GERBERA PARTNERSブログ

シンガポール|シンガポールと香港、進出するならどっちがいいの?

2020/09/25

Q、現在、海外企業の代理店として活動していますが、日本は税率が高いので、海外パートナーからの勧めもあり、どこか日本以外の軽課税国に法人を設立して、そこで収入を取りたいと考えています。香港かシンガポールが税率が低いと聞いたのですが、どちらがいいのでしょうか?貴社はシンガポールと香港に現地法人を置いて進出支援をしているとのことですので、両国を比較しながら説明してもらえませんか?

 

A、まず、日本にはタックスヘイブン対策税制という制度があり、単にシンガポールや香港などの軽課税国に法人を立ち上げて日本での利益をそちらに移したとしても、現地に実態のない会社であれば日本での利益とみなされて日本で合算されてしまいます。今回はこのタックスヘイブン対策税制の適用除外基準(別のブログ記事でご案内しています)をクリアしていることを前提に、シンガポールと香港の比較を進めてまいります。

 

解説(公開日:2020/09/25  最終更新日:2020/10/16 )

   

タックスヘイブン対策税制のことにもう少し触れますが、適用除外基準をクリアするには、現地でオフィスをレンタルし、責任者を置いて、実際に現地で業務を行うというのが大前提となります。また、サービス業の場合はそのサービスがどこで行われているのかも大きくかかわりますし、卸売業であればその取引先の過半数が日本本社など自社グループ以外の第三者との取引でなければなりません。

 

実は香港やシンガポールに進出したいというお客様のなかには、上記のタックスヘイブン対策税制のことをまったく考えずに、単に日本は税率が高いから海外の軽課税国に法人を立ち上げてそこで利益を出せばいいと、安直にお考えの方もいらっしゃいます。

 

もちろん、最初はこのような税務上の損得の気持ちだけでシンガポールや香港での法人設立の検討をスタートするのはまったく問題ありませんし、当社のお客様の大半はそのような考えをもってご相談にいらっしゃいます。当社のお客様には必ずタックスヘイブンのことをご理解、ご検討いただき、将来は現地に根を下ろしてビジネスを展開するから、そのためにもまずは現地に立ち上げたい、という方が結局は現地法人の設立を決断されています。

 

さて、本題に入りますが、シンガポールと香港のどちらに進出したほうがいいのか?というご質問への回答は、実はそれほど簡単ではありません。シンガポールと香港は、いい面、悪い面、それぞれにあるため、「どっちがいいです」という回答は、お客様が抱える前提条件により異なると言えます。そこで判断材料となる論点について、できるだけ簡潔に、どういう点を比較すればいいのかを解説してまいります。

 

(1)ビジネス環境

香港は1997年に中国に返還されて以来、中国との結びつきが一層強くなりました。現在は中国と取引をしているのであれば、中国と香港の間の協定(CEPA協定)により貿易面や租税面においていろいろな優遇があるため、シンガポールよりも香港のほうが有利とされています。また、日本には近いこともあり、往来が便利なのは香港といえます。最近は中国政府の国家安全法施行などの暴走で欧米諸国との関係が悪化しており、欧米企業が撤退を視野に入れているという話もありますが、そうはいってもアジア金融センターとしての香港の立ち位置に変動はなく、大半の外資系は今後も引き続き香港に根を下ろしビジネスを継続するものと思われます。

 

一方、シンガポールは東南アジア諸国とさまざまな租税協定を締結しており、東南アジア諸国に進出をするのであれば、その統括会社をシンガポールに置いておくことでグループ全体に資金を残していくこととして有利に働きます。このほか、シンガポールは日本にとって、インドやその西の中東への中継点としての地政学的性質も有しているため、シンガポールに拠点を持ち、そこにインド人や中東諸国の人材を雇用することでかなりの範囲をカバーすることも可能です。

 

(2)税制面

誰もが興味を抱くのが法人の税制です。シンガポールと香港の法人税率はそれぞれ17%と16.5%ですが、実は利益が3千万円くらいであれば税率はもっと低くなり、10%よりも更に低くなります。これは日本と比較しても相当低く、たとえば3,000万円の利益に対する納税額を比較しても、600万円以上違ってくることになります。

 

そのため、お金を残したいなら香港やシンガポールに拠店を置いてアジアビジネスを本格的にしようかな、という気持ちにもなりますよね。とはいえ、タックスヘイブン対策税制だけは気になる・・。といったところです。

 

そのため、香港やシンガポールに進出するにしても、タックスヘイブン対策税制だけは必ず検討しなければなりません。これをちゃんと説明しない会計事務所やコンサルティング会社もあるようですが、それは本当にNGであり、もはやコンサルタントとは呼べません。クライアントに対してはちゃんと全体のメリット・デメリットを説明して、その上で判断を仰がなければなりません。

 

話がそれましたが、以下が税制に関してのシンガポールと香港と日本の比較表となります。 シンガポールと香港はお互いをライバル視しているところもあり、税制が似ています。そのため、税制以外の面でも更に比較検討をしなければならないかと思います。

 
シンガポール
香港
日本
法人税 原則税率
所得の最大17%
所得の最大16.5%
所得の最大23.2%
法人税 軽減税率
50万ドルまで10%
200万香港ドルまで8.25%
800万円まで15%
法人住民税
なし
なし
法人税の約16%他
国外源泉所得
シンガポールに送金しなければ非課税
香港に送金しなければ非課税
原則課税対象
消費税
なし
なし
なし
所得税
所得の最大17%
所得の最大16.5%
所得の最大55%(住民税10%を含む)
キャピタルゲイン
なし
なし
20.315%
相続税
なし
なし
最大55%
贈与税
なし
なし
最大55%
 

(3)法人設立コスト面

まず大前提として、法人の設立コストがどれくらい異なるのかというと、シンガポールと香港の設立コストはそれほど変わりません。設立代行報酬、住所名義借り、秘書役名義借り、銀行口座開設報酬など一式で30~45万円ほどです。

 

ただし、シンガポールは取締役のうち1名は必ずシンガポールに永住していなければならないため、この取締役の人件費がどうしても発生します。これを回避する方法として、永住取締役の名義を借りるという方法がありますが、この名義借りの手数料は通常月額約5万円(当社の手数料はその半額程度)ほどかかります。常勤取締役というと法人の責任を負う立場となり、それなりの重責を担うことから報酬も高く設定されています。この永住取締役の名義を借りるわけですから、コストがどうしても発生するというわけなのです。

 

ではその永住取締役の名義を借りるくらいなら日本から赴任させよう、ということになると、実はこれも結構なコストがかかります。現在、シンガポールは外国人のビザ要件をどんどん厳しくしています。特に給与面では大卒30歳くらいで月給50万円くらいもらっていないと赴任させることができません。そのため、日本人は日本から出張とし、現地永住取締役は名義だけ借りておくという選択肢を採用される企業も多いといえます。

 

(4)年間運用コスト面

シンガポールも香港も、現地法人は年度更新が必要です。これは日本の重任登記のようなものですが、要するに登記情報が変わっていないかを毎年政府に報告し、年間の手数料を納めるということなのです。

 

もしオフィスもなく、人材も雇用しないとなると、住所の名義借りと秘書役や取締役の名義借りが発生します。(香港は取締役の名義借りは不要です。)

 

そして年間の決算業務も生じますが、ここはシンガポールと香港で手順が少し異なります。 シンガポールは一年間の決算を締めて、そのまま税務申告を行う会社が大半ですが、香港は決算を締めたあと、必ず政府公認の監査人による法定監査を受けなければなりません。そして監査人のお墨付きを得たあとで税務申告へと進みます。したがって、香港は法定監査業務の分だけ余分なコストが発生することになります。とはいえ法定監査は15~20万円くらいですので、それほど高額というわけではありません。

 

これらを勘案すると、シンガポールは取締役の名義借りが発生する代わりに、法定監査がなく、香港は取締役の名義借りがない代わりに、法定監査が必要となり、ミニマムで年間運用コストはシンガポールと香港のそれぞれで70万円、50万円ほどかかります。月額でいうとシンガポールは6万円、香港は4万円かかるということになります。逆を言えば、月額4~6万円あれば、シンガポール法人や香港法人を所有することができるということになります。

 

(5)年金、健康保険

年金や健康保険については、シンガポールや香港は、日本とちがって外国人は加入する必要がありません。香港の場合、現地のローカルスタッフは年金は強制加入ですが、シンガポールは現地のローカルスタッフさえ任意となっています。また、ローカルスタッフの健康保険はシンガポールも香港もともに任意となっていますが、会社として団体保険に加入することも多いと言えます。

 
シンガポール
香港
日本
年金
外国人は加入不可
外国人は任意
強制加入
健康保険
外国人は任意
外国人は任意
強制加入
 

(6)銀行口座の開設

近年、海外各国での銀行口座の開設手続きが難しくなってきています。シンガポールも香港もご多分に漏れず難易度が上がっていますが、とくに香港は法人出資の現地法人の口座開設はほぼ絶望的で、個人出資の現地法人しか口座開設はできません。もちろん、日本のメガバンクや大手地銀などから融資を受けて取引をしている場合は、それらの日系銀行の香港出先機関で口座開設をしてくれますので、法人であっても口座開設が可能となっております。

 

一方、シンガポールはまだ香港よりは規制が緩く、法人でも個人でも開設できますし、香港ほど厳しく審査をされるというわけでもありません。ただし、刻一刻と厳しくなってきているのはシンガポールも同じですので、銀行口座を日系銀行で開設できない企業様は、進出を急がれることをお勧めします。また、本原稿執筆時点では、香港は日本に居ながらでの口座開設は日系銀行の一部を除き難しく、シンガポールはかろうじて遠隔で口座開設が可能となっております。

 

 

シンガポールと香港の比較は以上となります。これら以外にも比較のポイントはあります。事業内容により異なるため今回は説明を省きましたが、ご相談いただければいろいろとご案内させていただきます。シンガポールと香港のいずれかに進出を検討される際は、ぜひガルベラ・パートナーズの専門家にご相談いただければと思います。

 

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私どもガルベラ・パートナーズグループは、日本国内では税理士法人・社会保険労務士法人・司法書士法人・行政書士法人が一堂に集まり、海外では香港のほか、中国、台湾、シンガポール、ベトナム、タイ、アメリカに9つの現地法人を置き、日本企業の海外進出を、調査やマッチングから、設立・税務・労務・法務のあらゆる面でサポートし、クライアント企業の海外での成功を後押ししています。

 

海外に進出を検討される際は、ぜひ当社へお声がけください。国内外に拠点を持つ当社だからこそ、合法的なタックスメリットが享受できるサポート体制をお約束します。

 

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各国の比較やタックスヘイブン対策税制について、セミナー動画もご用意しております。

 

また、シンガポールや香港での法人設立や会計、税務、労務についての情報収集には、ぜひ弊社サイトをご活用ください。本稿をご覧いただきましてありがとうございました。

       

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