GERBERA PARTNERSブログ

労務管理|労基署調査 長時間労働に対する指導と対策

2021/05/24

Q、今度、労働基準監督署の調査が実施されます。調査では長時間労働の場合に指導が入ると聞きましたが、どのような場合に指導されますか。またどのような対策が必要でしょうか。

A、36協定に定める時間外労働の上限時間を超えている場合は法律違反として指導されます。また、36協定の上限時間に収まっていたとしても、1か月時間外労働時間数が45時間を超えている場合には、時間外労働の時間数を45時間以内に抑えるようにという指導がされます。よって、対策としては、時間外労働が36協定に定める上限時間を超えないようにすることが最低限必要となります。

 

解説(公開日:2021/05/24  最終更新日:2021/06/04 )

 

労働基準監督署の調査は労働基準法、労働安全衛生法を中心として、企業がそれらの法令で定められている項目を遵守しているかチェックします。しかしながら、これらの法律に定められている項目はたくさんあり、調査では一つ一つの項目について調べ、遵守されていない項目については指導がなされます。今回は労働基準監督署の調査で特に指摘が多い長時間労働について、指摘される点とその改善に向けたポイントについて解説致します。

 

1.法律違反の観点から

労働基準法第36条の定めにより、企業が時間外労働や休日労働をさせる場合は、時間外・休日労働に関する協定(36協定)を締結し、労働基準監督署へ届出をする必要があります。その36協定には、1日、1か月間、1年間の3つの期間において時間外労働ができる時間数を定めます。

 

36協定で定めることができる時間外労働の上限時間については、1か月は45時間以内、1年は360時間以内と定められています。(1年単位の変形労働時間制を採用している企業は1か月42時間以内、1年320時間以内となっています)

 

また、臨時的に限度時間を超えて労働させる場合については、企業は特別条項付き36協定を締結することにより、1年間の間に6回までの範囲で、1か月45時間を超えて労働者を時間外労働させることができます。しかしながら、その特別条項付き36協定を締結したとしても、1か月の上限時間は100時間未満と定められています。また、2~6か月の全ての期間内での1か月あたり平均の時間外労働(休日労働を含む)の上限時間は80時間以内、そして1年間は720時間以内と定められています。

 

労働基準監督署の調査では、企業が36協定を届出していなくて労働者に時間外労働をさせた場合はもちろん、36協定で定めている上限時間を超えて時間外労働をさせている場合も法律違反として指導されます。

 

2.安全配慮義務の観点から

上記のように36協定で定めた上限時間を超えた場合はもちろん法律違反として指導がされます。しかしながら企業が特別条項付き36協定を締結しており、その36協定に定める上限時間を超えていなかったとしても、1か月45時間以上の時間外労働が常態的にある企業については指導がされることがあります。これは、労働者に対する安全配慮義務の観点から行われるものであり、1か月45時間以上の時間外労働がある場合には、過労による健康障害が起こる可能性が高まるためです。

 

法律違反の観点で考えると、特別条項付きの36協定を締結していて、その36協定で定める上限時間を超える時間外労働がない場合はもちろん法律違反とはなりません。しかしながら労働基準監督署は、労働者に対する安全配慮義務の観点から、時間外労働を1か月45時間以内に抑えるようにという指導がなされる場合が多くあります。

 

3.対策について

長時間労働が常態化している企業の場合、労働基準監督署より長時間労働を削減するように指導をされたとしても、すぐに対策を講じることは厳しいと思います。よって、長時間労働が常態化している会社については、労働基準監督署の調査が入る前から常に対策を講じていく必要があります。それはいかに時間外労働を減らすか。ここにかかっています。

 

「時間外労働を減らす」といっても、具体的に対策を講じることは非常に難しいです。ただ減らすという声かけをしても、どうやって減らしたらいいのか、どこまで減らしたらいいのかがわからないのが現実だと思います。そこで一つの考え方として、ただ単に時間外労働を減らすというのではなく「1日の労働時間を短くする」もしくは「休みを増やす」。この両方もしくは片方だけでもできないかを考えることが一番の近道だと思います。

 

例えば、1日の労働時間が30分短くすることができれば、1か月20日勤務であれば10時間程度の時間外労働が削減されます。また、休みが1日でも増えると8時間(もしくはそれ以上)の時間外労働が削減されます。よって、「1日の労働時間を短くする」、「休みを増やす」ために職場でどのように業務の改善、効率化をするべきかを考えることが大切です。そしてその業務の改善、効率化を諦めずに実行していくことが結果として長時間労働の削減につながります。

 

4.まとめ

長時間労働については、労働基準監督署の調査だけでなく、あらゆる労務トラブルの元となります。しかもすぐに長時間労働を減らすことは困難です。この長時間労働については、労働基準監督署の調査が来てから対策を考えるのではなく、その前からある程度の時間をかけて減らしていくという取り組みが重要となります。長時間労働が常態化している企業はまずは「1日の労働時間を短くする」、「休みを増やす」という点を考えるところから進めてまいりましょう。

 

社会保険労務士法人ガルベラ・パートナーズでは、この長時間労働対策をはじめ、企業様の労務管理のご相談に実務上の観点からきめ細やかにお答えしております。労務管理でお悩みの場合は、お気軽に下記お問合せフォームよりお申し付け下さい。

   
 

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