GERBERA PARTNERSブログ

社会保険|「入社後の2か月間を社会保険に加入させない方式」の妥当性

2021/08/11

Q、当社では、正社員採用にあたって試用期間の2か月間については、正式採用ではないので社会保険に加入させないことにしています。このような方法は妥当でしょうか。

A、厚生年金保険法第12条(健康保険法第3条)においては、「二月以内の期間を定めて使用される者」が適用除外となる旨が定められています。

ただし、これは2か月間で労働契約が終了する臨時的な労働者を指しており、2か月経過後に継続的に使用させる前提になっている場合は、採用当初から社会保険に加入する必要があります。正社員として採用した者の試用期間を適用除外とすることは適切ではないと考えられます。

 

解説(公開日:  最終更新日:

 

※本稿では、いわゆる「社会保険の適用拡大」の全体像については論じません。

 

1.社会保険の適用除外者について

厚生年金保険法第12条及び健康保険法第3条においては、「二月以内の期間を定めて使用される者」が適用除外になっています。この条項は比較的有名なものであり、これを活用したスキームとして「入社後の2か月間を社会保険に加入させない」という人事管理方法を実施している企業があります。

 

しかしながら、こうした人事管理方法については、日本年金機構から「身分的な意味で一定期間を臨時の使用人あるいは試用期間という取扱いをしても、継続的な使用関係が認められる場合は、採用当初から被保険者として扱うことになります。」との疑義照会が発出されている点に注意を要します。

 

厚生年金保険法第12条(適用除外)

次の各号のいずれかに該当する者は、第九条及び第十条第一項の規定にかかわらず、厚生年金保険の被保険者としない。

   
  1.  一 臨時に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)であつて、次に掲げるもの。ただし、イに掲げる者にあつては一月を超え、ロに掲げる者にあつては所定の期間を超え、引き続き使用されるに至つた場合を除く。
  2.   イ 日々雇い入れられる者
  3.   ロ 二月以内の期間を定めて使用される者
  4.  
  5.  二 所在地が一定しない事業所に使用される者
  6.  
  7.  三 季節的業務に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)。ただし、継続して四月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。
  8.  
  9.  四 臨時的事業の事業所に使用される者。ただし、継続して六月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。
  10.  
  11.  五 事業所に使用される者であつて、その一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の一週間の所定労働時間の四分の三未満である短時間労働者又はその一月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の一月間の所定労働日数の四分の三未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからニまでのいずれかの要件に該当するもの
  12.   イ 一週間の所定労働時間が二十時間未満であること。
  13.   ロ 当該事業所に継続して一年以上使用されることが見込まれないこと。
  14.   ハ 報酬について、厚生労働省令で定めるところにより、第二十二条第一項の規定の例により算定した額が、八万八千円未満であること。
  15.   ニ 学校教育法第五十条に規定する高等学校の生徒、同法第八十三条に規定する大学の学生その他の厚生労働省令で定める者であること。
 

日本年金機構 疑義照会
被保険者資格取得届 整理番号1

案件:2月以内の期間を定めて使用される者の被保険者資格について

法令:厚生年金保険法第 12 条、健康保険法第 3条

質問

職員の採用において、常勤、非常勤に限らず全ての職員は、2 ヵ月間の雇用契約を結び、2 ヵ月間の契約満了時に本人の意思確認を行い、勤務態度、能力、業務量などを勘案し、契約を見直した上で、希望者については再契約を行っています。こういったケースの場合、当初 2 ヵ月間の有期雇用契約期間は、「臨時に使用される者」として、社会保険の適用除外として取り扱ってもよいでしょうか。

 

回答

臨時に使用される者とは、使用関係の実態が臨時的である者と解されます。事業所において継続的な使用関係に入る当初、身分的な意味で一定期間を臨時の使用人あるいは試用期間という取扱いをしても、ご照会の場合のように継続的な使用関係が認められる場合は、採用当初から被保険者として扱うことになります。

 

日本年金機構 疑義照会
被保険者資格取得届 整理番号14

案件:所定の期間を超え、引き続き使用される者の適用除外について

法令:厚生年金保険法第 12 条

質問

「2 ヵ月以内の期間を定めて使用される者」と「所定の期間を超えて引き続き使用される場合は、その日から被保険者資格を取得する」の解釈について照会します。

従来から、所定の期間とは雇用するとき契約により定めた雇用期間であり、所定期間終了後引き続き使用されるとは、単に所定の期間を超えればただちに強制被保険者に移行すると解すべきではなく、その使用関係の実態が、常用労働者の性格を帯びたか否かという点から、引き続き使用されるという継続性を認定する必要があると解釈されていますが、「継続性を認定する必要」という判断の目安が結果として「2ヵ月→2 月以内」と解釈してよいでしょうか。

 

回答

臨時に使用される者であっても、その使用される状態が常用化したときは被保険者として取り扱うことになります。2 月以内の期間を定めて使用される者であれば、所定の期間を超えて引き続き使用される場合は、常用的使用関係となったとして、その超えるに至った日から被保険者になるものとされています。

つまり、引き続き使用されるという継続性の認定は、一時的に 2 月以内の期間を定めて使用される「日雇特例被保険者」又は「日雇特例被保険者の適用除外を受けた者」が、その所定の期間経過後において、臨時的使用関係から常用的使用関係に移行したか否かにより判断することになり、使用関係の実態に即して実質的に判断することになります。

したがって、本件については、引き続き使用されるという継続性を画一的に当初の雇用期間と延長期間により判断するものではなく、あくまでも雇用契約における使用関係の実態から常用的使用関係に移行したか否かを判断することになります。例えば、当初 2 ヵ月以内の雇用契約であった者が、その雇用期間経過後、海外転居するまでの 1 ヵ月間に限って臨時的に雇用契約が更新され、その後は契約更新されない場合には、引き続き使用されるという継続性は認められず、常用的使用関係に移行していないことから、被保険者として適用しないことになります。

なお、臨時的名目によって使用されていても、当初から使用関係の実態が一定期間ごとに雇用契約を更新させるような状態であって、その実態が常用的であれば、臨時に使用される者とは認められず、雇入れの当初から被保険者となります。


 

2.法改正について

令和4年10月からの社会保険の適用拡大と合わせて法令改定が予定されています。「雇用期間が2か月を超えて見込まれる」場合には適用対象となる改正が行われ、本論点について確認的に規制強化が図られることになっています。また、厚生労働省の資料によれば、実務的に、「就業規則、雇用契約書等において、その契約が『更新される旨』、または『更新される場合がある旨』が明示されている場合」又は「同一の事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合」は、2か月経過後からではなく、採用当初より適用となる旨が確認されています。

 

社会保険の適用については、国家的な財政ひっ迫という背景により、適用の網が強化されています。これまで、自社独自運用を行っている場合は、運用の見直しが必要な状況になっています。

 

弊社では、実務的な観点から、労務管理や人材管理の整備をご支援させていただいております。人事労務管理でお悩みの場合は、お気軽に下記問い合わせフォームよりお申し付けください。

 
 

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