GERBERA PARTNERSブログ

労務管理|組織再編の労務【出向、転籍、労働承継の違いとは?】

2016/02/02

Q 会社の組織再編に伴って、労働者の移動が発生します。様々なパターンがあると思いますが、その違いを分かりやすく教えてもらえませんか?

 

A 労働者の移動パターンには、「出向」「転籍」「労働承継」となど、いくつかあります。

ただ、実務的には、個別交渉で目立たないように行われることが多いため、外からは見えにくい部分と言えます。

それぞれ、要件などが異なりますので、整理してみたいと思います。

 

1.出向(在籍出向)

 

出向元との雇用関係を維持しつつ、他社へ出向することです。

就業規則などに定めがあれば、個別の同意は不要とされています。

給与や労働時間などの、個別労働条件は、出向先の規程が適用されます。

ただし、解雇などの雇用契約の根本部分は、出向元の規程が適用される場合があります。

 

労働条件について、出向協定書を締結することが一般的です。

 

2.転籍(移籍出向)

出向元をいったん退職して、他社へ就職することです。

退職という重要な手続がありますので、原則として、労働者の個別同意が必要です。

 

新たな雇用関係を始めるに当たって、退職金や有給休暇に関して、勤続年数をどうするのかという部分が問題になりやすいと思われます。その部分は転籍同意書(協定書)で定められる場合が多くなります。

 

3.労働承継

会社分割など、会社の組織再編が起こる場合に、大規模な労働者が移動(転籍)することになります。

数百人規模になることも珍しくないので、全て労働者に個別同意を取得するのは、実務上たいへんです。

 

 そこで、会社法上の会社分割の場合には「労働契約承継法」に定める手続に従い、個別同意なしで、労働者を転籍させることができます。

 

 会社分割については、商法上の手続として、債権者保護手続等が定められていますが、本稿では、労務上の論点として、労働契約承継法による労働者保護手続について、簡単にご説明いたします。(なお、事業譲渡や合併は法的な性質が異なりますので、本法の対象となりません。ご注意ください。)

 

(0) 労働者の区分について

まずは、対象となる労働者の区分が必要になります。

 

・分割の対象事業に、主として従事する労働者(主たる労働者)は移動

・そうではない労働者(従たる労働者)は残留

 

というのが原則となります。詳細は、分割計画書に記載されることになります。

 

(1) 労働組合、労働者代表との事前協議(承継法第7条)

労働組合が存在する場合は、早い段階で協議をして、理解を得るのが、スムーズな手続には不可欠です。

 

【協議の内容の一例】

・会社分割の背景・理由

・債務の履行

・(0)の区分の基準

・労働協約がある場合は、その承継について

 

(2) 労働者との個別協議(商法等改正法附則第5条第1項)

通称5条協議と呼ばれ、一連の手続の中でも、特に重要なものです。

次の(3)の通知手続に入るまでに、十分な余裕をもって行わなければなりません。

この中で、必ずしも同意や法定書面を取る必要はありませんが、後のトラブルを防ぐために、丁寧に説明と意見聴取をしていただき、労働者の疑問や不安の解消に努める必要があります。

 

【協議の内容の一例】

・勤務することになる会社の概要

・労働契約の承継の内容(引き継がれる条件とそうではないもの)

・(0)の区分のどちらに区分されるかの別

 

(3) 労働者・労働組合への通知(承継法第2条)

会社分割では、分割契約等を承認するために株主総会が開催されます。その株主総会の2週間前の日の前日までに通知をしなければなりません。

原則は、個別に書面通知が必要です。

(口頭や電子メール一括配信は不十分です。)

 

 記載すべき内容は、決まっておりまして、厚生労働省のひな形もありますので、その内容に準じて通知書を作成するのが一般的です。

 

(4) 労働者の異議申立手続(承継法第4条、第5条)

(3)の通知には、異議申立先と期限が明記されています。

会社の総務部長などが窓口になり、異議申立も書面で受け付けるのが原則です。期限は、最低でも通知日から期限日まで13日間取ります。

 

 異議申立は、(0)の区分に反して、移動される人、または残留する人が対象です。(0)の区分で原則どおりになっている人は、異議を述べることはできません。

 

以上のような流れとなります。

 

 労働者保護手続は多少煩雑ですが、個別の転籍同意を取り付けるより、簡便に労働契約の承継が可能になるのが、イメージいただけるかと思います。

 

 実務的な問題として、労働承継に伴い、社会保険・労働保険の得喪手続、新設会社の新規適用手続、住民税の特別徴収の異動手続など、個々の作業が発生しますので、人事部門はたいへん忙しくなります。

 

 また、平成28年からは、雇用保険については、マイナンバーの運用もスタートしておりますので、さらに煩雑となっております。専門の社会保険労務士に委託し、効率的に手続の移行作業を行った方がよい場合も多いようです。

 

 当グループでは、労務だけではなく、専門の税理士、司法書士、コンサルタントが、スキームの構築からご支援できる体制が整っております。税金対策やM&Aなど、組織再編に関するご相談については、どうぞお気軽にお申し付けください。

 

 ガルベラ・パートナーズ 詳しくは、ホームページをご覧ください。


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