2016/07/19
Q 勤め先が英国に子会社を設立し、私は日本からの出向で現地に勤務することになりました。出向期間は期限がありますが、その間の年金制度がどういう扱いになるか教えてください。
A 海外勤務をするときに、勤務する国によって取扱いが大きく異なることがありますが、年金を含む社会保障制度もその一つです。
□原則は現地で加入
例えば日本では、国内の会社に常時雇用されていれば、国籍や滞在期間に関係なく、強制で厚生年金が適用となります。
出向元の本国からの給与が出ている外国籍の従業員の場合、本国で年金制度に加入したままだったとしても、厚生年金の加入を免除されませんから保険料は二重払いになります。
逆も同じで、公的年金などの社会保障制度は、現在勤務し、居住している国で加入することが原則です。日本の本社から一部給与が出ている場合、日本でも厚生年金の資格が継続しますので、派遣先国と保険料は二重払いとなってしまいます。
海外勤務期間は、通常は数年程度と短く、赴任地で年金受給資格を満たす前に帰国となることがほとんどです。せっかく払った保険料は、減額されて一時金にしかならない、またはまったくの掛け捨てになる場合があり、海外勤務者と企業にとっても負担になっています。
□社会保障協定の結ばれている国
このような、年金保険料の二重払いと保険料の掛け捨て問題を解決するために、日本と一部の国の間では、社会保障協定が結ばれています。
日本とイギリス間でも、平成13年2月に社会保障協定が結ばれて、二重払い部分の問題が解消されました。
それでは協定の内容を見ていきましょう。
□日本とイギリスの社会保障協定
日本企業に勤める人が、出向などによりイギリスにある支店や駐在員事務所に派遣される場合は、協定によっていずれか一方の年金制度に加入すればよいことになっています。
具体的には、5年以内の派遣は、一時的なものとみなして、派遣相手国の年金制度には加入せず、自国の制度にのみ加入することができます。
例えば、一時的な派遣でイギリスに赴任した場合、その間はイギリスの年金制度に加入することは免除されて、日本の厚生年金にのみ加入することが許されます。
5年を越えて派遣される予定がある場合は、派遣先のイギリスの年金制度に加入します。この間は、日本の厚生年金は免除になりますが、希望すれば任意で継続することはできます。
※ 派遣期間が5年以内と見込まれる場合で、当初予見できなかった特別な事情がある場合は、最高3年まで延長ができます。
□加入期間の通算はできない
もう一つの問題となる、保険料の掛け捨てを解決するためには、年金加入期間の通算があります。これは、派遣先で年金に加入はしたが、その期間がその国の受給資格期間には足りない場合に、自国の年金加入期間を通算することで、派遣先国の年金受給資格を得て、年金を受け取れる仕組みです。
日本と社会保障協定を結ぶ国では、ほとんどが期間の通算ができますが、日本とイギリスの間では、まだこの通算制度は協定されていません。
すなわち今の制度では、イギリスで、年金加入期間を持っている人が年金を受け取るには、イギリスの年金受給資格の期間を満たさないとなりません。
今後の、協定の追加が期待されるところです。
企業のグローバル化が進むなか、社会保障協定を結ぶ国は年々増えてきています。イギリス以外の社会保障協定が結ばれている国々はこちらからご確認下さい。
日本年金機構ホームページ「海外で働かれている皆様へ(社会保障協定)」
なお、社会保障協定を結んだ国に赴任する際には、自動的に保険加入が免除されるわけではなく、日本年金機構での手続きが必要です。
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