2025/09/17
A、地域ごとの医療費負担や財政健全性を考慮して、あえて都道府県ごとの保険料率を採用しています。
健康保険は国の制度であるにもかかわらず、協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の保険料率は都道府県ごとに異なります。この仕組みには歴史的な経緯と制度設計上の理由があり、さらに地域間の医療費の実情が深く関係しています。その背景と現状を整理してみましょう。
協会けんぽの前身は、社会保険庁が運営していた政府管掌健康保険(政管健保)です。
長らく全国一律の保険料率で運営されてきましたが、医療費の地域差が大きく、財政の持続性が課題となっていました。
さらに2000年代後半、「年金記録問題(消えた年金問題)」をきっかけに社会保険庁が解体され、その業務が日本年金機構や全国健康保険協会(協会けんぽ)へと移管されました。
現在、日本最大の公的運用保険を運営する協会けんぽの誕生は2008年10月1日です。
料率が異なる一番大きな要因は医療費水準の地域差です。
高齢化が進み医療費が膨らむ地域では財政負担が増し、その結果として保険料率も高く設定されます。逆に医療費が比較的少ない地域では料率が低く抑えられます。
また、加入者の賃金水準も影響します。賃金が低い地域では同じ支出をまかなうのに高い料率が必要となるため、結果的に地域差が生まれます。
令和7年度(2025年3月分~)の協会けんぽ保険料率を見ると、次のとおりです。
佐賀県 | 10.78%(最高料率) |
東京都 | 9.91% |
沖縄県 | 9.44%(最低料率) |
全国平均はおおよそ10%前後であり、最大でも1.34ポイントの差にとどまっています。
しかしながら、標準報酬月額30万円の加入者の場合、佐賀県と沖縄県を比較すると、年間保険料の本人負担分は24,120円の差額が生じることとなります。
※ 試算条件:標準報酬月額30万円・賃金変動なし・料率が同一のままの期間
「国の制度なのになぜ地域ごとに違うのか?」という疑問が湧いてくる方もいらっしゃると思います。協会けんぽの料率は、基本的に地域の医療費水準や人口構造に応じて設定されています。特に佐賀県は、市町村国保における1人当たり年齢調整後医療費が全国でも高い水準にあることが、料率の高さに直接影響しています。
しかし、極端な地域差が生じると加入者負担が不公平になるため、国は調整交付金を投入して、一定範囲内で差を抑えているのが現状です。
このため、制度上は「地域差を反映して公平な負担」としながらも、実務上は「地域差を緩和して格差を抑制」する二重構造になっています。この構造は一見すると矛盾しているように見えますが、地域間の医療費格差を無視して全国一律にした場合、高医療費地域においては健保財政が破綻するリスクを抱えることになりかねません。
上記に示した通り、料率が異なることで同じ標準報酬でも本人負担額が年間2万円以上の差額が生じており、加入者の実感としては無視できない部分ではあります。しかしながら、医療費水準や人口構造の地域差を完全に埋めることは難しく、現行制度では一定の地域差は許容せざるを得ません。
地域実情の反映と公平性のバランスを考慮しつつ様々な方策を講じることで、「全国一律」に近づけてゆくことが、この制度の理想とするところではないでしょうか。
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