2018/10/12
理解の前提として、介護保険料徴収制度について確認します。
40歳から64歳までの方(これを「介護保険第2号被保険者」といいます)については、各医療保険者を通じて保険料が徴収されることになっています。
各医療保険者というのは、協会けんぽとか、健康保険組合とか、国民健康保険の主体たる自治体を指します。社会保険料の保険料額表(標準報酬等級表)をご覧いだくと分かるように、40歳に達すると「介護保険第2号被保険者」として少し高い保険料のテーブル(介護保険料が上乗せになっているため)に移行しますし、一般的な給与計算ソフトでは、40歳に達したことを自動的に判定して、保険料の控除が変更になるシステムが使われていますので、普段は、介護保険料の徴収というのはあまり意識されない論点かと思われます。
次の前提として、海外出向者の住民異動届について説明します。
自治体ごとに手続が多少異なる場合がありますが、ここでは東京都港区のHPを例示します。
東京都港区 「国外に引っ越す場合の届出を知りたい。」
「国外へ引っ越すときは、あらかじめ自治体へ国外転出の届出が必要です。」とあります。
【提出書類】
【申請期間】
転出予定日まで
住民異動届を提出することにより、住民票が除票されます。
住民登録が無くなるので住民税の徴収はなくなります。(ただし、1月1日現在に居住している場合は、年の途中で転出しても、その年度の住民税は納税する必要があります。翌年度から納税不要となります。)
また、後述するように介護保険第2号被保険者「非該当」と認識されるため、介護保険料免除の手続を取ることが可能となります。
しかし、住民票を除票することで、いくつかの影響が出ることが知られており、場合によっては生活に影響が出ることが想定されますので、事前に対応をご検討ください。
【住民票除票による影響】
(1) 住民票が取れなくなる
身分証明が難しくなる場合があります。
(2) 印鑑証明が取れなくなる
実印を使用するような国内手続(不動産登記・遺産相続・自動車譲渡など)ができなくなります。このような手続は海外出向前に身辺整理しておく必要があります。
なお、居住地の在外公館で「サイン証明」をもらう方法があります。印鑑証明が必要な書類がある場合は、領事官の前でサインをして、それに証明をもらうことで、印鑑証明と同様の効果が認められます。海外との書類のやり取りが必要になるので、かなり煩雑です。
(3) マイナンバーがなくなるのでマイナンバーが必要な手続ができなくなる。
(4) 地方自治体の選挙人名簿から削除される
居住地の在外公館で在外選挙人名簿に登録すれば在外選挙が可能です。
【その他関連事項】
(5) 海外出向後は、現地で在留届の提出が必要です(インターネットで手続が可能)
旅券法第16条により、その地域を管轄する日本大使館または総領事館に提出することが義務付けられています。また、不測の事態の際に、在留邦人保護を受けるためにもお忘れ無く手続してください。
(6) 運転免許証の更新管理
「出国する前に更新期間前手続き」を行う方法」「一時帰国した時に更新手続きを行う方法」「失効してしまった場合の救済措置を利用する方法」などいくつかの方法がありますので、状況に応じて臨機応変な対応が必要です。
警察庁 「海外滞在中で日本の免許をお持ちの方」
(7) 留守中の確定申告
留守中の国内に不動産所得などがあり確定申告が必要な方については、納税管理人を選任する必要があります。ご家族、親戚、お知り合いの税理士などの他、法人(出向元会社)でも納税管理人になることができます。
国税庁 「海外転勤と納税管理人の選任」
さて、以上を前提として、介護保険料を免除する手続は、下記のとおりです。
日本年金機構 「介護保険の被保険者から外れる又は被保険者になるための手続き」
※健康保険組合の場合は、各機関で同様のご案内がありますのでご確認ください。
【手 続】
事業主(海外出向元企業)が、「介護保険適用除外等該当・非該当届」を日本年金機構又は健康保険組合に提出します。
【添付書類】
【注意点】
弊社では、実務的な観点から、海外出向者の管理を含め、労務管理や人材管理の整備をご支援させていただいております。海外出向者管理でお悩みの場合は、お気軽に下記問い合わせフォームよりお申し付けください。