2016/10/11
Q 会社の懇親行事として運動会を開催しようと考えています。会社が開催する運動会で事故があった場合、労災となるのでしょうか?
A さまざまな事情、実態を考慮して個別に判断されるため、一概に断言することはできませんが、一般的には、任意参加なのであれば、会社の運動会で事故があったとしても、労災にはあたらないと考えられます。
労災の補償を受けることができる業務災害と認められるか否かは、「業務遂行性」があったかどうか、「業務遂行性」があれば、さらに「業務起因性」があったかどうかで判断されます。
「業務遂行性」とは、事業主の支配・管理下で業務に従事していることをいいます。わかりやすく言えば、「会社で仕事をしていたとき」のことですが、出張や営業により会社の外で業務をしていたときも当てはまります。また、休憩時間中など会社にいるけれど会社に管理されていない場合についても、会社の施設や管理の不備による事故の場合は、業務遂行性が認められることもあります。
「業務起因性」とは、言葉通り業務に起因していることをいいます。
このため、会社で仕事をしていたときだとしても、個人的な恨みなどによって第三者から暴行を受けたり、天災事変によって被災したりした場合には、業務に起因しないため、業務上災害とはなりません。
運動競技については特に、「運動競技に伴う災害の業務上外の認定について」という通達(平12.5.18 基発366号)が出ているので、まずはこの通達によって判断ができます。
会社の運動会は、この通達における「事業場内の運動競技会」に該当し、業務であると認められるためには、以下のいずれの要件も満たす必要があります。
(1)運動競技会は、同一事業場又は同一企業に所属する労働者全員の出場を意図して行われるものであること。
(2)運動競技会当日は、勤務を要する日とされ、出場しない場合には欠勤したものとして取り扱われること。
つまり、全員出席が原則で、会社に参加を強制されている場合にのみ、業務であると認められることになります。
運動会に限らず、社員旅行や懇親会など、会社の行事の際の事故が、業務上のものであったかどうかについては複数の判例がありますので、2つご紹介します。
昭和63年の尼崎労基署長事件では、会社が推進していた「健康づくり運動」の一環として休憩時間中に行われたドッジボールにおいて負傷したことについて、「就業時間外に行われ」、「不参加によって不利益な取り扱いを受けるようなこともなく」、「参加人数、参加呼び掛けの態様」などから、対象者に参加を強制したものとは言えず、競技への参加は業務には当たらないと判断されました。
昭和55年の福井労基署長事件では、泊りがけで行われた会社の忘年会参加中に、ひき逃げ事故にあったことについて、「本件会合においては仕事の伝達や打合せの事実はなく」、「会社が経費を全額負担していても、この種の行事は、従業員の厚生的行事であって(中略)業務行為と認めることはできない」、「参加することは労働者の自由意思に任せられており、業務命令によって強制されたものではない」、「参加者には、出張旅費・超過勤務手当等が支払われていない」ことなどから、こちらもやはり業務には当たらないと判断されました。
これらにより、一般的には、任意参加の会社行事については、業務とはいえず、労災が適用されないことが分かります。
なお、これらの例とは逆に、会社行事への参加が業務にあたるのは、総務担当者などが、行事の世話役等として自己の業務の一環として参加している場合です。
任意参加の会社行事で、いざというときを想定するなら、民間の傷害保険に入ることなども検討しましょう。
会社で運動会を開催することは、従業員同士のコミュニケーション促進や、従業員の健康増進に役立つことから、組織によい影響を与えることが期待できます。
せっかくの運動会の開催が、会社にマイナスの出来事となることのないように安全には十分注意して、ぜひ楽しく有意義なイベントにしてください。
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