2017/02/15
Q 私の会社では、派遣労働者の受け入れをしています。法律も変わったとのことであり、いまの運用でよいか心配です。派遣先の義務について改めて教えてください。
A 派遣労働者の受け入れについては、当ブログでも、「初めての派遣スタッフの受け入れ。注意することは?」で以前に記載しているところですが、受入れの段階ごとに、派遣先にはどのような義務があるのか、さらに具体的に見ていきましょう。
1.労働者派遣契約の締結にあたり
(1) 派遣会社の確認
派遣会社の許可番号(届出受理番号)を確認します。
許可・届出を受けた会社以外から派遣労働者を受け入れることはできません。派遣会社の許可番号、届出受理番号については、厚生労働省の運営する「人材サービス総合サイト」でも確認することができます。
(2) 派遣契約の締結
派遣会社との間で適切に労働者派遣契約を締結します。
派遣契約に記載すべき内容は法律で決められています。
(3) 抵触日の通知
「事業所単位での派遣受け入れが可能な期間」を派遣元に対して通知します。
派遣の受け入れについては、事業所単位と個人単位の2つがあります。
同一の派遣先の事業所において、労働者派遣の受け入れを行うことができる期間は、原則、3年が限度です。事業所単位の受け入れの抵触日を把握しているのは派遣先であるため、派遣先から派遣元に通知する必要があります。
【期間制限のルールの概要】
ⅰ) 派遣先事業所単位の期間制限は原則3年
(意見聴取を行うことで3年超の受け入れが可能となる)
ⅱ) 派遣労働者個人単位の期間制限は3年
(別の課に異動すれば同じ会社で派遣労働者として働くことはできる)
詳細は、厚生労働省パンフレット「平成27年労働者派遣法の改正について」等でご確認ください。
2.派遣労働者の受け入れにあたり
(1) 派遣労働者の労保・社保の適用を確認
受け入れる派遣労働者が適切な社会保険(健保、厚年、雇保)に入っているか派遣元に確認します。
社会保険の加入の有無は、派遣先管理台帳の記載事項でもあります。
入っていない場合、その理由が適正でないと考えられる場合には、派遣元に対して、正しく社会保険に加入させてから派遣するよう要請します。
(2) 派遣先責任者の選任
派遣先責任者の選任をします。派遣労働者数100人以下の場合は1人でよいです。
派遣先責任者の職務内容を適切に行える人であればよく、他の職務との兼任もできます。ただし株式会社の監査役は派遣先責任者になることはできません。
なお、派遣労働者と直接雇用の労働者が合わせて5人以下の場合には、選任の必要はありません。
【派遣先責任者の職務】
ⅰ) 適用される労働関係法令や締結した労働者派遣契約の内容などについて周知すること
ⅱ) 派遣受入期間の変更通知に関すること
ⅲ) 派遣先における均衡待遇の確保に関すること
ⅳ) 派遣先管理台帳の作成、記録及び保存等に関すること
ⅴ) 派遣労働者からの苦情処理に当たること
ⅵ) 安全衛生に関すること
ⅶ) その他派遣元との連絡調整に関すること
3.派遣労働者を受け入れている期間中
(1) 派遣先管理台帳の作成
派遣労働者ごとの就業日、就業時間等の実態を的確に把握します。
派遣先管理台帳は、派遣契約に記載すべき内容は法律で決められています。
保存期間は、派遣期間終了日(派遣契約が更新された場合は、更新後の派遣期間終了日)から起算して3年間です。
なお、今回の法改正で、派遣先管理台帳に追加して記載することになった内容は、以下の4つです。
いまお使いの派遣先管理台帳に以下の項目が入っているか確認しましょう。
ⅰ) 無期雇用の派遣労働者であるか、有期雇用の派遣労働者であるのかの別
ⅱ) 60歳以上であるか否かの別
ⅲ) 就業した組織単位
ⅳ) 業務内での計画的なOJTの教育訓練や業務外の教育訓練を行った日時及び内容
(2) 就業条件を遵守する
就業条件の遵守を確認し、確保するための施策を行います。
【就業条件の遵守するための施策の内容】
ⅰ)就業条件の周知徹底
ⅱ)就業場所の巡回
ⅲ)就業状況の報告
ⅳ)労働者派遣契約の内容の遵守に係る指導
4.その他
上記の段階ごとのほかにも、派遣先が気にかけておくべきことがあります。
(1) 均衡待遇の推進に関する配慮義務
派遣先にも均等待遇の推進に関する配慮義務があります。
具体的には、業務に密接した教育訓練を労働者に実施する場合に派遣労働者にも実施する、食堂や更衣室などの施設を派遣労働者にも利用させる、などです。
自社の従業員も派遣の方も一緒に働く人同士、差別的な取り扱いをしないようにしましょう。
(2) 派遣労働者のキャリアアップ支援
以前の派遣に関するブログにも書きましたとおり、一定期間以上、派遣労働者として働いている人に対しては、派遣先での雇用努力や、募集情報の提供義務が課されます。
(3) 労働契約申込みみなし制度
違法派遣を受け入れた場合、その時点で、派遣先が派遣労働者に対して、労働契約の申し込みをしたものとみなされます。
【みなし制度の対象となる違法派遣】
ⅰ)労働者派遣の禁止業務に従事させた場合
ⅱ)無許可の事業主から労働者派遣を受け入れた場合
ⅲ)期間制限に違反して労働者派遣を受け入れた場合
ⅳ)いわゆる偽装請負の場合
労働に関する法律は、改正が頻繁にあります。
最新の情報をきちんと把握して、正しい労務管理、企業運営に努めていきましょう。
弊社では、日常的なちょっとしたご相談へのお答えから、労務問題やコンプライアンス対策まで、幅広く承っています。お困りのことがありましたらお気軽に当グループ社会保険労務士までご相談ください。
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