2019/02/04
A、フレックスタイム制は、従業員が各日の始業及び終業時刻を選択して働くことができる制度です。制度導入には就業規則に規定を設けることと、労使協定で基本的な枠組みを定めることが必要です。
フレックスタイム制は、従業員が各日の始業時刻と終業時刻を選択して働くことで、仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くことを可能とする制度として、1988年4月より法律上の制度としてスタートしました。
始業時刻と終業時刻を従業員が選択できるということから、企業内でも職種によって適否を検討して導入するケースが多いようです。
それでは、フレックスタイム制を導入する要件と注意点についてみていきましょう。
フレックスタイム制を導入するには次の2点が要件となります。
(1)就業規則の規定
就業規則にフレックスタイム制が適用されること、および始業、終業時刻を従業員の決定に委ねることを定めます。
(2)労使協定の締結
フレックスタイム制の基本的な枠組みを労使協定で定める必要があります。
◇ 基本的な枠組とは
① 対象となる従業員の範囲
対象となる従業員を事業場ごとに定めます。定め方は任意で、例えば、個人ごと、部署ごと、職種ごと、あるいは事業場全体など、いずれも可能です。
② 清算期間
制度の対象となる従業員が働くべき時間を定める期間を精算期間といいます。現在はこの期間は1か月以内に限られています。
③ 清算期間における総労働時間
清算期間中に、制度の対象となる従業員が働くべき時間の総枠を精算期間における総労働時間といいます。
例えば、1か月160時間といった、期間を通じた一律の時間を定める方法や、清算期間における所定労働日数と、所定労働日1日当たりの時間数を定めてこの二つを掛け合わせた時間数を総労働時間とする方法があります。
④ 標準となる1日の労働時間
標準となる1日の労働時間は、年次有給休暇を取得した際に算定される労働時間となります。
⑤ コアタイムの設定
制度の対象となる従業員が必ず働かなければならない時間帯を定めることができ、この時間帯をコアタイムといいます。
⑥ フレキシブルタイムの設定
制度の対象となる従業員が働くことができる時間帯を定めることができ、この時間帯をフレキシブルタイムといいます。
⑤および⑥は必ずしも設けないといけないものではありません。
(1)始業時刻・終業時刻を従業員が選択できること
フレックスタイムは、従業員が始業、終業時刻を選択することが原則となっている制度です。このため、使用者側から、日毎に異なった始業、終業時刻を指示するような場合はフレックスタイム制には当りません。
ご質問の件では、営業職を対象に制度導入を考えられていますが、訪問先や業務の進め方が細かく定められており、始業と終業時間が上長から指定されるといった実態がある場合は、まずは体制の見直しを検討ください。
(2)コアタイムが適正であること
コアタイムが、従来の所定労働時間とほぼ同じといったような、長い時間帯を取っている場合は、始業、終業時刻が選択できるとは言えず、制度が無効となることがあります。
(3)労使協定が適正に結ばれていること
フレックスタイム制は、その枠組みが労使協定により締結されていることが、導入の要件となりますが、この労使協定が、労働者の過半数を代表する者との間に締結される場合、その代表者の選任方法が適切である必要があります。
例えば、労働者代表者が使用者側からの指名であったり、過半数に満たない労働者のみで選ばれていた場合には、選任方法が不適切とされて、協定そのものが無効となってしまします。
協定が無効となると、フレックスタイム制は導入されていなかったことになり、通常の法定労働時間である1日8時間および1週40時間を超える労働時間に対しては、時間外割増賃金の支払いが必要となります。
フレックスタイム制は、通常の始業、終業時刻が定められた制度とは異なり、従業員側がこれらを選択できるため、従業員にとっては有利であるという見解から、任意で定められる部分の多いことが特徴の制度です。
制度を活用することによって、適正な労働時間配分をすることができ、結果的に労働時間を短縮することも期待できます。そのためにも、現在の業務内容、仕事の進め方などを整理していくことが、制度導入のポイントです。
また、2019年4月からは、清算期間が1か月を超えて3か月以内とすることができるようになり、働き方の選択肢は増えます。
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