2020/10/30
A、「役職定年により一定の年齢で役職を解任、降格する運用」と「それに伴う給与減額の問題」は分けて考えると分かりやすくなります。
65歳定年延長への社会的要請が強まっています。基本的には降格や給与減額が想定されていない日本の人事制度運用(降格や減給は例外的な低評価に限る)において、単純な定年延長は組織の高齢化と人件費の増大を容易に招いてしまいます。
大手企業では、組織の機能維持の観点からすでに様々に人事制度の改革が行われていますが、長らく人材不足であった中小企業においては、経験ある高齢者を重用する必要性から、60歳超の高位役職者が現役で働いていることも珍しくありません。
ただ今後、大手、中小の別なくコロナ禍に起因する景気減速で厳しい経営の舵取りを求められるにあたって、人件費管理と組織機能維持は現実的な経営課題になっています。定年延長による総額人件費増大やポスト枯渇に対応するために、組織の若返りのために、役職定年は中小零細を問わずにより多くの企業で採用されてくると想定されます。
役職定年自体は法令上に定められた制度ではなく、あくまで企業の人事権に基づく人事制度や賃金制度の一環として運用されますので、制度設計の巧拙や労使合意状況に左右されます。他社で上手くいっている事例をマネしたところで、自社の給与水準にマッチしないとか、社内的な合意が得られないということであれば絵に描いた餅ということになります。
日本では、一般に降格や減給という運用に対して強い忌避感がありますので、役職定年という運用自体に心理的抵抗感があります。以下では、役職定年における最高裁判例のリーディングケースとして「みちのく銀行事件 最高裁一小 平12. 9. 7判決」を引用しながら現実的な注意点を検討してみたいと思います。
みちのく銀行事件は、「60歳定年制を採用していた銀行における55歳以上の行員を対象に専任職制度を導入する就業規則の変更の有効性」が問われた事例です。
まず55歳での役職定年制度そのものについては、「本件就業規則等変更は、職階及び役職制度の変更に限ってみれば、その合理性を認めるのが相当である」として企業の人事権を広く認める内容となっています。
一般に55歳から50歳代後半にかけて、上級管理職ポジションを勇退し、専任職に回って後進育成を支援するという運用は珍しいものではありません。
次に給与減額に関する判断は、下記の理由により就業規則変更としての効力は及ばないと判示され銀行側敗訴となりました。
判決理由で触れられた事由は次のようなものでした。
以上のことから、今後取り組む場合に注意すべき方向性が見えてくるように思われます。
定年に絡む人事制度や賃金制度は、直近の経営環境を理由に安易に上げ下げできるものではありません。中長期での準備と社内での合意形成が必要になります。
また、そもそもの問題として役職定年する役職者の後任が育っていないという状況であれば、不利益改定以前の問題として、当該ポストが属人化にまみれていて「余人をもって代え難い」状況にはまり込む可能性があり、当該役職者の個人的資質に事業の重要要素が握られてしまうことになってしまいます。
人に仕事がつく経営ではなく、仕事に人がつく経営を目指したいところです。
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