2016/12/21
Q 最近、長時間労働に関する労働基準監督署がニュースとなっており、当社も労働時間管理に改めて取り組もうとしているところです。取り組みのひとつとして従業員のメールやウェブのアクセス履歴を確認したいと思っていますが、可能でしょうか?
A もし貴社に、従業員のメールやウェブアクセスの監視(以下、モニタリングといいます)に関する規程や就業規則への記載があり、その規定が周知されているのであれば、モニタリングは可能です。
モニタリングに関する規定がなかったり、周知されていない場合は、プライバシーの侵害に当たる可能性があります。
モニタリングに際して、規定が必要であることについては、経済産業省「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」や、厚生労働省「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン」に記載されています。
経済産業省の「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」には、従業者のモニタリングを実施する上での留意点として、
・モニタリングの目的、すなわち取得する個人情報の利用目的をあらかじめ特定し、社内規程に定めるとともに、従業者に明示すること。
・モニタリングの実施に関する責任者とその権限を定めること。
・モニタリングを実施する場合には、あらかじめモニタリングの実施について定めた社内規程案を策定するものとし、事前に社内に徹底すること。
・モニタリングの実施状況については、適正に行われているか監査又は確認を行うこと。
が挙げられています。
また、厚生労働省の「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン」には、義務として、雇用管理情報の利用目的を明らかにすることや適正な取得が挙げられています。
厚生労働省の現在のガイドラインの前身である「労働者の個人情報保護に関する行動指針」には、特定の収集方法として、モニタリングについて以下のように定められていました。
使用者は、職場において、労働者に関しビデオカメラ、コンピュータ等によりモニタリング(以下「ビデオ等によるモニタリング」という。)を行う場合には、労働者に対し、実施理由、実施時間帯、収集される情報内容等を事前に通知するとともに、個人情報の保護に関する権利を侵害しないよう配慮するものとする。ただし、次に掲げる場合にはこの限りでない。
(イ)法令に定めがある場合
(ロ)犯罪その他の重要な不正行為があるとするに足りる相当の理由があると認められる場合
規定がなくモニタリングを実施する場合、プライバシーの侵害にあたるかどうかは個別の判断となります。
メールの私的利用とプライバシー侵害に関する判例(F社Z事業部事件(東京地判平13.12.3))の中では、「監視の目的、手段及びその態様等を総合配慮し、監視される側に生じた不利益とを比較考量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限りプライバシー権の侵害となると解するのが相当である。」と述べられています。
「重要な不正行為があるとするに足りる相当の理由があると認められる」か、「社会通念上相当な範囲」であるかどうかは、判断が難しいものです。
不要なリスクを避けるためにも、事前に規定を整備したうえでモニタリングは実施しましょう。
私用メールを送ったり、業務に関係のないウェブサイトにアクセスしたりすることは職務専念義務に違反しています。
今回の労働時間管理の機に就業規則を見直し、モニタリングの規定を作成しましょう。従業員にも、労働時間は職務に専念すべき時間だと改めて意識してもらうきっかけになるでしょう。
弊社では、就業規則の作成や見直しのご依頼も承っております。ぜひお気軽にご相談ください。
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