2015/11/03
Q 最近、年金事務所の調査が多くなったという話を聞きました。実際のところ、知り合いの経営者の会社にも、年金事務所から通知が来ているようです。中小企業にとっては、社会保険料の負担は重く頭の痛い問題ですが、実際の状況はどのようなものなのでしょうか?
A すでに昨年から、新聞等によって報道もされておりますが、社会保険の未加入対策は確実に強化されています。
実際に弊社顧問先からも、「年金事務所から通知が来た」というご相談が増えています。
平成27年1月14日に厚生労働省からプレスリリースされた、「平成27年度予算案における国民年金保険料収納対策等について」の中で次のように記載されています。
~国税庁からの情報提供により稼働実態が確認された適用調査対象事業所については、日本年金機構職員による対応を基本として、3年間で集中的に加入指導等に取り組む。~(日本年金機構)
具体的には、国税庁が源泉徴収義務者として把握している事業所データを使用して照合する模様です。「源泉徴収義務者=給与支給のある者を雇用している事業所」である可能性が高いですので、日本年金機構の適用事業所リストと不一致の場合は、未加入の疑いが強いということになります。
稼働実態のないペーパーカンパニーも相当数あるようですが、それでも疑わしい事業所は40万社あるといわれ、また日本年金機構が独自に把握している35万の事業所も合わせて、今後、重点的に調査・指導が行われることになります。
厚生年金適用事業所数が180万件(平成25年度末時点)といわれますが、なお80万件ほどが未加入の疑いがあるとのことです。社会保障費の増大にあえぐ日本政府にとっては、最も手を付けたいところというのが本音でしょう。
2016年1月から施行されるマイナンバー制度により、こうした未加入情報が簡単にリンクすることになるので、今まで以上に調査・指導が厳しくなることが予想されますので、曖昧な労務管理を行っている場合は、すぐに対策を始めなければなりません。運輸業、サービス業、小売業など、パートタイムや契約社員の比率が高い業界では、未加入事業所や未加入者が多いのが現状です。
弊社の支援事例から、調査で指摘されやすい点は下記の通りです
◆ 試用期間の社保未加入
3ヶ月程度の試用期間を設ける会社が多いのですが、この期間は未加入でもよいと勘違いされている場合があります。しかし、試用期間後も継続する前提になっている以上、入社初日からの加入が求められます。
社会保険に加入しなくてもよいのは下記の例に限られます。
(1)日雇労働者(最長1ヶ月以内)
(2)臨時従業員(最長2ヶ月以内)
(3)季節性のある従業員(最長4ヶ月以内)
(4)博覧会・イベント等の期間限定スタッフ(最長6ヶ月)
よく用いられるのは(2)の臨時社員で、年末または決算期の繁忙期のみスポットで応援してもらう場合です。こうした従業員は、契約期間を明確にした上で社保は加入する必要はありません。
ただし、期間満了後も継続を希望する場合は、新たに雇用契約をまき直しして、社会保険には加入していただくことになります。
◆労働時間がいつの間にか長くなっている場合
パートタイム社員の場合は、扶養の範囲内で働きたいというご希望も多く、所定労働時間で週30時間を超えない雇用契約にすることが一般的です。(正社員の3/4以内)
ただ、中小企業の場合は、そもそも雇用契約書(労働条件通知書)が存在しない、更新していないなど管理がルーズになり、社会保険調査で指摘される場合があります。
また、人手不足により、当初の雇用契約より労働時間の実態が変化して、ほとんど正社員なみの労働時間になっている場合もあります。こうした従業員が発覚しますと、年金事務所から遡及的に社保加入が指示されるケースもあり、費用的にたいへんなリスクになります。
行政サイドは1ヶ月を4週と考えますので、タイムカード上で120時間(30時間×4ヶ月)を月間で超過している従業員は、指導のターゲットにされる可能性が高いと思われます。
グレーな部分は曖昧にしてやり過ごそうとするお気持ちは理解できるのですが、行政調査においては、曖昧な部分は基本的に会社に不利に働きます。
社会保険に加入させたくない従業員については、調査が来てもきちんと主張できるように、特に明確な雇用管理が必要です。
◆役員の報酬月額
役員も社会保険に加入することになるのですが、社会保険料を抑制したいということで、関連会社からの役員報酬を届出していないケースが見受けられます。
複数の事業所から報酬を得ている場合は、原則として「二以上事業所勤務届」を提出してすべて報酬を届け出ることが求められます。この点に関しては国税庁のデータが威力を発揮する分野ですので、今後マイナンバーで調査強化が予想されます。
詳細は以下の記事をご覧ください。
二以上事業所から報酬を受ける場合の社会保険(2015/3/17掲載)
役員の社会保険・労働保険について理解しよう(2015/3/31掲載)
社会保険料の抑制については、特効薬のような劇的な対策はありません。賃金制度、福利厚生、雇用管理を複合的に組み合わせて、適法に進めていくことが必要です。
テクニックとしての社会保険料の節約はこちらの記事(2014/11/18掲載:どうやったら社会保険料を減らすことができますか?(その3))をご覧ください。
また、現時点で未加入事業所については、行政調査対策は、雇用契約書や就業規則など法定帳簿を揃えるところから始めることになります。
ガルベラ・パートナーズでは、社会保険対策の観点から、労務管理、賃金制度のコンサルティングを行っております。またマイナンバー対応についても、規程類のひな形を豊富にご提供させていただいております。
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