2019/08/28
A、労務管理を行う上では、主に業務ツール、機密情報管理、労働関係法令の遵守、等の視点で留意が必要となります。
在宅勤務は、通勤負担の軽減、事業継続性の確保、多様な働き方の観点から、導入を進める企業が増えています。一方、会社の目が行き届かない働き方である事から、通常の労務管理とは異なった視点で留意が必要です。
会社の外で業務を行う場合、機密情報の管理の問題が生じます。また、業務用のパソコンを持ち出すのか、自宅のOA機器を業務に使用するのかといった問題とあわせて、広義のセキュリティ上の留意点を検討する必要があります。
家族とはいえ業務上の情報を開示するわけにはいきませんので、最低限、在宅勤務者以外が業務上の情報を見聞き出来る状態を作らないことが求められます。
次に業務用パソコンや周辺機器を自宅に持ち帰る場合、紛失、持ち運びによる故障、インターネットや接続機器によるセキュリティの脅威等への対策が必要となります。個人所有のパソコン及び機器を使用することは避けたいところですが、セキュアなリモートデスクトップサービス等も普及していますので、こうしたサービスを検討しても良いのではないでしょうか。いずれの場合も、在宅勤務に必要な機器や通信料金等の負担ルールは事前に決めておく必要があります。
在宅勤務を行ううえで必ず生じる問題が、労働時間及び指揮命令についての管理の問題です。労務管理の方法としては、事業場外みなし労働時間を使用する場合と、それ以外の場合が考えられます。事業場外とはいえ、「労働時間を算定しがたい」とは言えない場合は、みなし労働時間は適用できませんので注意が必要です。在宅勤務における、事業場外みなし労働時間制適用の判断基準については、厚生労働省の資料をご参照ください。
在宅勤務での適正な労働時間管理の手引(厚生労働省)
事業場外みなし労働時間制以外の時間管理を行う場合、実際に業務を行っている時間と、そうでない時間を常時確認できることが望ましいです。労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間を言います。事業場内と比べ、管理が行き届かない分、業務中か否かを客観的に判断する仕組みが必要です。パソコン操作が中心の業務であればその操作時間により、作業中か離席中かといった判断をするツールも存在します。賛否はありますが、自宅の作業状況をビデオ監視するサービスもあります。当日の作業予定を明確にし、都度、業務報告を行ない、日報を提出させる方法も比較的一般的です。休憩時間やちょっとした外出については細めに申請し許可するといった運用は、在宅勤務ならではのメリットでしょう。
一方、運用上の注意として、夜遅くに落ち着いて業務をしたいという利用者が多いようですが、その場合、労働時間と認められれば深夜割増賃金の支払い対象となります。休日のちょっとした業務に就いても同様です。あくまで、労働契約の範囲内で、会社の指示もしくは承認の上行うよう、徹底が必要となります。
(1) 労働契約
業務を行う場所については、労働契約における絶対的明示事項の一つです。事業場外での業務が恒常的に生じるようだと、労働契約の変更となる点に留意が必要です。運用上は、労働者本人が希望した場合に適用させるのが一般的かと思います。
(2) 安全衛生
業務を行う場所が自宅であっても、使用者の安全配慮義務は適用されます。VDT作業の場合は、健康診断の実施や作業1時間ごとに10~15分の休止を行うなどの措置は必要となります。
(VDT作業に関する留意点はこちら『新VDT作業ガイドラインのポイント(東京労働局)』)
その他、全てを把握することは難しいですが、自宅が業務を行う場所として適当かどうかの確認を行うことをお薦めします。
(3) 労働災害
業務を遂行している最中に、業務に起因して生じた傷病は業務災害として労災の対象となります。この場合、私的行為によりけがをした場合などは対象とはなりませんが、使用者としての管理責任が生じる点、留意が必要です。
在宅勤務は多様な働き方の1手段として推奨されることが多いですが、労働契約という形態で自宅で業務を行うこと自体、もともと想定されてこなかったのが実態です。導入にあたっては、細部にわたるまで慎重に検討し、持続可能な制度として活用頂ければと思います。
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