2017/09/19
A、OECDモデル条約に明記されていることにより、それぞれの租税条約においては原則明記されています。
租税条約のひな形であるOECDモデル条約では「相手国において恒久的施設(PE)がなければ課税をしない」と、「仮に相手国に恒久的施設(PE)を有する場合であっても、相手国で課税されるのはその恒久的施設(PE)に帰属する所得に限定する」と明記されており、日本が各国と締結している租税条約においても上記を明記していることが通常となっております。
つまりは、海外で事業から生じた所得については恒久的施設(PE)が無いのであれば、その国では課税をしないというのが国際税務にいける大前提となっています。
また、海外に恒久的施設(PE)を有している場合について、どの部分までその国で課税できるかが問題になりますが、その論点については【ポイント】でご説明いたします。
OECDモデル条約で明記されている「仮に相手国に恒久的施設(PE)を有する場合であっても、相手国で課税されるのはその恒久的施設(PE)に帰属する所得に限定する」とは、帰属主義のことであり、恒久的施設(PE)に帰属する所得に対して恒久的施設(PE)所在地国で課税をするという考え方です。恒久的施設(PE)に帰属する所得であれば、所在地国で生じた所得はもちろん、所在地国以外で生じた所得についても所在地国で生じた所得とみなして課税の対象となります。
一方で総合主義という考え方もあります。これは恒久的施設(PE)所在地国にある全ての所得に対して課税を行うというものであり、恒久的施設(PE)に直接帰属する所得かどうかは問いません。
現行ではOECDモデル条約が帰属主義の立場をとっていることもあり、日本が締結する租税条約はすべて帰属主義の考え方を採用しております。
(※以前はパキスタンとの租税条約のみ、総合主義を採用していましたが条約改正により帰属主義に改められ、現在総合主義を採用する租税条約はなくなりました。)
法人が進出国で恒久的施設(PE)を設立せずに事業を行っている段階では、あくまで試験・準備的に進出国で業務を行っているに過ぎず、実質的には事業活動を行うまでには至ってないとみるのが一般的となっています。
そのため、恒久的施設(PE)が無い段階では課税を控え、恒久的施設(PE)ができてはじめて課税を開始することが国際課税上の共通認識となっています。
この回をもちまして租税条約ゼミナールの掲載は終了となります。長らくの御閲覧誠に有難うございました。
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