2017/09/20
A、すでに経済紙、業界紙等でも報道されていますとおり、労働契約法第18条に関する改正(2013年4月1日施行)から5年が経過し、来春2018年4月1日以降、有期契約労働者からの無期転換申出が発生することが想定されています。
企業としてのスタンスを決定し、就業規則や行政手続き等の書面対応を行う必要があります。
厚生労働省より下記のサイトで周知されているように、2018年度から無期転換申出が本格的に発生することが想定されています。
有期契約労働者の無期転換ポータルサイト~無期転換を円滑にサポートします~
(※別窓開きます)
※無期転換ルール(労働契約法第18条)の内容自体は、すでにご存じの通りかと思いますが、詳細は上記URLの解説をご確認ください。
一部では、「希望すれば全員が正社員なることができる制度である」とか、「従業員から申出されない限りは企業として特にやるべきことはない」など、誤った議論もあるようですので、ご注意いただければと思います。
また、市販の解説書では、制度内容の説明に重点がおかれ、企業としてどこまで対応しなければいけないかといったご判断の参考になる資料が思ったより多くない印象です。
本稿では、現時点での法令及び行政資料を基に、企業として最小範囲での対応を行うことを想定し、できるだけ簡潔かつ実務的に要点のみ、解説させていただきます。(今後の判例や行政通達の動向により、状況は流動的になることが想定されますので、ご了承ください。)
では、以下に無期転換法制に対する企業の実務対応の要点をまとめさせていただきます。
この方針を採る場合、申出者は無期雇用、黙っている者は有期雇用というダブルスタンダードが発生し、不公平感の醸成につながることが懸念されます。
この方針を採る場合、人手不足の現下において、一律の雇い止めを行うことが現実的かどうかについて事業部門と打ちあわせを行い、また人材流出の懸念がないか検討する必要があります。
厚生労働省が推奨する方向性です。無期雇用になると雇い止めができなくなるという懸念があります。(ただし、現状であっても一定の有期雇用者には雇い止め法理による規制があり安易な雇い止めはできないため、実態としてはあまり変わらないと思われます。)
正社員と契約社員の間に新たな無期雇用区分(例:準社員、エリア社員)を創設するなどの人事制度改定を行う方向性です。抜本的な人事制度改革となりますので、評価、給与、規程の体系を新たに構築することになるので、数ヶ月単位のプロジェクトになることが想定されます。
条文の制定方法としては、次のいずれかの方法が考えられます。
現行の就業規則(正社員、パート契約社員を含む)の確認を行い必要な修正を行います。
※ 労使協定が存在しない場合は、基準の適用が困難になりますので、撤廃を含めて規程改定が必要な場合があります。
※手続きの詳細は、厚生労働省資料
「高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例について」をご確認ください。以下では、実務的な要点をご説明させていただきます。
※高年齢者雇用推進者について
高年齢者雇用安定法第11条及び高年齢者雇用安定法施行規則第5条の定めにより、事業主は、高年齢者雇用確保措置を推進するため、作業施設の改善その他の諸条件の整備を図るための業務を担当する者として、「高年齢者雇用推進者」の選任努力義務があります。
(郵送も可能です)
(写しは認定通知書等の交付時に返却されます)
対象となる高齢者に労働条件通知書を交付する際に、下記の事項を書面通知しなければなりません。
(労働条件通知書の備考欄に記載するか、別紙で書面交付してください。)
※有期雇用特別措置法による特例の対象者に関する記載の例
労働契約法第18条により、有期労働契約の契約期間が通算5年を超える場合には、労働契約の期間の末日までに労働者から申込みをすることにより、当該労働契約の期間の末日の翌日から期間の定めのない労働契約に転換されます。ただし、有期雇用特別措置法による特例の対象となる場合は、下記の期間においては、無期転換申込権が発生しません。
「無期転換申込権が発生しない期間」
以上となります。
実務的には、本来の無期転換への対応はシンプルなのですが、高齢者への有期雇用特別措置法への対応の方が煩雑になってしまい、法制度としての本末転倒の感は否めません。
こちらに記載しましたのは、あくまで最小対応の一例です。これを機会にコース別人事制度の見直し、多様な正社員制度の導入を検討するなど抜本的な対応を行う場合は、そうした方針の検討が必要になります。
また、キャリアアップ助成金を活用ということになりますと、そもそも自社の正社員転換制度や法定帳簿の管理状況はどのようになっているかの確認が必要かと思われます。
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