2014/08/16
Q 当社では現在、上海に現地法人を設立する計画があります。日本本社と上海現地法人との間に、香港に中間法人を置くとメリットがあると聞いたのですが、どのようなメリットがあるのでしょうか?また、デメリットについても教えてください。
A 香港法人を中間法人として設立するメリットとしては、香港の法制上からいうと、資本金規制がないに等しく、会社を設立しても資本金の送金は紐付いていないため、資金繰りに合わせた投資が可能となります。また、一部の事業を除いて許認可も不要なため、あらゆるビジネスを事業目的とすることができます。
税務メリットとして、まず第一に、日本本社が直接上海現地法人を子会社とした場合と、香港法人を間に置いて上海現地法人を孫会社とした場合とでは、上海現地法人から株主への配当について、源泉徴収税額がそれぞれ10%と5%になり、かつ、香港法人から日本本社への配当は無税でできるので、最終的に5%節税することができます。
更に、香港法人で利益を留保することで、企業所得税の税率が16.5%であることから、日本本社で売り上げるよりは社内にキャッシュを残すことができます。そしてそのキャッシュを、香港法人から投資していけば、より有効な投資が可能となります。
税務上のメリットは個人にも及びます。日本本社の役員になって日本で報酬を得て個人所得税を課されるよりも、所得税率が日本の半分にもならない香港で香港子会社の役員になって報酬を得るほうが、個人の手元に残るお金も多くなります。個人として香港で貯めた現預金は、もちろん課税されずに日本でいくらでも使うことができます。なお、どの国の役員になっているかや、居住者・非居住者の区分によって、このメリットが享受できたり、できなくなったりしますので、その点については注意が必要です。
また、上海法人を清算したい場合においてもメリットがあります。たとえば日本本社が直接上海現地法人を子会社として保有している場合において、その上海現地法人が赤字続きのために清算することになったとします。日本本社が投資した金額については、上海現地法人を清算または売却することにより損金処理が可能となりますが、清算手続に1年以上の期間と、多額のコストが求められたり、売却についても相手探しや面倒な手続きが必要となります。
そこで、香港法人を間に入れて、上海現地法人の親会社である香港法人の所有者を個人にしたりすることで、コストや手続きを省略しつつ、日本本社における税務メリットを享受することが可能となります。
このほかに、金融面においても相当のメリットがあります。香港では外貨管理規制がなく、マルチカレンシー口座(様々な外貨に対応しうる口座)を開設することで、人民元を含む主要国通貨をいつでもどんな国へも送金することが可能です。また、為替手数料やL/Cの開設コストも、日本とは比べものにならないくらい少なくて済みます。
このほか、たとえば中国から日本に製品を輸送し、決済においては香港の貿易会社を間にはさむという三角貿易において利益を残していくこともできます。(ただし、日本のタックスヘイブン税制の規制にひっかからないような対策が必要です。)
デメリットとしては、先に述べたタックスヘイブン税制にひっかからないようにするとなると、香港でのオフィスや人員が必要となり、アジアのなかでも1、2を争う不動産コスト増に巻き込まれてしまいます。
あるいは、大掛かりな国際間取引を行うのであれば、移転価格税制にひっかからないようにしなければなりません。独立企業間価格での取引を証明するため、書面作りに相当のコストや労力がかかってしまうというのも、デメリットといえるでしょう。
以上のように、香港法人を設立するメリット、デメリットを十分に検討しながら、最終的に貴社の日本本社と上海現地法人との間に、香港法人を置くべきかどうかを検討していただければと思います。
ガルベラ・パートナーズグループでは、当グループの税理士法人が貴社日本本社側の、そして中国や香港の当グループの現地事務所が、貴社の現地法人側のニーズを拾い、ワンストップでサポートを行っております。ぜひ当社のサービスをお役立てください。
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