”において、平日就業時間終了後に引き続き残業をする場合は基数に対して150%、会社の休日に出社し残業をする場合は200%、法定休日に出社し残業する場合は300%とすると定められています。会社の休日は本人との協議のもと、平日勤務との振替での代休取得が可能ですが、法定休日の出社は必ず割増賃金の支給が必要となりますので注意が必要です。

 

割増賃金率(割増賃金の基礎となる金額に乗ずる率)

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 150%、200%、300%といった割増率を乗じる基数には、家族手当、住宅手当、食事手当、交通費といった各種手当や社会保険料などは含まれず、これらを差し引いたあとの金額が基数となります。もし能力給や役職給などがある場合、それらは基数に含まれることになります。残業が多い企業では、同じ額の手取額を支給する場合でも、基数に含まなくてもよい手当を明確に区分して支給するようにしています。手当を明確に区分しない場合は、すべてが基数として計算されてしまうため、明確に諸手当と給与を分けて記載するほうが企業にとって有利になるのです。

 

>> 次の記事(その2)

 

こちらの記事は、みずほ銀行のCHINA REPORTに寄稿したものです。

 

中国の労働法については、こちらのサイトにも掲載しています。