Q ドバイに初めて支店を持ち、ドバイ人他イスラム教徒(ムスリム)のローカルスタッフを雇っています。今年の巡礼月(ハッジ月)に休暇を取るスタッフが多いた為、どのように対応したら良いでしょうか?
また、イスラム教徒(ムスリム)の習慣で知っておくべきこと・気を付けるべき点を教えて下さい。
A 2017年の断食月(ラマダン月)が日本時間5月27日夜から始まる予想になっています。
宗教に関わる商慣習について、日本人経営者にとって理解がなかなか進まないところだと思います。
多くの現地日系企業は現地の商習慣に合わせた就業規則や海外赴任規定をローカライズ(現地化)する必要があり、労務管理にダイレクトに関わってきます。
今回は日系企業が中東の労働法など知っておくべきことをお伝えいたします。
巡礼休暇とは
巡礼といっても、アニメの「
聖地巡礼」ではなく、聖地メッカへの旅という意味です。アラビア語では「
マッカ」と呼び、巡礼は
「ハッジ(※1)」、マレーシアなどでは「
ハジ」と縮めて呼びます。
イスラム圏の多くでは、労働法の制度として巡礼休暇を認めています。
執筆者勤務していたサウジアラビアの現地法人では、就業規則の中に「
ムスリム従業員の巡礼休暇」について記載がありました。
以前ラマダンに関してブログで解説しましたが(【
2017年のラマダンについて企業がとるべき対策】
※別窓開きます)、現地労働法上企業が守るべき
イスラム法上(※2)のルールがあります。
(※1)巡礼には一生に1回行く大巡礼(ハッジ)と小巡礼(ウムラ)という2種類のものがあります。
(※2)イスラム法=シャリーア。コーランなどを法源とする法律。
労働組合の禁止
1)サウジアラビアの場合
イスラム法を最高法規とするサウジアラビア。最新の労働法は2006年に施行されました。労働法の定めを執行する場合には、労働者も雇用側もイスラム法を守らなければいけません。
また労働組合が禁止されています。その理由は団体を作るときは指導者を立て、メンバーは指導者に従うというルールがあるからです。労働者は指導者である経営者に従わないといけません。
そこで労使の対立を前提とする労働組合制度はこのルールに合致しないということになります。
2)アラブ首長国連邦(UAE)の場合
UAEも労働組合の禁止という使用者に有利な規定が定められています。
サウジと同じようにイスラム法的な観点から禁止されていますが、加えて海外企業誘致政策の観点からの側面もあります。
自国民保護政策について
UAEでは「エミラティゼーション」、サウジでは「サウダイゼーション」、と呼ばれる自国民保護政策があります。
サウジの場合の法定雇用率は75%となり、若い人たちの失業率が増えいる傾向にあります。UAEでは海外企業誘致政策を進めた結果、労働者全体の90%以上が外国人労働者であるため国民を保護する動きがあります。
まとめ
その他にサウジやUAE以外には、エジプトでは契約書を作成するときはアラビア語で作成しなければならないというルールがあります。
日本とは異なる労働法なので戸惑うこともあるとは思いますが、正しくアラブ・イスラム商文化を理解できれば柔軟に対応可能です。
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