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国際税務|租税条約ゼミナール(3) ~日本が各国と結ぶ租税条約の特徴とは?~

2017/06/19

Q 日本が各国と締結している租税条約は、他国間の租税条約と比べて、何か特徴はありますか?

日本が各国と締結している租税条約は、他国間の租税条約と比べて、何か特徴はありますか?
 
A 開発途上国との間で締結される租税条約では、源泉地国側での課税権を大きく認めていることに特徴があります。

 たとえば特許権等の使用料ではその特許権の使用料の源泉地国に課税権を認めています。一方、先進国との間で結ばれる租税条約はOECDモデル条約に従って、特許権等の権利の受益者の居住地国にのみ課税権を認める取り決めをしていることが多くなっています。(源泉地国での課税権は認めていません)
 

解説

 

1.OECDモデル条約と国連モデル条約

 
 租税条約は各国の課税庁同士が協議をし合って作成・締結をするのですが、作成に当たってのひな形があります。一つがOECDモデル条約、もう一つが国連モデル条約です。詳細については割愛しますが、特にOECDモデル条約とは現在世界の租税条約において最も影響を与えているものであり、これまでの各国間の租税条約の締結促進に大きな役割を果たしてきました。
 
 しかし、これには問題がありました。
 これまで先進国が開発途上国へ人や技術を送り込み、途上国で稼得した利益を本国へ還流させるこれを繰り返すことが国際経済活動の主流でした。そこで国際経済において大きな発言力をもっていた先進諸国は、所得の源泉発生国(主に開発途上国)の課税権を制限し、一方で所得受益者の居住地国(主に先進国)の課税権を大きく認める方向へ制度を仕向ける意向を持って当初はOECDモデル条約がつくられたといわれています。
 
 そこでOECDモデル条約(1963年)から16年遅れて登場したのが国連モデル条約(1979年)です。これは開発途上国側の利害を重視したものとなっており、所得源泉地国の課税権を大きく認めていることが特徴となっています。なお、これらは法的強制力を持っているものではありませんが、各国間の租税条約を見てみると準拠したものが非常に多くなっています。
 
 日本と各国との間で締結される租税条約についていえば、先進国との間で結ばれるものはOECDモデル条約を、開発途上国との間で結ばれるものは国連モデル条約を準拠したものが多くなっています。

 
 なぜこのように相手国の経済力によってOECDモデル条約と国連モデル条約を使い分けているのかですが、もちろん相手国の要請があることも要因の一つです。しかしそれ以上に大きな要因としては、日本は今でこそ経済大国に成長しましたが、開発途上国に位置づけられる時代もありました。
 
 この当時にOECDモデル条約の原則である所得受益者の居住地課税は受け入れ難かったのです。そういった経緯があるからこそ開発途上国と締結する租税条約に関しては源泉地国課税を認めるという方針があるようにも思われます。
 

2.特許権等の使用料について

特許権等の使用料は国内の税法に従えばその権利等の使用を行った国において課税が行われることになります。しかし特許権等の使用に関して源泉地国課税を認める租税条約を締結している場合、使用料等を支払った者(債務者)の居住地国が源泉地国となり当該国にて課税が行われることとなります。
 
 ここでは、日本の法人が中国および英国の法人に対して香港で使用した特許権等の使用料を支払う場合についてみていきます。なお、日本と中国の間では日中租税条約が結ばれており、源泉地国課税が認められていますが、日本と英国との間で締結されている日英租税条約ではOECDモデル条約にならい、使用料の受益者の居住国課税のみ認めるものとなっています。
 

①日本法人が中国法人に対して香港で使用した特許権等の使用料を支払う場合

国内税法に拠れば使用した国・地域である香港に課税権があります。しかし日中租税条約には債務者(使用料等の支払者)の居住地国あるいは使用料等の受益者の居住する国にて課税するとありますので、国内法より租税条約が優先され、日本及び英国に課税権が有ることとなります。
 

②日本法人が英国法人に対して香港で使用した特許権等の使用料を支払う場合

国内税法に拠れば使用した国・地域である香港に課税権があります。しかし日英租税条約には使用料の受益者の居住する国についてのみ課税権を有するとありますので、英国側に課税権があると解されます。
 
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