GERBERA PARTNERSブログ

労務管理|企業コンプライアンスを強化しよう ~反社会勢力への対策~

2015/02/24

Q 中小企業であっても、コンプライアンスが厳しく求められるようになっています。知らないうちに暴力団関係者などの反社会勢力と接点を持つことのないように、社内の体制整備を進めていきたいと考えていますが、どのような対策があるでしょうか?

 

A 暴力団対策法の改正を受け、都道府県においても暴力団排除条例が制定されています。反社会勢力に利益供与を行った場合は、条例によって勧告・公表等の制裁を受けることは当然のことですが、契約や融資など関係をもったこと自体で、企業の社会的信用が失われるリスクもあります。もはや知らなかったでは済まされない状況になっていますので、企業の規模に関わらず、体制整備は必要かと考えられます。

 

 警視庁発表の事案によりますと、以下のような業種が、反社会勢力との接点を持ちやすい傾向にあり、また反社会勢力から狙われやすい業種といえます。

 

 金融業、不動産業、賃貸業、レンタル業、建設業、内装業、造園業、ホテル、ゴルフ場、飲食店

 


 企業が反社会勢力と接点を持ってしまうケースは、次のようなパターンが多いようです。     

1、暴力団が一般顧客を装って契約しようとするケース

2、自社の社員が知らないうちに暴力団との接点をもってしまうケース(個人的な交友関係など)

 

 企業として、水際で100%ブロックすることは現実として難しいと思われます。また、全顧客・全社員を調査するようなことも、個人情報の観点から困難です。そこで、実務的な観点から、企業としてすぐにできる対策をご紹介してみたいと思います。

 

(1)反社会的勢力ではないことの表明・確約書

 契約する際に相手方から「自分は暴力団等反社会的勢力でないこと」、「反社会的勢力との関係がないこと」等を項目ごとに表明させ、これに「違背した場合」や「虚偽の申告をした場合」には「無催告で解約に応じ」、「これによって生じた損害を自分の責任とする」ことを確約させる文書です。

 

 すでに多くの企業で導入されていますので、簡便な方法で予防効果も高いと思われます。また警察当局の見解によると、虚偽申告で契約された場合には、詐欺事件として立件が容易になり、反社会的勢力の取締がスムーズになると言われております。

 

(2)暴力団排除条項

 企業で使用している契約書ひな形、約款に「暴力団排除条項」を挿入する企業も多くなっています。効果としては、企業としての「コンプライアンス宣言」となること、契約相手を牽制できること、そして相手方が反社会的勢力と判明した場合、契約解除の根拠となることです。

 

(3)就業規則に反社会勢力排除に関する条文を追加する

 入社時の提出書類として、表明・確約書を提出させる旨の規定を入れたり、会社への報告義務・虚偽申告への懲戒を定めることも効果的です。上記と同様に、こうした規定自体がコンプライアンス宣言になりますし、万が一の事後処理を容易にすることができます。

 

(4)不当要求防止責任者講習制度(暴力団対策法14条1項)

 警察に選任届を提出して、指定講習を受けることで、企業の対応力を強化することができます。講習という機会を通して、警察の担当官、暴力団追放運動推進都民センター、弁護士等の専門家と接点を持つことができますので、情報収集も容易になります。

 

(5)警察への相談

 顧客・社員が反社会勢力関係者であるかを調査するためには、警察が持つ情報が必要になりますが、捜査情報であるため、一般に公開されているものではありません。ただし、暴力団排除条例による効果として、「警察の情報提供制度」を利用できる可能性があります。これは個別の事案ごとに、対象者が反社会勢力であるかどうかの情報提供を受けることができるものです。確認を要する者の資料を持参の上、警察の暴力団担当係に個別に相談してみてください。

 

 以上のように、「水際対策」「解約・関係切断」「関係機関からの情報提供」を組み合わせながら、自社としての対策を立てていくことになります。対策やひな形については、警視庁ホームページの他、暴力団追放運動推進都民センターでも情報提供がなされていますので、併せてご覧ください。