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中国|中国情報:中国企業監査:販売管理について

2025/04/15

Q、中国現地で、社内外での不適切な取引が起こりにくい、適正な販売管理を行うための対応方法について教えてください。

A、中国における企業監査において、「販売管理」は経営実態を映す極めて重要な要素の一つとされています。販売活動は企業の収益の源である一方、不適切な取引先管理、価格設定、売上計上時期の誤りなど、不正や誤謬が起きやすい分野でもあります。そのため、内部統制の仕組みやその運用状況が厳しく問われます。中国現地法人における販売管理の実態と、監査で確認されるチェックポイントをもとに、リスク低減に直結する企業が整備すべき統制体制について解説します。

 

解説(公開日:2025/04/15)

   

中国企業監査・販売管理について

1. 販売管理における規程およびマニュアルの整備状況

販売活動に関わる業務は、営業方針、価格設定、与信管理、受注から売上計上、請求・回収に至るまで多岐にわたります。これらの業務を適正に行うためには、規程や業務マニュアルの整備が不可欠です。例えば「販売管理規程」「与信管理規程」「顧客登録ルール」などの文書が整備され、それが社内で実際に遵守されているかどうかが、監査では確認されます。

中国現地法人の場合、日本本社のルールが形式的に導入されているだけで、現地実務との乖離が生じていることも多くあります。監査では、これら規程が中国語で整備され、営業担当者に周知されているか、また業務フローに反映されているかが注視されます。

 

2. 売上目標・計画と進捗管理の体制

売上の目標や予算計画が策定されているか、またその達成状況が定期的にレビュー・管理されているかも、内部統制上の重要な観点です。監査では、月次や四半期ごとの売上実績が目標と比較され、未達成の場合の改善策や営業会議での議論内容が記録として残されているかを確認します。

進捗管理が形骸化している場合、売上操作や不適切なタイミングでの売上計上(例:月末に無理やり納品)といったリスクが生じます。そのため、KPI管理の仕組みや営業部門のモニタリング体制の有無も評価されます。

 

3. 与信管理・価格設定・例外処理のルール化

販売における重大なリスクとして、「売掛金の回収不能」があります。これを防ぐためには、顧客ごとの与信限度額の設定、定期的な与信見直し、遅延債権に対する対応策などが求められます。監査では、与信管理ルールが存在し、実際に機能しているか、また取引開始前に十分な信用調査が行われているかが確認されます。

さらに、価格(マージン率)の決定方法や例外的な値引・キャンペーンの承認プロセスも、販売活動におけるリスク管理の一環です。標準価格表や承認フローが整備されていない場合、恣意的な価格設定や利益率の劣化、不正取引の温床となり得ます。

 

4. 職務分離と相互牽制の運用

販売管理でもっとも見落とされやすく、かつ重大な不正の要因となるのが、職務分離の欠如です。たとえば、「新規顧客の登録」と「受注処理」を同一担当者が行っている場合、架空顧客を作って架空売上を計上するリスクが高まります。

監査では、営業、経理、請求、回収といった業務が適切に分担されているかを確認し、組織図や職務分掌規程、業務フローと照らし合わせてチェックされます。特に少人数で運営されている中小規模の現地法人では、牽制機能が機能不全に陥りやすいため、リスクの所在を明確にし、代替的なコントロール(上長による二次チェックなど)の導入が重要です。

 

5. 架空売上・過剰請求のリスクと対策

販売管理においては、売上の存在と金額の正確性が常に問われます。期末に売上目標を達成するための“見せかけの売上”や、出荷基準に達していない取引の前倒し計上など、会計上不適切な処理が横行するリスクがあります。

監査では、売上計上基準が明文化されているか、顧客ごとの売上伝票や出荷記録と整合しているかを確認します。また、返品や値引の処理が適切に記録・管理されているかも監査対象となります。過剰請求が行われていた場合、顧客からのクレーム対応や売掛金未回収につながる可能性があるため、二重チェック体制が求められます。

 

6. 顧客情報管理とコンプライアンス

顧客情報の管理も、販売管理の重要な一要素です。適切な取引先選定がなされているか、反社会的勢力や取引禁止国との関係がないかといった、コンプライアンスの視点も監査においては確認されます。

また、近年では個人情報保護の観点からも、顧客データの取り扱いが厳格化しており、CRMシステムの利用やアクセス権限管理の状況も評価対象です。情報漏えい対策やログ管理など、IT統制との連携も販売管理の範囲に含まれるようになっています。

 

終わりに

中国における販売管理は、単なる営業活動のチェックにとどまらず、売上の信頼性、与信リスク、職務分掌、コンプライアンスといった多面的な視点から評価される領域です。特に成長フェーズにある企業では、売上拡大に意識が集中しがちですが、それに伴う統制体制の強化が伴っていなければ、不正や誤謬が発生するリスクは高まります。

企業としては、形式的な規程の整備だけでなく、現場での運用実態の確認と継続的な改善活動を通じて、販売管理の健全化を図ることが求められます。監査の機会を契機に、販売管理体制を見直すことは、企業の信頼性と持続可能な成長に直結する取り組みと言えるでしょう。

 

今回は、中国現地法人の監査項目の販売管理とその管理プロセスについてご案内させていただきました。中国法人設立および中国会計税務・監査に関してのご相談はhttp://business.chinafocus.jp/まで、お問合せください。

 

ご案内

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