2017/11/01
A、会社の福利厚生として通勤用の送迎車を出す場合に、もっとも注意をしなければならないことは労災の扱いです。会社の送迎車を利用している間の事故で従業員が負傷した場合は、通勤災害ではなく、業務上の災害となるため、労災保険で補償されない部分について、損害賠償責任が問われることがあります。
通勤時間や手段は、従業員にとっては重要な労働条件の一つです。求職のときの判断要素でもありますし、長時間の通勤や不便さが離職理由になることもあります。
会社が車両を用意してその部分をカバーすることは有効な一手となりますが、同時に通勤に会社の支配管理部分を作ることになりますので、あらかじめの認識とルール作りが必要になってきます。
通常、従業員の会社への通勤は、まだ会社の支配下ではありませんので、その間に起こった災害は、労働基準法で補償することが義務付けられている業務上の災害には当りません。
ただし、労災保険では通勤災害も会社の勤務と密接な関係があることから給付の対象にしています。しかし、会社の損害賠償の責任は業務上災害と違い、ありません。
では、今回のご質問のように会社が管理する送迎車両で、交通事故などの災害が起こったときはどうでしょうか。
この場合、車両自体が会社の管理下にあり、従業員が送迎されている間は会社の支配があるとされて、通勤災害ではなく業務上災害として扱われます。このため、従業員が事故の負傷によって休業している間と休業後30日間は解雇が禁止されていますし、私傷病ではないため会社規定の休職制度を当てはめることはできません。また、労災保険では補償されない慰謝料や、損害賠償については会社が請求されることがあります。
通勤の一端ではありますが、労災では業務上となることが最も気を付けなければいけない部分です。この点を考慮して、送迎車両を自社で管理する場合は、車両の選定、車両保険の加入や運行管理を十分検討する必要があります。
運転担当者の選定は重要な運行管理の一つです。
送迎車両を利用する従業員から会費や利用料を徴収するということがなければ、運転担当者が第二種運転免許を持っていることは必須条件ではありません。しかし、業務として運転に携わるため、運転の安全性と確実性、通常業務との兼務が可能な者であるかは判断材料となります。担当者の人数やシフト管理についても検討が必要でしょう。
また、運転担当者は送迎することが業務になりますので、この間は労働時間になり給与支給の対象となります。
会社が福利厚生として無料で送迎車両を運行する場合には、行政への届出などは不要です。しかし、送迎車両を利用する従業員から会費や利用料を徴収するときは、車両の大きさや乗車人数によって取扱いが異なり、届出が必要な場合がありますので各都道府県の運輸局への確認が必要です。
このように送迎車両は、会社の管理支配下にあると見做され、運行自体が業務となるため、予めのルールつくりをお奨めします。安易な運用、例えば、マイカー通勤をしている従業員に「ついでに」送迎をさせるといったことは避けたほうがよいでしょう。
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