2017/11/16
A、現在、多くのメディアで出国税という言葉が取り上げられていますが、この出国税は2種類存在しています。
1つは、日本の富裕層が居住地を海外に移す場合に出国税(所得税)が課税されるもので、正式名称は「国外転出課税制度」と呼ばれます。
もう1つは日本から出国する日本人全員や外国人に対して課税される出国税(所得税)のことを意味しています。
今回は前者の出国税(国外転出課税制度)についてご説明します。
国外転出課税制度とは、富裕層が国外移住することによる日本での課税逃れを防止することを目的として2015年7月1日より導入された制度です。
具体的には、一定金額以上の有価証券等の対象資産を保有する個人が国外へ転出する際、その国外転出時において対象資産を譲渡又は決済したものとみなして、対象資産の含み益に対して所得税が課税されます。
この制度は日本の居住者が有価証券等の対象資産を保有しつつ、その譲渡益に対する所得税が非課税となる国へ出国した上で、その対象資産の譲渡に係る所得税課税を回避する行為への対応策となっています。
なお、この出国税の納税義務者に該当する個人が納税をしないで出国してしまった場合、通常の出国税に加えて加算税等のペナルティが課されてしまうため注意が必要です。
この出国税が課税される者は、出国時においてその出国する者が保有する下記資産の時価が1億円以上であり、かつ、国内転出の日の前10年以内において、国内在住期間が5年を超える投資家となります。
出国税が課税されるケースとしては、日本に在住している上記1の者が国外転出する場合だけでなく、相続・贈与・遺贈(以下、贈与等)によって非居住者に対象資産を移転した場合においても出国税の納税義務が生じます。
これは、対象資産を非居住者に贈与等をした場合、その贈与等をした時にその移転した対象資産の含み益に対して出国税が課税されるものです。
要するに、対象資産を非居住者に贈与等をした場合、その贈与等の時における時価により、その移転した対象資産の譲渡があったものとみなして、贈与者側で譲渡益に対する出国税の負担が生じるというイメージです。
出国税の申告及び納税手続きについては、国外転出日までに納税管理人を選定している場合と選定していない場合で下記の通り異なります。
申告期限は国外転出した年度の翌年3月15日となります。
納期限についても同日となりますが、担保等を提供することによって納期限を延長することが出来る特例制度もあります。
申告及び納期限は国外転出日となります。
国外転出課税制度の適用により納付すべき出国税については、一定の手続きをすることにより、国外転出の日から5年を経過する日まで納税の猶予を受けることが可能となります。
納税猶予を受けるための一定の手続きとは、下記要件を全て満たす必要があります。
また、国外居住期間が長期間に及ぶ場合、国外転出の日から5年を経過する日までに「国外転出をする場合の譲渡所得税等の特例等に係る納税猶予の期限延長申出書」を 提出することにより、納税猶予期限をさらに5年間引き延ばすことが可能です。
従いまして、最大で10年間の猶予が認められることになります。
ただし、この納税猶予期間については利子税が発生するためご注意ください。
上記4による納税猶予の特例を受けている場合、選任している納税管理人を通じて、毎年12月31日時点で所有している対象資産について、納税猶予を継続適用する旨を記載した「国外転出をする場合の譲渡所得税等の特例等に係る納税猶予の継続適用 届出書」を翌年3月15日までに提出する必要があります。
国外転出に係る出国税については、上記1の適用対象者要件並びに3・4の申告及び納税手続き、納税猶予制度といった注意すべき事項が多いため、慎重に判断していく必要があります。
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