2015/02/18
Q 香港に拠点を設けようと思っています。日系企業が香港に進出するにあたって、考えられる組織形態と、そのなかでも特に現地法人のメリット、デメリットについて教えていただけませんか?
A 香港では、現地法人のほか、支店や駐在員事務所の設立も可能です。支店は売上を計上することもできますが、決算にあたっては日本本社の財務文書を翻訳して提出する必要が生じます。駐在員事務所はそもそも営業行為ができないため、品質管理や市場調査にあたって駐在員が長期間滞在するときなどに設置されます。まずは、その目的に合った組織形態を検討いただくことになります。
香港の現地法人といえば、通常は有限責任会社を指し、「有限公司」と言います。株主は個人でも法人でもよく、出資した金額を限度に責任を持つことになります。設立手続きはアジアで最も簡単といえますが、香港に住所がなければならず、また秘書役という役職者を登記しなければなりません。(これらは名義借りも可能です。)また、毎年会社登記局へ年次報告書を提出しなければなりません。
アジアで最も容易とされる手続きと低税率のおかげで、香港で法人を設立する会社は増える一方です。法人設立のメリットはさまざまですが、現地での迅速な意思決定と永久に繰越ができる税務上の損失、そしてアジアで最も安価な法人維持経費は魅力と言えます。たとえばペーパーカンパニーの場合、運用費用が非常に安く抑えることができます。よく並んで比較されるシンガポールと比べても、半額くらいで済むかと思います。
また、現地法人の形態を取ることで、その法人が「非居住者」となることができ、日本の法律では禁止されている海外の保険に加入することもできるようになり、日本の2~3倍の利回りのある保険商品を購入することもできます。
上記だけでなく、事業承継対策や中国本土やASEAN諸国への進出のための地域統括会社としての活用など、香港の現地法人には様々なメリットがあるといえます。
現地法人のデメリットとして、香港駐在員の給料について、日本本社がそれほど多くは負担できないという点が挙げられます。駐在員事務所は現地で営業ができないというデメリットがありますが、支店なら営業はできるうえに、問題ありません。
また、現地法人を設立するには、香港在住の秘書役を選定して登記しなければなりません。また、香港の域内の住所も登記に必要となります。これらの秘書役や住所は名義借りもで、当社のようなコンサルティング会社が名義を貸せますので、それほど大きな問題ではありません。
日本の中小企業のグローバル化が進むなかで、香港への進出は非常に多いといえます。ぜひメリット、デメリットをいろいろとご検討いただければと思います。