GERBERA PARTNERSブログ

国際労務|外国から派遣された人も日本の社会保険に入る?

2022/10/28

Q、私は、中国企業に勤務する中国人従業員です。今後、会社から派遣されて、日本法人の役員に就任することとなっています。派遣期間は2年の予定ですが、日本の社会保険に入らなければならないのでしょうか?

A、健康保険については、中国から一時的に日本に派遣される方についても加入が必要です。厚生年金保険については、日・中社会保障協定により、適用証明書を年金事務所に提出することで加入免除を受けることができます。

 

解説(公開日:  最終更新日:

 

日本で加入する社会保険制度には、健康保険(私傷病を事由とする短期給付を行う)、厚生年金保険(老齢・障害・死亡を事由とする長期給付を行う)、雇用保険(雇用維持、失業等に関する給付を行う)があります。労働者の業務上災害による傷病を事由とする保険給付を行う労災保険もありますが、これは、会社が入るものであり、従業員ごと個別に加入するものではありません。

 

社会保険について

外国の企業から一時的に日本に派遣され就労する人については、社会保障の二重加入を防ぐために社会保障協定という制度があります。日・中社会保障協定は、2019年9月1日に発効しています。

1.健康保険について

日・中社会保障協定の対象は、年金制度のみであり、医療保険制度(日本では健康保険)は対象外です。このため、一時的に日本に派遣される方であっても、健康保険には必ず加入することとなります。

 

2.厚生年金保険について

(1) 日・中社会保障協定による制度の概要
  1. ・就労している国の制度のみに加入することが原則となります。
  2. ・ただし、雇用主により相手国に派遣された被用者については、例外的に派遣開始日から5年間は派遣元国の制度にのみ加入することとなります。
 

ここから、派遣予定が2年である場合、中国の制度にのみ加入することとなり、日本の厚生年金保険への加入は免除を受けることができます。

 
(2) 日・中社会保障協定の手続き(適用証明書)
  1. ・中国から日本に派遣され就労する人が、日本の年金制度の加入免除を受けるためには、日本に派遣される前に、中国の年金制度(被用者基本老齢保険)に加入していることを証明する「適用証明書(参保证明)」の交付を受ける必要があります。「適用証明書」の交付を受けるための申請手続等に関しては、中国の社会保険管理センターにご確認ください。
  2. ・日本への派遣された後、中国で交付された適用証明書を添付して、日本年金機構に資格取得届を出してください。
 
(3) 日本の年金制度に加入した場合(脱退一時金について)

何らかの事情で、「適用証明書」の交付を受けず、日本の厚生年金制度に加入した場合、加入期間中に、障害や死亡という保険給付事由が発生した場合には、法律に基づき保険給付を受けることができます。老齢については、資格期間(保険料納付済等期間)が10年以上ある65歳以上の方が受給対象となりますので、日本の厚生年金制度に2年間のみ加入して帰国した場合には、老齢基礎年金、老齢厚生年金を受給することはできません。

 

しかし、厚生年金保険の加入期間が6か月以上あり、日本国籍を有していないなどの一定の要件を満たしていれば、日本を離れた場合、保険料を納めた期間に応じて、脱退一時金が支給されます。厚生年金保険料を納付し、保険給付を受けた実績がなければ、帰国する際に脱退一時金の手続きを行うようにしましょう。

 

脱退一時金の制度については、以下のリンク先をご確認ください。

 

雇用保険について

今回は、日本法人の役員に就任されるとのことであり、労働者のための制度である雇用保険の被保険者とはなりません。日本法人で、役員ではなく一般従業員となる場合、原則として、被保険者となります。ただし、外国の失業保険制度の適用を受ける方は除かれます。

 

外国人を雇用した場合には、外国人雇用状況の届出を行う必要があり、この届出は、雇用保険の被保険者とならない方についても必要です。雇用保険の被保険者とならない場合、特に手続きがもれてしまいやすいので気を付けましょう。

【ご参考】外国人雇用状況届出Q&A

(日本年金機構)

 

その他の国の状況は?

今回は、中国を例にあげて記載いたしました。

日・中社会保障協定は、年金制度の二重加入の防止のみですが、国によって、年金加入期間の通算の制度がある場合もあります。また、医療保険制度についても二重加入防止の対象となる国もあります。

 

弊社では、日常的なちょっとしたご相談へのお答えから、労務問題やコンプライアンス対策まで、幅広く承っています。

お困りのことがありましたらお気軽に当グループ社会保険労務士までご相談ください。

   
 

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