2014/11/04
Q 会社と従業員代表との間で、労使協定を締結しなければならないものがいろいろあると思いますが、これらについて、詳しく教えてもらえませんでしょうか。
A 労働基準法では、従業員の過半数で組織する労働組合がないときは従業員の過半数を代表する者と使用者との書面による協定が締結された時点で、それぞれ特別の効果を与えています。この書面による協定を労使協定といいます。
それでは、どのような項目について、労使協定が必要なのかを詳しく見て行きたいと思います。
1.時間外労働(労働基準法36条)
労使協定の締結と労働基準監督署への届出を条件に、法定労働時間を超えて労働させ、または法定休日に労働をさせることができる旨を定めています。
2.貯蓄金管理協定(同法18条)
労使協定の締結と労働基準監督署への届出を条件に、本来禁止されている、従業員の貯蓄金の使用者による管理を容認しています。
3.賃金控除協定(同法24条)
労使協定の締結を条件に、賃金は全額を支払わなければならないとする原則の例外として、旅行積立や財形貯蓄の積立などについて賃金からの控除を容認しています。
4.最長1ヶ月単位の変形労働時間制(同法32条の2)
労使協定の締結を条件に、1ヶ月単位の変形労働時間制の採用を認めています。
5.フレックスタイム制(同法32条の3)
労働基準法と労基法施行規則12条の3に定められた項目について労使協定を締結することを条件に、フレックスタイム制の導入を認めています。
6.1年単位の変形労働時間制(同法32条の4)
労使協定の締結を条件に、1年単位の変形労働時間制を導入・実施することができます。
7.1週間単位の変形労働時間制(同法32条の5)
労使協定の締結を条件に、1週間単位の変形労働時間制の採用を認めています。これを利用できる事業所は、常用従業員30人未満の小売業、旅館、飲食店、料理店と限定されています。
8.休憩時間の一斉付与原則の解除(同法34条2項)
労使協定の締結により、一般の業種においても休憩時間を一斉に取らなくてもよくなります。
9.割増賃金の割増率引き上げ分に相当する有給代替休暇を付与する場合の労使協定(同法37条3項)
1か月に60時間を超える時間外労働に対しては、25%ではなく、50%の割増賃金の支払いが必要ですが、労使協定を締結することにより、60時間を超え、かつ、割増賃金が引き上げられた部分に対応した部分(25%部分)について、割増賃金に代えて有給の代替休暇を付与することが可能となります。
10.事業場外労働におけるみなし労働時間数の決定(同法38条の2)
事業場外で業務につく従業員の労働時間をみなす場合に、原則としての所定労働時間でのみなしが実際の労働時間より短いと考えられるときの選択肢として認められています
11.専門職型の裁量労働制の導入(同法38条の3)
企画業務型の裁量労働制とちがって、専門職型の裁量労働制については、労使委員会の決議ではなく労使協定が導入の要件となっています。ただし、労使委員会が設立されればその決議をもってこれに代えることができます。
12.年次有給休暇の分割付与を行う場合(同法39条4項)
労使協定の締結を条件に、1年に5日分を限度として、時間単位の年休の取得が可能になりました。
13.計画年休制度の導入(同法39条5項)
年休日数のうち5日間をこえる部分については、労使協定を条件に、計画的に年休を与えることができます。
14.年休日の賃金を標準報酬月額で支払う労使協定(同法39条7項)
これは、かなり技術的な性格を持った労使協定と言えます。
このほか、育児・介護休業法や雇用保険法、賃金支払確保法などにも労使協定によるさまざまな措置が規定されています。
会社との間で労使協定を締結するの従業員の過半数代表となりますが、その「過半数代表」の選出については、労働基準法第41条2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないことと、過半数代表を選出する目的で実施される投票、挙手等の手続きによって選出された者であることの2点が要件として求められています。