GERBERA PARTNERSブログ

労務管理,テレワーク|テレワークにおける「所定労働時間みなし」の使いすぎに注意を

2020/03/25

Q、テレワーク制度の導入を検討しています。在宅勤務者や社外勤務者は、労働時間の把握が難しいので、「所定労働時間みなし」で一律8時間としたいと考えていますが問題ないでしょうか。

    A、現行の裁判例から考えて、リスクの高い運用と考えます。厚生労働省のガイドラインでは、場合によっては適用できるとの説明がありますが、あくまで「やむを得ないような状況に限定して」の運用が望ましいと考えられます。         

解説(公開日:2020/03/25  最終更新日:2020/04/24 )

 

【1】テレワークに関する労働法の原則

厚生労働省テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドラインにおいては、「労働基準法上の労働者については、テレワークを行う場合においても、労働基準関係法令が適用されます。」との原則が示されています。

 

テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン(厚生労働省)

 

テレワークの管理において、企業が最も悩むのは「見えない社員の労働時間の管理」という問題になろうかと思われます。

 

上記のガイドラインでは、「労働時間を記録する原則的な方法として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録によること等が挙げられています。また、やむを得ず自己申告制によって労働時間の把握を行う場合においても、同ガイドラインを踏まえた措置を講ずる必要があります。」とされていますが、合わせて、一定の要件の元においては、労働基準法38条の2第1項の「所定労働時間数みなし」が適用可能との見解が示されています。

 

【2】テレワークおける「所定労働時間みなし」が適用できる要件とは?

上記のガイドラインでは、2つの要件が示されています。

 

■要件1

情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと =情報通信機器を通じた使用者の指示に即応する義務がない状態であること

 

これは、「回線が接続されているだけで、労働者が自由に情報通信機器から離れることや通信可能な状態を切断することが認められている場合」「会社支給の携帯電話等を所持していても、労働者の即応の義務が課されていないことが明らかである場合」などは該当するとされています。

 

■要件2

随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

 

なお、「具体的な指示」には、例えば、当該業務の目的、目標、期限等の基本的事項を指示することや、これら基本的事項について所要の変更の指示をすることは含まれないとされています。

 

これらを読みますと、運用次第では所定労働時間みなしをベースに、簡易的な労働時間管理が実現できるかのように思われます。

 

しかし、近年の判例傾向において、「所定労働時間みなし」の要件たる「労働時間を算定し難いとき」はかなり限定的に解釈されうることが確認されており、実務的には、「所定労働時間みなし」は海外出張や特殊な裁量勤務状況など、極めて限定的に運用する傾向にある実情があります。

 

【3】判例

本論点のリーディングケースとしては、

 

「阪急トラベルサポート(第2)事件 最二小判平26.1.24」が挙げられます。

判決の要旨は以下のような内容です。

 

(旅行日程が日時や目的地等を明らかにして定められることによって、業務の内容があらかじめ具体的に確定されており、添乗員が自ら決定できる事項の範囲及びその決定に係る選択の幅は限られていること。

あらかじめ定められた旅行日程に沿った旅程の管理等の業務を行うべきことを具体的に指示した上で、予定された旅行日程に途中で相応の変更を要する事態が生じた場合にはその時点で個別の指示をするものとされ、旅行日程の終了後は内容の正確性を確認し得る添乗日報によって業務の遂行の状況等につき詳細な報告を受けるものとされていること。

これらの事実関係を元に)「以上のような業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、本件会社と添乗員との間の業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様、状況等に鑑みると、本件添乗業務については、これに従事する添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難く、労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないと解するのが相当である。」と判断されました。

 

多くの企業においては、テレワークにおいても業務チャットやテレビ会議等のシステムを導入して、在社と変わらないようなコミュニケーションを取りながら業務を進めていくスタイルが多くなっているところ、自宅で、黙々と作業をするタイプの在宅勤務は少数派になっているという事情もあります。

 

また、勤怠管理についても、web上で打刻や申請が可能なシステムが一般的ですし、GPSによる打刻場所の確認なども行うことができるようになっています。かつ、スマートフォン1つあれば、ほとんど遅延のないビデオ通話が可能になります。

 

こうしたビジネス環境が一般化している中では、「所定労働時間みなし」は時代とともに限定運用になっていく運命ではないかと考えられます。

 

様々なITシステムの活用により、場所的な限定のない働き方が一般化している昨今においては、新型コロナウイルス対策という消極的な理由に限らず、企業の生産性向上のため、出社勤務と同等の選択肢として、積極的な活用が求められるところです。

 

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