GERBERA PARTNERSブログ

国際税務|中国進出企業の労務リスク管理と対策②~労働契約時、契約履行時のリスク~

2017/11/06

Q、中国現地法人で従業員を雇用しようと思っています。労働契約締結時、契約履行中に気を付けることはありますか?

上海  

A、中国現地法人での従業員雇用には、様々なリスクが想定されます。労働契約締結時、契約の履行時に注意するべきポイントをご紹介いたします。

 

解説(公開日:2017/11/06 最終更新日:2017/11/02)

 

中国で従業員を雇用する際には、日本の労働契約と異なる点がございます。現地の制度を理解し、正しい労務管理を行いましょう。本日は、中国現地法人における労働契約時、契約履行中に想定されるリスクをご紹介いたします。

 

労働契約締結時及び契約履行中の労務リスク

 
(1)労働契約を締結しない、または締結を遅延する場合のリスク

 

『労働契約法』第十条の規定により、労働関係を確立させるには書面による労働契約を締結しなければならないとされています。つまり、事実上の雇用日から1ヶ月以内に、書面による労働契約を締結しなければなりません。

 

『労働契約法』第八十二条では、当該期間内に労働契約を締結しない場合には、従業員に毎月2倍の賃金を支払わなければならないと規定されているため、企業が労働契約を締結しなかったり、あるいは締結を遅延する場合には2倍の賃金を支払うリスクが生じます。以上により、企業は速やかに従業員と書面による労働契約を締結しなければならず、また、後々に必要のないリスクを起こさないためにも、必ず会社側2人以上の目の前で、契約書に本人のサインをしてもらうようにするべきと考えます。

 
(2)試用期間の約束が違法な場合のリスク

企業は一般的に、従業員のパフォーマンスを確認することを目的に、従業員の雇用時において、通常3ヶ月から6ヶ月の試用期間を設け、試用期間満了後に正規の従業員として雇用するかどうかを決定しています。

 

しかし、一部の企業は従業員と労働契約を締結する際に、一方的に試用期間を決めたり、あるいは試用期間を労働契約期間から除外したりしています。このような行為は『労働契約法』の試用期間に関する規定に違反しており、是正が必要となります。

 

なお、『労働契約法』第十九条では、労働契約の期間と試用期間の関係について、下記のように規定されています。

 
労働契約の期間
試用期間
3ヶ月未満の労働契約の場合 設定できない
3ヶ月以上1年未満の有期労働契約の場合 1ヶ月を超えてはならない
1年以上3年未満の有期労働契約の場合 2ヶ月を超えてはならない
3年以上の有期労働契約の場合 6ヶ月を超えてはならない
無期労働契約の場合 6ヶ月を超えてはならない
 

同一企業が同一従業員と労働契約をする際には、試用期間は1回限りとされており、また、一定の作業任務を完了するまでの労働契約は、試用期間の設定ができないものとされています。

 

試用期間は労働契約期間内とされ、労働契約において契約期間イコール試用期間と定めている場合は、その試用期間は成立せず、当該試用期間を労働契約期間とすることとされています。

 

企業が上記の規定に違反して試用期間を設定した場合、労働行政部門が是正を命じることになります。違法に設定された試用期間がすでに履行された場合には、企業はその試用期間満了後の月給を基準にしてすでに履行された法定試用期間を超える期間に対しては、従業員に対して賠償金を支払わなければなりません。

 
(3)労働契約に必要不可欠な条項を記載していない場合のリスク

 

『労働契約法』第十七条の規定により、労働契約には下記の条項を記載しなければならないとされています。

 
  1. 1.企業の名称、所在地及び法定代表者または主な責任者
  2. 2.従業員の指名、現住所及び居民身分証またはその他有効な身分証明書の番号
  3. 3.労働契約期限
  4. 4.就労内容及び勤務地
  5. 5.勤務時間及び休憩休暇
  6. 6.労働報酬
  7. 7.社会保険
  8. 8.労働保護、労働条件及び労務災害防護
  9. 9.法律に定められたその他の労働契約に記載すべき事項
 

一部の企業では、契約条項を削減することにより、自らの義務を免除せしめようとして、あえて従業員に対して必要条項の一部が欠けている労働契約を締結することがあります。

 

あるいは、一部の企業では、従業員の権利を制限するために、従業員に労働契約書を交付しないこともあります。しかし、企業によるこれらの行為はすべて違法とされ、相応の法律責任を負うことになることを認識しておく必要があります。

 

『労働契約法』の規定により、企業が提出した労働契約書に、労働契約法で規定された上記の必要条項が記載されていない場合、あるいは労働契約書を従業員に交付していない場合は、労働行政部門が是正を命じることになります。また、これらの法律違反により従業員に損害を与えた場合、企業は賠償責任を負わなければなりません。

 
(4)法律通りに賃金、経済補償金を支払わない場合のリスク

企業は、労働契約における取り決め事項および国の規定に従い、従業員の所定内賃金を適時に全額支払わなければならず、また従業員が残業した場合も、法律に従って残業代を適時に全額支払わなければなりません。

 

『労働契約法』の規定により、企業が賃金を適時に全額支払わなかった場合、従業員は労働契約をいつでも解除することができます。企業はこれらの賃金の適時全額払いを履行しなかった場合や、残業を命じたにも関わらず残業代を支払わなかった場合、または当該地区の最低賃金基準よりも低い賃金を従業員に支給した場合には、労働行政部門は一定期限内に従業員にその賃金や残業代を支給するように命じることとされています。

もし賃金が当該地区の最低賃金基準よりも低い場合、企業はその差額を支給しなければならず、定めた期限を過ぎても支給しなかった場合、労働行政部門はその支給すべき金額の50%以上100%以下の賠償金を上乗せして従業員に支払うように命じることとされています。

 

以上、本日は中国現地法人における労働契約締結時、契約履行中におけるリスクをご紹介させて頂きました。

上記ご紹介させて頂いた以外にも、労働契約の変更と解除の段階でも多くの法律リスクが存在し、企業は極めて慎重に取り扱う必要があります。

 

中国現地法人設立、従業員雇用については、ガルベラ・パートナーズまでご相談下さい。

   

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