2017/08/21
A、 サラリーマン等の給与以外の、一定の個人の報酬・料金に対しても源泉徴収をするのは、確定申告漏れを防ぐ必要があるからです。
とは言え、全ての個人事業者への支払いに対して源泉徴収をする必要はなく、所得税法等に定められた個人の業務に対してのみ限定して源泉徴収することとなっています。
また、源泉徴収税額は支払額面の10.21%となる場合がほとんどで、徴収した月の翌月10日までに税務署に納める必要があります。
日本では、個人が稼いだ所得に対して、自ら税額(ここでは所得税)を計算し、申告納付する「申告納税制度」が採用されています。しかし、会社に属するサラリーマン等は、毎月の給与から所得税が天引き(源泉徴収)される源泉徴収制度があり、年末に毎月概算で徴収した税額と年間の確定税額との差額について、還付又は追加徴収するという年末調整を受けているケースがほとんどであると思います。
この制度は、サラリーマン等の確定申告を省略できる点で、処理を簡便化できるという側面がありますが、申告漏れを防ぐという目的にも大いに役立っています。そして、この申告漏れを防ぐという目的から、所得税法では、給与所得者以外に支払いをする際にも、支払う側に徴収・納税義務がある報酬・料金等を規定しています。以下、この報酬・料金等について解説します。
なお、ここでの源泉徴収義務者には、法人の全て、個人のうち給与の支給を行っている者等が該当します。そのため、個人のうち他人を雇わず事業を行っている場合、源泉徴収義務が免除されます。
※国内での源泉徴収を想定しています。非居住者等に対する源泉徴収については、別途規定があります。
所得税法204条に源泉徴収しなければならない報酬・料金等が定められており、ここで定められた業務や取引に該当する場合のみ、支払をする者は源泉徴収をする必要があり、該当しない場合には源泉徴収は必要ありません。また、該当する業務は多岐にわたりますが、ポイントは2点です。
支払先が法人である場合、法人は規模が大きく経理体制が構築できていると想定できますので、基本的に源泉徴収は不要となります。
一方、個人への支払は(2)に該当する場合、源泉徴収が必要です。
所得税法204条等に規定する個人への報酬・料金については、おおよそ下記の8項目に区分されます。この項目いずれかに当てはまる場合に徴収義務が発生します。
該当する業務等の詳細な情報は、「報酬・料金等の源泉徴収事務(国税庁:PDF)」をご覧ください。
①について、原稿執筆への報酬や講演に対する報酬以外にも、ウェブデザインや翻訳・通訳に対する報酬等、実務でよく見かける取引が多数含まれているため、注意が必要です。
また、②の税理士や弁護士に対する報酬について、他にも技術士やプログラマー等、専門的で高度な能力を必要とする業務を行う者に対する支払に対して、源泉徴収が必要であるとされています。
実際に源泉徴収する税額は、上記URL内にも記載がありますが、取引区分ごとの金額を参照します。ほとんどの場合、報酬額面の10.21%(所得税+復興特別所得税)ですが、支払額が100万円を超える場合や、司法書士への支払(1万円を超える部分につき10.21%)等、例外規定もありますので注意が必要です。
また、10.21%乗じる時の報酬金額は、消費税込が原則ですが、請求書に本体価格と消費税額が明確に区分されている場合、消費税額を除いた金額に対してのみ10.21%徴収するとしても問題ありません。
なお、実務では、受取った請求書に記載された金額を徴収しますが、源泉徴収が必要であるのに、請求書に源泉徴収税額が記載されていない場合や、記載金額が誤っている場合には、徴収義務者(支払者)側が徴収漏れ・不足等を税務署から指摘され、追加納付等しなければならなくなることも起こり得ます。
徴収後の納付については、給与等と同様に、徴収した月の翌月10日までに行います。また、報酬の内容により使用する納付書は2種類あります。
給与を支払う源泉徴収義務者で、従業員が10人未満等の場合に、源泉所得税の納期の特例を受け、半年に1回のみ源泉所得税を納付している場合、①の税理士等の報酬は半年に1回の納付で構いませんが、他の報酬等(②の納付書での支払)については、毎月納付しか選択できません。
このように、個人への報酬・料金等の源泉徴収の対象となる場面は広く存在し、また徴収すべき業務であるか否かの区分も明確でない場合が多いため、実際に税額を徴収すべきかどうか非常に悩むところです。また、徴収を怠ったと税務署から指摘を受けた場合、支払者側に不納付加算税や延滞税が課せられるため、責任も非常に重くなります。
そのため、源泉徴収が必要な報酬であるのに、請求書に徴収税額の記載がないことを発見した場合等、取引先に状況を説明し、請求書を作り直してもらう等、未然に注意して対策を講じることが重要となります。
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