2015/09/29
Q 「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」という機関から、障害者雇用制度についての調査の通知が来ました。これはどのような制度で、対応しない場合にはどのようなペナルティが科されるのでしょうか?
A 障害者雇用安定法により、企業への障害者雇用の義務づけが強化されています。
原則として、全ての企業に障害者雇用率2%の達成が求められています。その実現を推進するための措置として、未達成の企業に対して、「障害者雇用納付金」というペナルティ制度があります。
これは、法定雇用率で計算される人数に対して、障害者雇用1名の不足に対して月額50,000円を納付しなければならないという制度であり、年額にすると、1人不足で60万円という高額なペナルティになります。
以前は、常時雇用している労働者数が200人を超えている企業がこのペナルティの対象となっていたのですが、2015年4月1日からは、法改正により、常時雇用している労働者数が100人を超える企業が対象となり、より小規模な企業にも納付義務が拡大しています。
中小企業では、人事部の体制が不十分な場合もあり、新たに対象となる企業では、情報不足から、対応に戸惑いも見られるようです。
障害者雇用の納付金は、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」という特殊法人が事務を担当しており、企業の申告納付という形を取っておりますが、実質的には呼出や立入検査などが行われ、行政機関に準ずる強制的な運用となっております。
したがって、機構からの通知を任意協力と理解して、無視するようなことは事実上できません。最近では、事後的に障害者雇用納付金の未納が指摘され、多額の遡及支払いが求められるという事例が多くなっており、未払残業や社会保険の未加入とならんで、人事労務にかかる簿外債務として経営に影響を与えている例もあります。
まずは、自社が納付義務の対象企業なのかご確認いただき、過去に機構から送られた通知書などを見過ごしていないかチェックをお願いします。
さて、このような納付金制度ですが、納付金を納めていればよいという問題ではありません。
企業として法定雇用率2%を達成するまでは、都道府県労働局より段階的な行政指導が行われます。指導の内容も、行政担当者の企業訪問から始まり、計画書や改善報告書の提出、呼出での行政指導、局長勧告などを経て、最終的には企業名の公表というペナルティが科されることになります。
さらにこの間は、未達成企業として、前述の障害者雇用納付金が徴収され続けます。企業としては、法定雇用率の達成のため、一刻も早い対策が求められます。
ただし、いざ障害者を雇用しようとなると、募集方法や採用の注意など不明点が多く、戸惑うことも多いと思います。そうした場合は、前述の各都道府県の「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」にご相談いただければと思います。
前向きに取り組もうとする企業には、人材の紹介、面接への立会や助言、採用後の訪問支援など、比較的手厚い支援が行われているようです。また、福祉関係の法令などについても、不明点は聞きながら労務管理を進めていくことができ、人事労務担当者の心強いアドバイザーになってくれるでしょう。
※行政機関の資料で「障害者」という文言が用いられていますので、本稿も同様の表現を使用させていただいております。ご了承ください。
以上が障害者雇用制度に関するペナルティの現状です。次回では、毎年6月1日の障害者雇用状況報告や納付金の申告にかかる実務上の注意点についてご説明したいと思います。
弊社では、労働時間の管理や人事制度の構築と合わせ、障害者雇用制度などのコンプライアンス対策も承っております。手続上のアドバイスや行政調査への対応など総合的な対策も可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
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