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所得税|小規模企業共済を解約した時の課税関係はどうなりますか?

2017/06/16

Q、私は、今まで掛けていた小規模企業共済を解約することにしました。
65歳を超えての解約や、仕事を辞めることによる解約ではないので、任意解約になるかと思います。任意解約でも返戻金はあると聞きましたが、その場合の課税関係を教えていただけますでしょうか

     

A、解約手当金は、契約が解約された時点において、掛金納付月数が12ヶ月以上のときに受け取ることが可能です。
この解約手当金の額は、掛金の納付月数に応じて、納付した掛金の80%から120%に相当する額となります。
納付した掛金に対して100%以上の解約手当金を受け取ることができるのは、掛金納付月数が240ヶ月(20年)以上からです。

 

解説(公開日:2017/06/16)

小規模企業共済の解約手当金の基本ルール

  • ・解約手当金は、掛金納付月数が12か月以上の場合に支給されます。
  • ・支給額は掛金納付月数に応じて、納付掛金総額の概ね80%〜120%相当です。
  • 納付月数240か月(20年)以上で、初めて掛金総額を上回る解約手当金(100%超)を受け取れる設計となっています。

この点は、制度開始当初から現在に至るまで大きな変更はありません。

 

解約理由による「所得区分」の違い

小規模企業共済の解約時の課税関係は、解約理由によって大きく異なります

解約理由 所得区分 税務上の特徴
65歳以上での解約 退職所得 退職所得控除が適用され税負担が軽い
廃業・退職による解約 退職所得 同上
任意解約(自己都合) 一時所得 特別控除50万円のみ
 

65歳を超えて小規模企業共済の解約

65歳を超えての解約や仕事を辞めることによる解約の場合は、退職所得扱いとなり、税務上大幅な優遇措置を受けられることになります。しかし、任意解約の場合は一時所得となります。そして、一時所得の場合は次の様に計算されます。

一時所得の金額=
(総収入金額-収入を得るために支出した金額(必要経費)
              -特別控除額(最高50万円)÷2

計算は単純ですが、最も注意することがあります。小規模企業共済の任意解約の場合は、今まで掛けていた掛金を必要経費としてみることができない、という事です。これは当然と言えば当然です。

 

加入していた時の掛金は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)されていたので、今回解約したことによる必要経費までも認めると課税の公平性に欠けるためです。つまり、いいとこ取りはできないということです。

 

任意解約と65歳解約の税負担比較

具体的に数字を挙げて解説を進めます。例えば、60歳までに合計1,000万円の掛金を支払ったあとに任意解約し、950万円の解約返戻金を受け取った場合、一時所得は以下のようになります。

一時所得の金額450万円=(解約返戻金950万円-50万円)÷2

これに対して、65歳に解約し、解約返戻金1,000万円を受け取った場合(掛金の払込期間は20年とする)は、以下のことになります。

退職所得額100万円=(1,000万円-20年×40万円)÷2

以上により、60歳で任意解約をした場合には一時所得として450万円となり、65歳で20年以上掛金の払込みをした場合には、退職所得として100万円が課税対象となります。

 

同じ金額でも税負担が大きく変わる理由

このように、

  • 任意解約(60歳):課税対象 450万円
  • 65歳解約(退職所得):課税対象 100万円

このように、同じ1,000万円程度を受け取るにも、受け取り方で随分課税関係が変わってくることがわかります。

小規模企業共済は「老後資金形成」を主目的とした制度であるため、 長期加入・適正な受給に対して厚い税制優遇が設けられています。

解約される際には、計画的に解約されることをお勧めいたします。なお、小規模企業共済は契約者貸付の制度もありますので、解約を急がずに、いったんは貸付制度を受けて資金を調達するという方法もあります。

 

解約前に検討したい「契約者貸付制度」

資金が一時的に必要な場合、解約を急ぐ前に「契約者貸付制度」の活用も検討できます。

  • ・解約手当金の範囲内で借入可能
  • ・比較的低金利
  • ・解約しないため将来の退職所得扱いを維持可能

短期的な資金需要であれば、税務面でも有利な選択肢となる場合があります。

 

よくある誤解Q&A

Q1. 任意解約でも、今まで支払った掛金は必要経費として差し引けますか?
A. いいえ、差し引けません。
小規模企業共済の掛金は、加入期間中にすでに「小規模企業共済等掛金控除」として全額所得控除されています。そのため、任意解約時に受け取る解約手当金の計算上、掛金を再度必要経費として差し引くことは認められていません。これは「二重の税制優遇」を防ぐための取扱いです。

Q2. 解約手当金が掛金総額より少ない場合でも、課税されるのですか?
A. 原則として課税対象になります。
任意解約の場合、一時所得の計算では掛金を控除できないため、解約手当金が掛金総額を下回っていても、
(解約手当金 − 特別控除50万円)÷2
で計算した金額がプラスとなる限り、課税対象となります。「元本割れ=非課税」ではない点は、よくある誤解の一つです。

Q3. 60歳を過ぎていれば、必ず退職所得扱いになりますか?
退職所得扱いとなるのは、
・65歳以上での共済金受給
・廃業・退職など制度上定められた理由による解約
といった要件を満たす場合に限られます。60歳を超えていても、事業継続中の自己都合による解約は「任意解約」となり、一時所得扱いとなります。
   

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