2015/09/08
Q 最近、長時間労働対策として、企業に対する労働局の取締が強化されているという報道を目にします。どのような対策を行うべきでしょうか?
A 2015年4月1日、過重労働による健康被害の防止などを強化するため、違法な長時間労働を行う事業所に対して監督指導を行う過重労働撲滅特別対策班、通称「かとく」が新設され、厚生労働省でその発足式が行われました。
脱税摘発の国税局査察部が「マルサ」と言われているのは有名ですが、労働局でも悪質事案に対応するための特別班が組織されたことになります。
違法残業をさせるブラック企業のなかには、労働時間のデータを改ざんするなど悪質なケースも多いことから、それに対応するための高度な捜査技術が必要となってくるため、専門機器を用いてデータの解析も可能な専門の労働基準監督官が配属されています。
この「かとく」が有名になったのは、2015年7月2日の「ABCマート違法残業摘発事件」です。36協定で定められた上限を超えた残業をさせていたとして、労務担当取締役、店舗責任者らが書類送検されました。過去にも同社の店舗で長時間残業が横行しており是正勧告を受けていましたが、改善が見られないため、今回このような措置がとられたようです。
業界でも好業績とされていたABCマートですが、この事件で大きくイメージダウンすることになりました。
一般に残業問題というと、未払残業や名ばかり管理職など金銭的な問題として取り上げられることが多かったのですが、ABCマート事件では残業代自体は支払われていました。今回指摘されたのは、あくまで長時間残業そのものであったことが衝撃的であったといえます。
小売・外食・サービス業界などは、近年は人手不足により、長時間労働になりやすいと指摘されていますが、これらの業界に対して、行政の取締はますます強化されていくことが予想されます。
まずは対策として、自社の36協定を確認していただき、未締結や期限切れなどがないかご確認ください。
また、本社のみで締結され、店舗では未締結という事例もあります。店長任せにするのではなく、本社が自らの問題という危機感を持って、対策をしていただきたいと思います。
なお36協定は、残業時間の限度があります。行政通達により「36協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」が出されており、1ヶ月45時間、1年間360時間となっております。なお1日では3時間が一般的な限度になります。
36協定を提出するときに、労働基準監督署の手前、体裁だけ限度時間に合わせて提出する会社もあるようですが、実際に1ヶ月45時間を超えた残業が発覚した場合はABCマートと同様になり、悪質な場合は書類送検される場合もありますし、さらに未払残業が発見され、遡っての精算を求められる場合もあります。
やむを得ず限度時間を超える残業が発生する場合は、特別条項を締結することで、この限度を超えることができます。
ただし、これは決算や繁忙期などの臨時的な「特別の事情」が生じる場合に限られます。日常的に月45時間を超える残業が発生しているという状況の場合は、特別条項でも対応できませんので、まずは業務改善が急務となります。
弊社では、企業側の実務上の問題点に配慮しつつ、様々な労働時間管理制度のご提案を承っております。就業規則や諸規程の改正も含め総合的な対策も承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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