2025/04/16
A、中国での固定資産に関する監査項目を通じてご案内させていただきます。「固定資産管理」は財務健全性と内部統制の観点から極めて重要な監査対象の一つです。固定資産は企業の経営基盤を構成する要素であり、その取得、減価償却、保管、廃棄までの一連のライフサイクルを通じて、適切に管理されることが求められます。不適切な管理が行われた場合、減損損失や無形資産の形骸化、不正な資産流出といったリスクが顕在化する可能性があるため、企業は制度面と運用面の両面から統制強化が求められます。
中国現地法人における固定資産管理の内部統制体制と、監査において確認される主なチェックポイントについて解説します。
固定資産管理の第一歩として求められるのが、社内の規程やマニュアルの整備状況です。たとえば、「固定資産管理規程」「減価償却方針」「資産取得・処分に関する承認フロー」などが代表的な文書となります。これらの規程は単に存在するだけでなく、現場で理解され、実務に反映されていることが重要です。
中国現地法人では、日本本社の規程を翻訳しただけの文書が実務に適用されていないケースも多く、監査では、規程が現地語で整備されているか、また最新の運用ルールに合致しているかが確認されます。整備された文書がなく、担当者の経験や慣例に依存して管理が行われている場合、内部統制上の重大なリスクとみなされる可能性があります。
固定資産の帳簿上の価値を適正に表すためには、会計基準に基づく減価償却処理が正確に行われている必要があります。中国の会計基準(ASBE)では、日本基準やIFRSと異なる点もあるため、現地法人ではこれらの相違点を理解し、適切に対応する必要があります。
また、企業によっては財務会計と管理会計で異なる償却方法を採用している場合もありますが、その乖離が帳簿の整合性に影響を与えていないか、監査では特に注意が払われます。償却期間、残存価額、償却方法(定額法、定率法など)の設定が規程通りか、資産台帳に誤りがないかといった点がチェック対象です。
固定資産の中には、実際には利用されていない「遊休資産」や、市場価値が大きく減少した「減損資産」が含まれる可能性があります。こうした資産については、適切な評価と帳簿上の処理(減損損失の計上等)が求められます。
監査では、「固定資産減損検討シート」や減損の兆候リストなどをもとに、企業が定期的に資産の実態を見直しているかを確認します。例えば、長期間使用実績のない設備、老朽化した車両、事業再編により不要となった建物などが対象となります。これらの資産に対して、廃棄手続きが未処理のままになっていると、帳簿上は資産が存在していても実態と乖離した情報となり、経営判断を誤らせる要因となり得ます。
固定資産は高額な投資を伴うことが多いため、購入前に適切な計画と承認プロセスが必要です。企業は、損益計画や資金計画に基づいた「資産投資計画」を策定し、取締役会や経営会議における承認を経て、購入手続きを進めるのが原則です。
監査では、固定資産購入に関する意思決定が文書化されているか、関係者の承認印が揃っているか、予算超過が発生していないかなどを確認します。特に、突発的に導入された設備や、資金繰りの厳しい中での高額な投資については、事前審議と内部調整の有無が重視されます。
固定資産の実物管理も、内部統制における重要なポイントです。帳簿上の資産と実際の所在・数量・状態が一致しているかを担保するためには、「固定資産台帳」の整備と、定期的な「実地棚卸」が不可欠です。
監査では、台帳に記載された内容と現物照合が行われ、番号ラベルの貼付状況や保管状態、資産の使用実態などが確認されます。棚卸が数年単位でしか行われていない、あるいは棚卸結果が記録されていない企業は、資産の不明・紛失・盗難といったリスクが高まります。また、ERPや会計システムと固定資産台帳が連動していない場合、情報の二重管理によるミスも生じやすくなります。
不要となった固定資産を廃棄する際には、社内承認を経たうえで、適正な会計処理(除却損の計上や資産除去記録)が行われているかも確認されます。特に中国では、資産の処分について税務当局から証憑(廃棄証明、売却証明等)の提示が求められるため、文書管理体制が整備されているかが問われます。
監査では、廃棄対象資産のリスト、処分方法(売却、スクラップ、寄贈等)、承認記録、仕訳内容を照合し、過去に不適切な処理が行われていないかを調査します。廃棄漏れや記録漏れがあると、帳簿と実態が乖離し、資産過大計上の原因になります。
中国における固定資産管理は、単なる簿記作業にとどまらず、企業のリスクマネジメントおよび財務健全性の観点から重要な経営課題です。特に、中国現地法人においては、制度的整備と実務運用のギャップが発生しやすいため、内部統制の再点検と継続的な改善が必要不可欠です。
企業としては、規程の形式的整備だけでなく、実態に即した運用、職務分離、定期的な棚卸と減損評価、文書管理体制の強化など、多面的な施策を通じて、固定資産管理の質を高めていくことが求められます。監査の指摘事項は、単なるチェックリストではなく、組織の成熟度を高めるための指針として活用されるべきでしょう。
今回は、中国現地法人の監査項目の固定資産管理についてご案内させていただきました。中国法人設立および中国会計税務・監査に関してのご相談はhttp://business.chinafocus.jp/まで、お問合せください。
ガルベラ・パートナーズでは、中国進出から会計税務・労務・中国での生活サポートなどをワンストップでサポートしています。具体的なサービスといたしましては、設立・会計以外に①法律関係(裁判、労務訴訟対応、会社内法律顧問)②物流関係(輸入、輸出際の税関規定)③工場アテンド(中国国内工場探し)④展示会関係(ブースの構築、人員配置など)⑤代理店探し(中国の販路拡大)⑥取引調査(財務データ調査、信用調査)を行っています。
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