Q、企業にとって、有効な管理職育成の方法とは何でしょうか。
A、経験や感覚のみに頼らない、客観的なデータに基づいた育成方法を採ることが企業を成長させるうえで最重要の一つと言われています。
解説(公開日:2026/08/25)
従来の風潮では、
管理職に対する考え方について、
- ・管理職になることができるのだから自分で学ぶべき
- ・経験を積めばマネジメント力は自然と身につく
といった考え方に支えられてきた面があります。
しかし、現在の管理職を取り巻く環境に応じた対応をとれば、経験だけに頼った育成には限界があるでしょう。
現在の管理職に求められている役割は、以前よりもはるかに複雑で従来と異なっていることを踏まえた対策を講じている企業はどれほどあるでしょうか。
業績目標を達成するだけでなく、経営方針を部下に伝え、適切な目標を設定し、業務の進捗を管理することが必要でしょう。それだけではありません。部下一人ひとりの能力や特性を理解して育成し、適切な評価やフィードバックを行い、モチベーションを高め、チーム内のコミュニケーションを活性化することも求められことを認識すべきです。
さらに近年では、心理的安全性への配慮、ハラスメント防止、長時間労働への対応、多様な価値観や働き方への理解なども重要なマネジメントテーマとなっています。
管理職は、「成果を出す責任」と「人を育てる責任」の両方を担っているのです。
その一方で、管理職自身が自分のマネジメントを客観的に振り返る機会は、必ずしも十分に設けられているとはいえません。
例えば、ある管理職が「部下には十分に説明している」と考えていたとしても、部下からすると「上司から方針や期待される役割が十分に説明されていない」と感じているかもしれません。
反対に、本人は「部下の育成が十分にできていない」と感じていても、部下からは「相談すると丁寧にアドバイスしてくれる」「成長する機会を与えてくれる」と高く評価されている場合もあります。
このような「自己認識」と「周囲からの評価」の違いは、本人の間隔や特定の上司、役員からの印象だけではなかなか気付くことができません。
ここに、これからの管理職育成に客観的なデータが必要とされる理由があります。
管理職育成というと、管理職研修を思い浮かべる企業も多いでしょう。もちろん研修は重要です。しかし、全ての管理職に同じ研修を実施するだけでは、一人ひとりが抱えている課題に十分対応できない可能性があります。
例えば、目標設定や業務遂行には優れているものの、部下育成やフィードバックを苦手としている管理職がいるかもしれません。
一方で、部下とのコミュニケーションやチームづくりは得意でも、問題解決や業務改善、他部門との連携に課題を抱えている管理職もいるでしょう。
両者に全く同じ育成施策を実施しても、必ずしも高い効果が得られるとは限りません。
そこで重要になるのが、
現在地の把握です。
例えば、「方針浸透・目標設定」「目標達成・業務遂行」「問題解決・業務改善」「部下育成・指導」「評価・フィードバック」「動機づけ・エンゲージメント」「コミュニケーション・情報共有」「チームビルディング・心理的安全性」「部門間連携・対外対応」「コンプライアンス・労務リスク管理」といった観点は重要ですが、細かく確認することはできているでしょうか。また、その確認結果に基づく、分析や具体的なアクションプランを会社全体の意思決定として組み立て、そのプランに基づいたチェックなど、その管理職の強みと課題を具体的に把握することが必要でしょう。
さらに、自己評価だけではなく、上司や部下などからの評価を組み合わせる捉えられ方を含めることができれば、より多面的な分析が可能になります。
重要なのは、確認した結果を単なる「スコア」、「状況把握」のみに終わらせないことです。
例えば、自己評価では「部下育成・指導」が高いにもかかわらず、部下からの評価が低かったとします。
この場合、「部下育成ができていない管理職」と単純に判断するのではなく、「なぜ本人と部下の認識に差が生まれているのか」を考えることが重要です。
本人は日常的に指示やアドバイスをしているため、「十分に指導している」と考えているかもしれません。しかし、部下側は「具体的なフィードバックが少ない」「自分の成長について話す機会がない」と感じている可能性があります。
このようなギャップが確認できれば、「もっと頑張って部下を育成してください」という抽象的な指導ではなく、「1on1ミーティングで成長課題について話す機会を設ける」「業務終了後に具体的なフィードバックを行う」といった行動レベルの改善に繋げることができます。
つまり、現在の環境下にある管理職育成では、
「評価」→「課題発見」→「改善行動」→「実践」→「再測定」
というサイクルがないと現実に立脚した理想の実現は難しいということを認識しなければならないといえます。
そのような状況のなかで、一つ有効といえるものに、マネジメントサーベイという方法があります。定期的に実施すれば、前回の結果と比較することで、管理職の行動や周囲からの評価がどのように変化したのかを確認することができます。
前回課題だった内容が改善していれば、本人が取り組んできた行動が一定の成果に繋がっている可能性があります。
反対に、改善行動を実施したにもかかわらず評価が変化していなければ、取り組み方そのものを見直す必要があるかもしれません。
このように、客観的なデータを継続的に取得することで、管理職育成を「研修を実施して終わり」にするのではなく、PDCAサイクルを回す継続的な人材育成施策へと変えることができます。
また、マネジメントサーベイは管理職本人だけにメリットがあるものではありません。
経営者や人事担当者にとっても、組織全体のマネジメント上の課題を把握する重要な情報になります。
例えば、多くの管理職で「部下育成」の評価が低ければ、個々の管理職だけの問題ではなく、会社全体として育成方法や1on1ミーティングの仕組みを整える必要があるかもしれません。
「方針浸透・目標設定」の評価が全体的に低ければ、経営方針そのものが管理職まで十分に共有されていない可能性も考えられます。
つまり、個人単位の結果を見るだけではなく、管理職全体の傾向を分析することで、
組織としてどのマネジメント領域を強化すべきなのかまで明らかにすることができます。
ここで留意すべきことは、管理職本人の経験や努力を否定することではありません。
むしろ、経験から学ぶことをより効果的にするために、客観的なデータを活用するという考え方が必要だということを認識すべきでしょう。
本人の経験や感覚に、自己評価、部下評価、上司評価などのデータを組み合わせることで、「自分では気付いていなかった強み」や「周囲との認識ギャップ」を発見できます。
そして、その結果から一人ひとりに必要なアクションプランを設定し、一定期間後に再び測定する。
経験や感覚だけに頼る管理職育成から、「可視化して、気付き、行動し、変化を確認する」管理職育成を行うことが企業の成長には欠かせない時代です。
マネジメントサーベイは、管理職を査定するためだけのものではなく、
管理職自身の成長を促し、さらに組織全体のマネジメント力を高めていくための仕組みとして活用することが重要です。
管理職の役割が複雑化している今だからこそ、「良い管理職になってほしい」と本人の努力だけに期待するのではなく、
企業側が管理職の現在地を把握し、成長を継続的に支援できる環境をつくることが必要です。
それこそが、これからの企業に求められる管理職育成ではないでしょうか。
もし、
- ・離職が気になる
- ・組織の元気が落ちている
- ・管理職によって差がある
- ・社員の本音が分からない
こうした兆しを感じているなら、まずは現状を知ることから始めるのも一つの選択です。
組織は、放置すれば悪くなり、向き合うことで良くなるように働きかけることができます。
最初は小さな一歩が今後の成長にとって重要だということは言うまでもありません。その一歩が、数年後の大きな差になります。
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