2020/10/12
従来から、労働者の安全と健康の確保は、企業にとって第一に優先しなければならない責務として認識されてきました。産業構造の変化もあり、一部の企業では、こうした意識が希薄となっていることもあります。今回は、雇入れ時及び作業内容変更時の安全衛生教育について解説します。
会社は労働者との雇用契約において、労働者に対して安全配慮義務を負っています(労働契約法5条)。また、労働者を新たに雇い入れる時及び作業内容を変更する時に、安全衛生に関する教育を行う義務を負っています(労働安全衛生法59条)。
なお、危険又は有害な業務に就かせるときは特別な教育を受けさせなければなりません(労働安全衛生法59条)。
雇入れ時及び作業内容変更時の安全衛生教育の対象となる労働者は、有期、短時間を含むすべての労働者とされていますので、漏れなく対応が必要です。
教育の内容は法令に定められており、具体的には以下のとおりとなります(労働安全規則35条各号)。
※全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項について省略できます
※労働安全衛生施行令2条3号に掲げる業種(総括安全衛生管理者の選任要件が1,000人以上の業種)については1から4号までの教育を省略できます
具体的には、マニュアルの説明および実演による教育、有事の対応方法、長時間や過度なストレスの退避策を講じること、救急箱・救命具、休養場所、避難経路の案内等、必要かつ十分な範囲で、事業場ごとに定めた内容で実施する必要があります。繰り返しになりますが、全従業員を対象に行ってください。
安全衛生教育の実施不備は、労働安全衛生法違反として罰金刑に処せられるだけでなく、安全配慮義務違反、不法行為責任として民事上の賠償責任を負う可能性も否定できません。
過去の裁判例では、安全衛生教育を適切に行っていたことにより、安全配慮義務違反による損害賠償が免れた事案も存在します。逆に、安全衛生教育が十分でなかったために、数千万円の損害賠償責任を負った事案も存在します。
対応不備による問題の発生は、決して蓋然性が高いとはいえませんが、有事の際は人命にも拘わる、必要かつ重要な責務ですので、日ごろから適切な運用を心がけましょう。
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