2022/05/25
A、社会保険の報酬からよけてよいかどうかは、名称ではなく、実態で決まります。 「大入袋」としてよけているものがあれば、実態として、「臨時的なものであるか」「恩恵的なものであるかどうか」を確認して、取り扱いを判断してください。 実態として「大入袋」でない場合、労働関係法(労働保険、労働基準法)にも影響するので注意が必要です。
日本年金機構が発行している「算定基礎届の記入・提出ガイドブック」や日本年金機構のホームページ等において「報酬となるもの」「報酬とならないもの」が明示されています。
その中で、「大入袋」は、退職手当や出張旅費や傷病手当金などと並んで、「報酬にならないもの」に区分されています。しかし、報酬になるかならないかを決めるのは、名称のいかんではなく、実態です。
健康保険法第3条第5項及び厚生年金保険法第3条第1項第3号において、報酬は、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受ける全てのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。」と定められています。報酬に該当しない「臨時に受けるもの」については、昭和23年7月12日保発第1号通知において、「被保険者が常態として受ける報酬以外のもので極めて狭義に解するものとすること。」とされています。
「労働の対償」とは、被保険者が事業所で労務に服し、その対価として事業主より受ける報酬や利益などをいい、①過去の労働と将来の労働とを含めた労働の対価 ②事業所に在籍することにより事業主(事業所)より受ける実質的収入をいいます。ただし、事業主が恩恵的に支給する見舞金は通常の報酬ではないとされ、結婚祝金や慶弔費などは、社会保険上の「報酬」、「賞与」とはなりません。
これらから、「大入袋」を社会保険の「報酬」「賞与」に含まなくてよいかどうかは、その大入袋の支給が、
の2点で決まるということになります。
日本年金機構のホームページに「大入袋」に関する疑義照会への回答が掲載されています。疑義照会の回答において、大入袋の本来の性質を「1.発生が不定期であること、2.中身が高額でなく、縁起物なので極めて恩恵的要素が強いこと」と示しています。
この照会においては、「臨時的かどうかの判断」については、「大入袋の支給原因、条件等が不明なため、 臨時的であるかの判断ができず、報酬かどうかの一律な判断はできない」という前提ではありながらも、「支給事由の発生、原因が不確定なものであり、極めて狭義に解するものとすることとされていますので、例年支給されていないか、支払われる時期が決まっていないかで判断」するよう記載があります。また、「恩恵的かどうかの判断」については、社会通念上での判断となるとしたうえで、照会の事例については、「賃金台帳に記載があること、金額が1万円であること、これに加え、支給事由が業績達成や営業成績に連動しているものであれば、本来の大入袋のもつ性質とは異にし、恩恵的ではないと判断するのが妥当」とされています。
【ご参考】主な疑義照会と回答について(日本年金機構)
(厚生年金 適用の「区分 被保険者資格取得届」の「整理番号8」が該当の内容です)
会社によっては、ある期間を通して会社が業績を達したときや営業成績がよかったときなどに、「大入袋」や「大入手当」という項目で、従業員に支給をする会社もあると思いますが、支給する要件や時期などが決まっているということであれば、「発生や原因が不確定」ではなく、臨時的とは言えないこととなります。
また、支給要件について規定がなく、明確に決まっていないとしても、支給事由が業績達成や営業成績に連動しているのであれば、「労働の対償」に該当し、恩恵的とは言えません。
毎月、業績達成を確認して「大入袋」の支給の有無や支給額が決定されているのであれば、社会保険上は、毎月の報酬に含む必要があります(上記と同じ疑義照会の「区分 被保険者資格取得届」「整理番号28」の「コミッションに対する報酬の取り扱いについて」を参照してください)。四半期ごとに算定され支給されるのであれば、年4回以上支払われる賞与となりますので、社会保険上は「賞与にかかる報酬」という取り扱いになります。
また、「労働の対償」として支給されるものであれば、社会保険の報酬や賞与になるだけでなく、労働保険法と労働基準法上の賃金ともなります。労働保険の面では、「大入袋」として支給される額を労働保険の対象の賃金に含めれば、正しく保険料を払うことができますが、労働基準法の面では、「大入袋」を毎月算定して支給する場合、給与体系によっては、割増賃金の額を月によって変動させることが難しい場合もあるでしょう。
従業員さんのやる気を引き出すために、また、従業員さんの努力に報いるために、会社としていろいろな施策を考えられていると思いますが、法律の面では、簡単に会社の思いを形にしづらい点もあります。業績達成に金一封を支給したいとういうことであれば、通常の年2回や3回の賞与に反映していくということが取扱いに疑義生じることなくよいと考えます。
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