2016/11/01
A、ストレスチェックは、メンタルヘルス問題を未然に防ぐために行うものです。個人のストレス対策のみにとどめず、職場改善のためのツールとしても着目してみましょう。
2015年12月1日にストレスチェックの義務化が施行され、労働者が50人以上の事業所は、2016年11月30日までにストレスチェックを行う必要があります。
ストレスチェックの進め方については、以前に、このブログでもご紹介しました。
会社側では、ストレスチェックのためのしくみづくりの負担に加え、本人の同意がなければ結果を取得することもできないなどの理由から、会社にメリットを感じないという声もお聞きすることがあります。
しかし、せっかく行うのですから、職場をよくして経営にプラスに働かせるとの意識を持って、前向きに活用していきましょう。
ストレスチェックには大きく2つの役割があります。
1の個人のストレス把握については、従業員の同意が得られなければ会社に情報が開示されませんし、ストレスが高い人にどう対応するかという事後的な対応になりやすいものです。しかし、2の集団のストレス把握については、原則、会社は従業員の同意を得ることなく情報を入手することができ、会社の労働環境の改善の対策を立てることが可能です。
では、集団のストレス把握というのはどのように行うのでしょうか。
厚生労働省が配布しているストレスチェック実施プログラムでは、「職業性ストレス簡易調査票」の結果を用いて集団分析を行う「仕事のストレス判定図」を作成することができます。
「仕事のストレス判定図」では、ストレス要因を大きく2つ分けて判定します。
この2つのストレス度合いを数値にし、掛け合わせて、職場のストレス要因や健康問題の起きやすさをはかることができます。
量が多くて裁量や自由度が少なければ、ストレス度合いが高まります。
さらに、周囲からの支援が少なければ、よりストレス度合いは高まります。
しかし、1つ目の仕事量や裁量の範囲などの仕事そのものを変えることは簡単ではありません。
量については、納期や人手不足などの問題で、業務負担が重くなってしまうこともありえます。
裁量についても、業種や仕事上の役職や分担もあり、すべての人に大きな裁量を与えることは難しいでしょう。
一方で、2つ目の「上司の支援」と「同僚の支援」、すなわち周囲のサポートについては、すべての人が当事者としてかかわっていけることです。
2015年12月に電通の女性社員が過重労働の上に自殺したことがニュースになっています。このニュースで取り上げられるのは、労働時間の問題だけではありません。
報道を見る限りは、上司とのコミュニケーションがうまくいっていなかったようです。同僚からの声かけやサポートはどうだったのでしょうか。職場のコミュニケーションがうまくいっていれば、ツイッターで仕事の愚痴をこぼすこともなかったのではないかと思えます。
コミュニケーションがうまくいかないということは、仕事の成果や長時間労働にも結びつく問題です。質問や報告がしづらければ、お互いに意図が伝わりあわず、せっかくの成果物が検討はずれになりますし、やり直しや修正によって時間がかかってしまうこともあります。
彼女の状況がどうであったかは想像に過ぎませんが、周囲からのサポートが得られていれば、最悪の結果に結びつかなかったのではと悔やまれます。
周囲のサポートが高いか低いかは、どのように判断できるのでしょうか?
「仕事のストレス判定図」においては、
という質問への回答を集計して、判断します。
「気軽に話せる」、「困ったときに頼りになる」、「聞いてくれる」
どれも言葉にすれば簡単なことですが、このような「優しさ」が大切なことです。
職場環境は従業員ひとりひとりの問題です。
直接の仕事関係でなかったとしても、同じ職場にいる人として、声を掛け合い、周りの人の声に耳を傾けることで、お互いに気遣い支えあう職場環境をつくりましょう。
ストレスチェックの集団分析を、ぜひ職場の改善に役立ててみてください。
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